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映画パーソナリティー☆松岡ひとみのシネマレポート!

映画「長いお別れ」中野量太監督に聞いた「家族とは」

2019年5月26日 10:35 | コメント(0)

映画やドラマにおいて「家族」は様々な作品で描かれています。

ザ・家族をテーマに描き続けている山田洋次監督作品、是枝裕和監督作品をはじめ

「ライフ・イズ・ビューティフル」古くは「ひまわり」など戦争によって翻弄される家族の話、

家族を軸にアクションが繰り広げられるリーアム・ニーソンの「96時間」シリーズ、大富豪の遺産を巡る話も家族、

地球外生命体モノでは「第9地区」もエイリアンの家族が描かれています。

ゾンビ、ホラー、カーアクション、クライムサスペンス、キラキラ映画、アニメーション、ジャンル問わず「家族」のカタチはそれぞれですが、必ず「家族」は登場します。

 

鑑賞する側は、その家族の誰かに自分と重ね合わせ想像を膨らませていく。

私が好きな作品は、壊れかけた家族が再生していく様を描いた「家族再生」の映画が好き

例えば石井裕也監督の「ぼくたちの家族」とか。

そして観た後、何年後もふとその映画を思い出し、その登場人物達はいま何をしているのかなと

想像出来る映画が好きです。

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(C)2019「長いお別れ」製作委員会 (C)中島京子/文藝春秋

 

中野量太監督の作品はまさにその後を想像して観る側が何度でも楽しめる物語が多い。

「チチを撮りに」という作品がまさにそう。これは大ヒットとなった「湯を沸かすほど熱い愛」の前に撮ったもので

母と娘2人の三人家族。娘二人が余命わずかな離婚した父に会いに行く話。

ネタバレするので多くは書きませんが、この親子がいまはどうしているのかな、と直接中野量太監督に聞いてみました。

すると監督は、映画って想像してもらう芸術だと僕は思います。松岡さんのように考えてもらうのが嬉しいです。

と、答えはいただけなかったのですが(笑)、新作「長いお別れ」の4人家族の長女と次女はその後どうなったかという話では盛り上がりました。

中野監督は、「今は想像を遮断する映画が多い。説明的なモノは映画の魅力を捨ててしまっていると思います。この家族も未来も過去も想像してもらえる。それが映画だと思う。」と語ってくれました。

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監督の描く家族とは?

「苦しい状況にいる家族が、右往左往して頑張る姿が愛おしいと思ってもらえる。それが僕の描く家族です」

辛い状況だけを取り上げても悲しい映画になってしまう。なくなる瞬間まで描くと想像することを遮断してしまう。

病気になった家族を看病する生活の中でも、家族は笑顔を見せるときもあるし、通常の生活のなかでの

喜怒哀楽がある。それを描くことによってリアリティな部分を共感していただけるのでは?

 

わたしも今まさに、86歳の母と病院通いに付き添っていますが、深刻な中にも母の行動にクスッと笑えることもあります。

その部分を監督はうまく切り取っているんだなと勝手に思っています。

 

 

「キャスティングは縁」

 

「長いお別れ」は元中学校の校長先生の昇平とその妻曜子、長女の麻里、次女の芙美の4人家族の話。

父が70歳の誕生日に久しぶりに帰省した娘たちに母から告げられたのは厳格な父が認知症になったという事実。

それぞれの人生の岐路に立たされている姉妹は思いもよらない連続に驚かされる。ゆっくり記憶を失っていく父との7年の末に家族が選んだ新しい未来を描いていきます。

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認知症になった父を演じるのは山崎努さん。

厳格な、元校長先生という役からしてピッタリですね。

監督に山崎さんの起用について聞いて観た。

「僕はキャスティングは縁だと思っています。候補は何人かイタのですがその中で、山崎さんはすでに小説を読んでいて、これが映画化されるなら俺の所にくるな。と思っていたそうなんです。それって凄いことで、俺しか出来ないと思っていたということは、その次点で成功したと思いました」

ちっと天然で可愛らしい母役の松原智恵子さんについては,

「松原さんは僕緒想定をこえたはじめての女優さん。実ももっと飄々とした母親像でした。初日お芝居をしていただいたとき、松原さんが窮屈そうに見えたので、松原さんのもつかわいらしさのある母親に急遽変更することにしたんです。二日目に母親像プランを変えて、①日目もリテイクして松原さんのもっている良さを合致させました。PLANを蹴るのは初めてだったので撮り終えて全編見るまで実は怖かったんです。見事、東家の母としてぴったりハマりました。」

松原さんは、竹内さん、蒼井さんといると3姉妹のようだったそうです。

しかも末っ子。この物語のなかでもその雰囲気を醸し出しています。娘が成人すると立場が逆になるっていうじゃないですか。

それがこの映画の中で表現されています。お見事!

