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大竹敏之のでらうま名古屋めし探訪
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「かめ壽(かめじゅ) 本店」の志の田うどん

かめ壽本店の志の田きしめん750円。白醤油ベースの白つゆに具はねぎ、油揚げ、そして名古屋ならではのふちの赤い名古屋かまぼこが王道
かめ壽本店の志の田きしめん750円。白醤油ベースの白つゆに具はねぎ、油揚げ、そして名古屋ならではのふちの赤い名古屋かまぼこが王道

浄瑠璃? 考案者の名前? 謎多き“隠れ名古屋めし”

 “志の田うどん”ってご存知でしょうか? 名古屋の人なら「あぁ、うどん屋によくあるあれね」とすぐに頭に浮かぶのでは。では、それが名古屋(および周辺)限定のメニューだとはご存知でしたでしょうか? 「えぇッ、うどん屋ならどこにでもあるんじゃないの?」と驚く人もこれまた多いかと思われます。

 志の田うどんとは、油揚げ、かまぼこ、ネギが乗ったうどんのこと。つゆはたまり醤油ではなく白醤油ベースの透明感のあるものを合わせるのが基本です。麺はお好みによってきしめんを選ぶもよし。また、具を煮詰めてごはんにかける志の田丼なるメニューもあります。

「志の田は私らにとってはごく当たり前のもので、特別なものとは思っていませんでした」という店主の渡邉一弘さん。麺打ちのすべての工程を手作業で行う生粋の麺職人
「志の田は私らにとってはごく当たり前のもので、特別なものとは思っていませんでした」という店主の渡邉一弘さん。麺打ちのすべての工程を手作業で行う生粋の麺職人

 地域限定であることと同様に不思議なのはその名前です。名古屋の古くからのうどん屋さんに尋ねても、「昔から当たり前のようにあったから、名古屋だけにしかないとは知らなかったし、由来なども聞いたことがない」と口を揃えます。

 一説によると、語源は大阪の信太森(しのだのもり)神社とも。この神社に伝わるのが、陰陽師・安倍晴明の母が白狐の化身だったという伝説。これが歌舞伎や浄瑠璃の演目として人気を集め、狐の好物の油揚げを乗せ、白狐に通じる白つゆで食べるうどんを「しのだ」と名付けたのではないかというのです。江戸~明治の頃は今よりずっと歌舞伎が一般的で、「しのだ」と聞けば大衆がピンと来たこと、さらにはあえて文字を変えて粋を気取ったのでは、という解説もついてきます。

庶民的かつ清潔感のある店内。2階は座敷席になっている
庶民的かつ清潔感のある店内。2階は座敷席になっている

 ただしこれは一部の文化人による考察。「ちょっと取ってつけたようにも感じますねぇ(笑)。案外、考案した人の名前だとか単純なものかも、という気もしますよ」とは戦前から続く老舗「かめ壽本店」の3代目、渡邉一弘さん。1966年生まれの渡辺さんもやはり、「親父や祖父の代からあったから、特別なものだと思ったこともありませんでした」といいます。

 

舌ざわり滑らかなきしめんで優しい味わいも際立つ

幅広で透けるほど薄い、これぞ“ザ・きしめん”!
幅広で透けるほど薄い、これぞ“ザ・きしめん”!

 そんな謎多き志の田うどんですが、かめ壽本店ではここ数年注文する人が増えているとか。「最近、マスコミが取り上げてくれるようになって、特に観光客の方が珍しがって食べていかれますね」と渡邉さん。そんな遠来のお客が選ぶのは断然、きしめん。同店ではかつてはうどん:きしめんの比率は7:3でしたが、観光客の多い週末はこれが逆転するそう。志の田もきしめんで食べる人が多いといいます。

 かめ壽(かめじゅ)本店のきしめんは、粉をこねるところからすべて手作業の純手打ち。力がしっかり伝わるように非常に細い麺棒で生地を平たく延ばしていきます。やや幅広で、透き通るように薄い麺は舌ざわりが実に滑らか。するすると滑るようにのどを通ります。白醤油ベースのつゆもダシの香りとのバランスが絶妙。食感も味わいも、何とも優しいのです。

 味噌煮込みうどんやきしめんと比べるとちょっと影が薄かった志の田うどんは、まさに“隠れ名古屋めし”ともいうべき存在。しかし、控えめで上品な味わいは、インパクトの強い味が主流の名古屋めしの中にあって貴重な個性ともいえます。観光客が食べてくれるのもうれしいことですが、むしろ行きつけのうどん屋がある地元の人こそ、時々注文してみると一週間のランチラインナップにめりはりがついていいんじゃないでしょうか。

(写真撮影/すべて筆者)

 

そうだったのか!名古屋めし

 きしめんといえば濃~い赤茶色ともいうべきつゆが一般的。これはこの地域特産のたまり醤油がベースで、麺の上で踊る花かつおの香りとよく合います。

 名古屋のうどん屋ではこのつゆを「赤」と呼んでいます。そしてもうひとつ、「白」と呼ばれるつゆも欠かせません。こちらは白醤油がベース。赤と比べてすっきりしているのが特徴です。

 白醤油もまた愛知県の特産で、碧南市など西三河地方が全国生産の大半を占めています。普通の醤油と違って、大豆ではなく小麦が主原料。意外と塩味が強く、ほのかな甘みもあり、透明感があるので料理が美しく仕上がるのが特徴です。

 「赤」「白」2種類のつゆをメニューによって使い分けるのが名古屋のうどん屋の常識。志の田うどんをはじめ、天ぷらうどん、玉子とじうどん(いずれもきしめんも可)など、具が主役となるメニューには比較的、白つゆが使われます。ただし、つゆと具の組み合わせは厳密に決まっているわけではなく、天ぷらうどんでも赤つゆの方が好きな人なら、店に伝えれば大体そのようにつくってくれます。赤と白、自分好みのつゆと具との組み合わせを見つけるのも、名古屋めしの楽しみ方のひとつなのです。

かめ壽(かめじゅ)本店

外観

住所:名古屋市中区栄5-4-1
TEL:052-241-0147
営業時間:11時30分~22時(土は21時まで)
定休日:日・祝
駐車場:なし
アクセス:地下鉄栄駅より徒歩7分

(2019年09月26日)

大竹敏之

大竹敏之(おおたけとしゆき)

「おいしい名古屋めしのお店、連れてって」。今や地域の名物にして観光資源にまでなっている名古屋めし。他県から来た友人知人にこんなふうに頼まれることも多いはず。しかし、そこで、はたと悩んでしまう人もまた多いのでは? 地元っ子も知ってるようで意外と知らない、名古屋めしの本当に“うみゃ~”店を、名古屋めしライターこと大竹敏之がご案内します。

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