オピ・リーナ opi-rina
menu
オピ・リーナ opi-rina

サイト内検索

大竹敏之のでらうま名古屋めし探訪
大竹敏之のでらうま名古屋めし探訪

「一八本店」のたまり煮込

一八本店のたまり煮込880円
一八本店のたまり煮込880円

煮込みうどん=味噌ではなくたまり煮込みだった!?

4代目店主の上田正隆さん。煮込みうどんは一人前ずつ土鍋を火にかけて調理する
4代目店主の上田正隆さん。煮込みうどんは一人前ずつ土鍋を火にかけて調理する

 名古屋めしの代表格、味噌煮込みうどん。知名度、浸透度ともに他の追随を許さない不動のナンバーワン名古屋めしです。

 ところが、「昔は“煮込み”といえば味噌じゃなくてたまりだったんですよ」と驚きの発言をするのは一八本店の店主、上田正隆さん。明治23年創業の同店は、名古屋で最も歴史のあるうどん店。戦後間もない頃の品書きには、「煮込」「味噌煮込」と記され、それはすなわち味噌を入れないたまり醤油つゆの煮込みうどんの方が主だったことを現しています。

 「味噌煮込みうどんが今みたいな名古屋名物になったのは、山本屋さんが流行らせたからなんですよ」とも。昭和40年代以降、山本屋本店、山本屋総本家の味噌煮込みうどん専門店が人気を不動のものとし、それにともない煮込み=味噌煮込みというイメージが浸透したのだといいます。

やや平たくちぢれた麺。味噌煮込みと同じく、塩を加えずに打つ塩抜き麺を使う
やや平たくちぢれた麺。味噌煮込みと同じく、塩を加えずに打つ塩抜き麺を使う

 山本屋によって確立されたもうひとつのスタイルが、味噌煮込み=太くて固い麺。これも一八本店・上田さんによると「もともとは山本屋さん独自の特徴」だったそう。しかし、豆味噌のしっかりした風味と麺の力強い噛み応えの相性が抜群だったためか、他のうどん店も大半がこれにならい、現在の“煮込みうどんと言えば味噌煮込み、味噌煮込みと言えば太くて固い麺”という山本屋スタイルがスタンダードになったのです。

 こうした経緯があるため、山本屋よりも歴史がある老舗の中には、“太くて固くはない”煮込み麺を出す店、たまり煮込みをメニューとして出している店が少なからずあるのです。ちなみに山本屋本店、山本屋総本家でも味噌抜きの煮込みうどん(すまし煮込み、とも)を注文することができます。

味噌がない分、ダシの香りや麺の噛み応えをダイレクトに堪能できる

 一八本店のたまり煮込は、たまり醤油ベースで宗田ガツオ、ムロアジでダシを取る名古屋のうどんの王道のつゆ。たまり醤油はもともと豆味噌から派生したこの地域特有の醸造調味料で、豆味噌同様にうまみが濃厚なので、決して物足りなくはありません。麺は平打ちでややちぢれているのが特徴。味噌煮込みと比べてあっさりしていますが、味噌のインパクトがない分、ダイレクトにダシの香りや麺の噛み応え、噛むほどにじんわり広がる小麦の風味を感じることができます。また「味噌が入っていない代わりに」と長芋が具に加えられているのもうれしい心配りです。

 シンプルながら深みのある名古屋の伝統的なうどんメニュー、たまり煮込み。あまり知られていない“隠れ名古屋めし”とも言うべき存在ですが、老舗のうどん店で見つけたら是非お試しを。(写真撮影/すべて筆者)

「一八」は名古屋一の老舗うどん店。かつては市内各所にのれん分けの店があり、現在も何軒かが「一八」ののれんを掲げて営業している
「一八」は名古屋一の老舗うどん店。かつては市内各所にのれん分けの店があり、現在も何軒かが「一八」ののれんを掲げて営業している
テーブル席、小上がり、座敷があり、1人でもグループでも利用しやすい
テーブル席、小上がり、座敷があり、1人でもグループでも利用しやすい
 

そうだったのか!名古屋めし

 「たまり煮込み」というメニュー名は、たまり醤油のつゆが由来。このたまり醤油も実は豆味噌と同様に地域特有の伝統的調味料で、名古屋めしの根幹を成すものです。

 本文でも少しふれましたが、たまり醤油はもともと豆味噌の醸造過程でできる味噌の上澄みから生まれたものでした。したがって、一般的な醤油と比べると、豆味噌同様にうまみ成分が濃いという特徴を持っています(豆味噌は米味噌や麦味噌と比べるとうまみ成分がおよそ2倍!)。

 このたまり醤油、うどんやきしめん、味噌煮込みうどんのつゆのベース、うなぎのタレなど、様々な名古屋めしの調理に欠かせないものとなっています。きしめんは名古屋めしの中ではあっさりしているように感じられますがたまり醤油のおかげで味わいが深く、またひつまぶしはたまり醤油を煮詰めたタレを使ってうなぎを蒲焼するからこそ、細かく刻んでも、さらにはお茶漬けにしても食べごたえが損なわれないと考えられます。

 たまり醤油は、豆味噌と並んで名古屋人の濃い口嗜好を陰で支えているのです。

一八本店

老舗の風格漂う店構え。大須の仏壇通りに面する
老舗の風格漂う店構え。大須の仏壇通りに面する

住所:名古屋市中区橘1-5-14
TEL:052-321-0475
営業時間:11時~15時、17時~20時30分、月曜は14時まで(いずれもラストオーダー)
定休日:火(祝日の場合営業)
駐車場:5台
アクセス:地下鉄上前津駅より徒歩10分

(2020年01月30日)

大竹敏之

大竹敏之(おおたけとしゆき)

「おいしい名古屋めしのお店、連れてって」。今や地域の名物にして観光資源にまでなっている名古屋めし。他県から来た友人知人にこんなふうに頼まれることも多いはず。しかし、そこで、はたと悩んでしまう人もまた多いのでは? 地元っ子も知ってるようで意外と知らない、名古屋めしの本当に“うみゃ~”店を、名古屋めしライターこと大竹敏之がご案内します。

大竹敏之コラム

神野三枝コラム

澤田貴美子コラム

Today's Fotune 今日の占い

Mail Magazine 登録無料

下記フォームより
メールアドレスの登録を行ってください

> 登録 >>メルマガについて
ページトップに戻る