蒼井さんは先にキャスティングされていたので姉はちがう雰囲気がいいということで竹内結子さんを起用。

竹内さんの役は、結婚して、夫が生物研究をしていてその赴任先のカリフォルニアに住んでいます。息子は一人。

東家のほかにこの長女の家族についても描かれていきます。長女麻里の家族は家族としてはまだぎこちない。

夫婦間の問題が息子にダイレクトに影響しているのかもしれません、その様子も実に丁寧に描かれています。

 

中村倫也さんのミラクルシーン

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(C)2019「長いお別れ」製作委員会 (C)中島京子/文藝春秋

 

次女の芙美は、料理が好きで将来カフェを開きたいという夢を持っている。

まずはキッチンカーを借金して持ちますが、なかなかお客様がこない。

そんなある日芙美はキッチンカーで移動しているところに、父と、孫と、芙美の同級生道彦が一緒にいるところに遭遇します。

その道彦役が中村倫也さんが演じています。

「キャスティングしていた時はすでにブレイク中でした。いい意味でちょっと変わっていて、自分の世界を持っている人でしたね。

3人でパンをもって、芙美の存在に3人一緒に振り向くシーンはすごくよくて。このシーンは雨で3回流れて4回目のチャレンジだったんです。この日の朝も天気予報は雨。橋の下に変更するかというシュミレーションも考えました。このチャンスを逃すともう中村倫也がこのシーンからいなくなってしまう!つまりスケジュール上撮れなくなってしまうと言うことになり、焦りました。

なんとか太陽がでてきた隙にさっと撮ったシーンなんです。あの日は奇跡でしたね」

このシーンで芙美と道彦は再会して、芙美のあらたな人生が描かれていくという大事なシーン。

過去に彼らはどんな距離感の同級生だったのか、想像しながら見させていただきました。

 

家族と言えば重要な食事シーン

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家族を描く時に欠かせないのが食事のシーン。

その家族がどのように生活しているのか。どんなパワーバランスなのか、すべてがわかります。

東家は誰かの誕生日には必ずキラキラの三角帽子をかぶって、食卓をかこみテーブルいっぱいに並んだ料理に名前入りのケーキ。

この帽子は、年に数回しか使わないのでその間はタンスの中にしまってある。何年も使用しているので少し、その使用感もわかります。どこの家族もクリスマスツリー、ひな人形といったものが何年も使用してますよね。

誕生日のキラキラ帽子は誰がかぶることに決めたのかは映画を見て確認してください。

7年目のお父さんの誕生会のシーンはとてもコミカルに描かれていますが、わたしはこの映画の最大の泣き所でした。

この家族がとても愛おしくなりました。

 

そうそう、監督は結婚されて、この作品の編集中にお子様が生まれました。

ずっと家族を描いている監督ですが、お子様の成長とともにすこしづつまた演出などが変わるかもしれませんね。

 

人がはそれぞれ、家族のかたちが違います。このお父さんは認知症になって、家にいるのに「家に帰る」と何度も口にします。

お父さんはもうどこにいるのかわからないけど、「家に帰る」ということなんでしょう。

 

家に帰るということ

監督はインタビューの最後に「帰る場所があるということは素晴らしいこと。旅がなぜ楽しいのか。それは帰る場所があるからだと僕は思います。人生に置いて苦しい仕事をしていても帰る家があってホッとする。その場所は大切にして欲しい。

長女の麻里もカルフォルニアの自分の家族と住んでいるのに、実家に帰ることを「家に帰る」という。そこを夫につっこまれるシーンがありますが、麻里はまだ自分の家族を作っていないと言うことなんです。640-11.jpg

未婚の方は実家という家がある、恋人のところでもいい。帰って待っている人がいるということをいつも思って生きて欲しい。人間は一人では生きられません」とメッセージを残してくださいました。

 

最近の母86歳は、どこにでかけても「家に帰る」「早く帰りたい」というようになりました。

70代後半まで日本舞踊の師匠として走り回って社交的で、外が大好きだった。

でもいまは長く住んでいる自分の家が愛おしいそうです。

出来れば家で死にたいと。

 

この映画の中で認知症になったお父さんであり、夫であり、おじいちゃんが「家に帰る」と言うのは

「家族といたい」ということなのでしょう。

認知症になってしまったら何を考えているのかわかりません。でもかすかな記憶の中で「家族」は忘れてはいないのだろうと思います。

 

映画「長いお別れ」は5月31日から公開です。

今週末、家族とお出かけくださいね。

 

 

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松岡ひとみ

松岡ひとみ
レポーター、テレビタレントを経て、2010年から映画パーソナリティとして活動。東海地区を中心に、新作映画のみならず旧作から自主映画、短編映画まで取材し、テレビやラジオ、雑誌など各媒体で紹介。また、新作映画の舞台挨拶・記者会見の司会など、東海地区を中心とした映画イベントシーンにおいて欠かせない存在で、通称「映画のお姉さん」。様々な監督との交流も深く、日本各地で映画監督が主催の映画祭に行くことが趣味。
“映画伝道師”として多くの方に映画を愛していただけるような人になるのが夢です!

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