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「滋賀県民は読書好き」の謎を探れ!

図書館、司書 量も質も充実

地域に近い図書館づくりを語る、松本館長(右)と佐藤参事=滋賀県守山市の守山市立図書館で
地域に近い図書館づくりを語る、松本館長(右)と佐藤参事=滋賀県守山市の守山市立図書館で

 季節は読書の秋というところだが、実は滋賀県民は、国内でも有数の読書家かもしれない。そんな一面を示すデータがある。日本図書館協会の調査(2017年度)によると、公立図書館の県民一人当たり貸出冊数は、東京都に次ぐ2位の7.75冊。全国平均の5.36冊を、大きく上回る。いったい何が、それほど県民と本とを結び付けているのだろうか。理由を探った。

 まず、県内市町の図書館設置率が100%(同調査)という別のデータが、調査の手掛かりになった。この割合を達成しているのは、全国でも他に富山、石川、福井、鳥取の4県のみ。県内19市町には、公立だけで49の図書館があり、県民と本との距離を縮めている。守山市立図書館の松本孝子館長は「それぞれのまちに図書館があり、地域を愛し、地域に愛されている。切っても切れない関係」と話す。誰でも、どこに住んでいても、本が借りられる身近さは、一つの答えかもしれない。

 しかし、「昔は正反対だった。図書館はなく、行政の中にも文化的な香りはなかった」と、武村正義元県知事が思い出す。1980年、50あった市町村に、公立図書館はわずか計6館。ところが、「県政に文化の屋根を」と移転・拡大した県立図書館を皮切りに、各市町村も競って図書館を整備し始めたという。武村元知事は「県が市町村に薦めたわけではない。本を読みたいという住民の要求が、市町村の自発的な動きを生んだ。誇らしい」と話す。そして2010年、設置率100%が達成された。現在のきめ細かな図書館体制の裏には、住民の文化を求める強い思いと、高い自治意識があった。

 だが、県民を読書に向かわせる理由は「量」だけではないようだ。もう一つ特徴的なデータがある。司書資格を持つ図書館職員の割合は、全国平均の53%に対し、滋賀は82.9%で1位(同調査)と群を抜く。背景には、80年に着任し、北海道や大阪府などから引き抜いた人材を各館の館長に抜てきしてきた、県立図書館の前川恒雄元館長の存在がある。守山市立図書館の佐藤志歩参事は「全国各地から優秀な司書を集め、『人さらいの滋賀』と呼ばれるほどだった」と振り返る。こうして作られた、司書が働きやすい環境、利用者とのコミュニケーションを重視する基盤が、今も受け継がれているという。「ほぼ全ての職員が、図書館のあり方について、基本的な理念を共有している。横のつながりが強く、本の貸し借りや情報交換も密にできる」と佐藤参事は話す。

 この「質」の高さが、県民への計画的な蔵書提供を実現している。県立図書館の大西良子館長は「ベストセラーだけでなく、世界情勢も踏まえて選書し、図書館同士の貸し借りも効率的に行っている」と自負する。それに加え、館内でのコンサート、美術館や文化財講座でテーマに合った本を紹介する出張展示など、新たな試みにも力を入れる。大西館長は「確かな選書・蔵書による資料提供は、図書館としての基本。その土台がしっかりとあるので、多様化する県民のニーズに合わせた展開ができている」と明かした。

 約40年前、県民自らの求めによって建て直された図書館体制こそが、「量」と「質」の両面から、県民と本とを結び付けているようだ。

(2019年10月27日)

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