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神野三枝の今日も絶好調!
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第36回 黒薔薇のように。

その日、映画を観終え食事をしようかと店に入ったのが土曜の夕方5時を回っていた頃でした。この時間ならまだ混雑を避けられる。そう思って入ってみると案の定、私が最初の客でした。店内には責任者の女性とアルバイトの若い男女がそれぞれ1名ずつ。東京の有名店が名古屋にも進出して出した店のよう。そういえばこの店の名前、聞いたことがあるな・・・。責任者の女性が調理人で忙しく仕込みをしています。カウンター席の向こうが調理場で、調理の様子がカウンター越しの客側から見えるようになっている対面型。カウンターには10人ほどが座れ、その後ろに4人掛けのボックス席が5テーブル。全部で30人ぐらい入ると満席のお店です。

注文をお願いして程なくすると一組また一組とお客さんがボックス席に座り賑わってきました。まだ接客業に慣れていないバイトの男の子、手際が悪いながらも頑張って案内をしています。あれ?そういえば2人いたはずのアルバイトの女の子の方の姿が見当たりません。ぐるりと店内を見回すと女の子は隅のボックス席でまかないご飯を食べていました。忙しくなる前に腹ごしらえのようです。その間にまた一人、また一人と客が入ってきます。すでに席に案内された客からはオーダーを催促され、新規の客を席に案内しなくてはならない男の子はてんてこ舞い。責任者の女性はオーダーの入った料理を作るのに必死でホールの手際の悪さに構っていられない状況。女の子は席を空けるためにまかないご飯を持って店の隅の事務スペースに移動。と言っても暖簾一枚で仕切られた狭い場所なので中の様子は客席から丸見え。女の子はまかない料理を食べ終えると・・・スマホをいじり始めました。

店内は尚も賑わい、入り口で席に案内されるのを待っている中年カップルがイライラしています。男の子は注文を取り、できた料理を運び、お勘定のレジにてこずり大パニックの様子。その間、女の子はずっとスマホをいじっています。「いらっしゃいませ」も言われず、席に案内もしてもらえないシビレを切らした中年カップルは不愉快そうに目を見合わせ、店から出て行ってしまいました。時刻はこれから夕飯の一番のピーク時。責任者の女性はバイトの女の子に何も言いませんし彼女がスマホをいじっていることに苛立っている様子もありません。客が出て行ってしまっても焦る素振りも見えませんし、男の子も女の子に手伝ってくれとも言いません。これが普通といった様子なのです。こうした帰ってしまった客が三組ほど続き、「勿体ない・・・。」とため息をつく私。

これが今の世の中なのです。女の子が悪いわけではないのです。彼女はバイトの契約で店側が決めた勤務体系に従って休憩をしているだけなのです。昔の人間からしたら、こんなに忙しいのにまかない食べて休憩している場合じゃないでしょ。と腹立たしく思う場面ですが、今の時代は雇う側も雇われる側も契約というルールに従い、臨機応変も忖度の強要もいけないのが流れなのです。

話は変わって、友達が工場でパートのリーダーをしています。高校を卒業して正社員として入ってきた新人社員の10代の女の子と一緒に仕事をしています。仕事においてはパートと言えど、おばちゃんの方がベテランですから目に余ることだらけだそうですが、会社からは「早くやって!」とか「まだできないの?」という類の脅迫的な言葉はパワハラに当たるので使わないようにと再三指導されるそうです。ではどうしたらいいのですか?と聞けば、会社側は「見守ってあげてください。」と言うのだそうです。当然ただ見守っているだけで仕事が進むわけもなく、結局シワ寄せはこちらに来ます。新入社員をまるでお客さんのように扱う理由は何ですか?と問えば辞められたら困るからだそうです。しかしそれは人手が足りなくなるのが困るのではなく、社員が辞めたという実績が出来てしまうことが社内評価的にマズイのだそうです。

このままでは日本が大変なことになる・・・。

指導することと見守ることはまるで違います。人の記憶の中で幸せな出来事と不幸な出来事はどちらが記憶に残るか?といえば不幸の方が記憶に残ると心理学の世界では言います。それは二度とその辛さに出会わないように脳が覚えて自己防衛をするためです。これが本当なら見守るよりも叱るほうがはるかに人は成長できるのです。一度失敗を叱られたショックが二度と叱られないように脳が覚えてミスを防ごうとするからです。人は愛された喜びで優しさを覚え、傷つくことで強さを学びます。叱られたことで傷つきはしますがそこで強さを身につけ、逞しい人間へと成長していくのです。叱ることは実はとても必要なことなのです。

ハラスメントを成敗する時代の中で、企業側がルールに怯え過ぎない判断力を持つことが大事です。

先日花屋さんの前を通ると珍しい黒い薔薇の花が目に留まりました。ビロードのような深みのある漆黒の薔薇。深い赤の薔薇の花に青いインクを吸わせて作ったそうです。人間も一緒です。何を吸収したかで後の仕上がりに大きな違いが現れます。育てる側が社会のルールに過剰反応し過ぎては戦力となる逞しい若手を育成することはなかなか難しいものかもしれませんね。若手に何を吸収させてあげるべきか、企業側の大きな課題です。黒薔薇のように・・・。

気負わず、焦らず、穏やかに。
さあ、今日も元気を出して、絶好調で!

(2019年10月07日)

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