子宮頸がん 若い女性に急増

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受診率いまだ23% 「面倒」検診敬遠

「子宮頸がんは予防できる」と話す自治医大の鈴木光明教授=栃木県下野市で
「子宮頸がんは予防できる」と話す自治医大の鈴木光明教授=栃木県下野市で

 20、30歳代の若い女性に子宮頸(けい)がん患者が急増している。子宮頸がんは定期検診とワクチンを活用すれば、理論上は、ほぼ予防が可能。先進国では子宮頸がんによる死亡率は減少しているのだが、日本だけがそれに逆行するという異常事態となっている。そのワケは-。(鈴木伸幸)

 ◆先進国では異例

 「子宮頸がんは原因が分かっていて、予防できる。それなのに、若い女性の発症率、死亡数はともに急上昇中。子宮を摘出するという悲惨な例も増えている。医療従事者として、とても見過ごせない」。自治医科大学産婦人科の鈴木光明教授はため息を漏らした。

 国立がんセンターのまとめによると「30歳代で子宮頸がんで死亡した10万人あたりの人数は、1985年の83人から2005年に154人とほぼ2倍に急増。20歳代では9人から23人と2倍以上になった」という。

 各種がんの女性10万人当たりの発症率でも「20歳代では、ほかのがんが75年とほぼ同率か減少したが、子宮頸がんだけは75年の2人に対し、2000年には8人と4倍に。30歳代でも、16人から40人と2倍以上に増えた」。

 先進国でこうした事態は、極めて異例だ。予防医療に力を入れるオーストラリアでは「75年から2000年にかけて、子宮頸がんの発症率が40%近く減少、死亡率では50%以上も低下した」というデータがある。

 なぜ、日本では増え続けるのか-。鈴木教授は「第一に低い検診・受診率が問題」と指摘する。

 経済協力開発機構(OECD)がまとめた昨年の推計値によると、国別の受診率で日本は23・7%と最低レベル。米国の82・6%、英国の69・8%と比べて、圧倒的に低い。お隣、韓国の40・6%も下回っている。

 日本では特に、若い世代の受診率が低く、あるアンケートでは「20歳代で定期検診を受けている割合はわずかに3・9%」だった。

 ◆10代へ啓蒙急務

 実は、厚労省も低い受診率を問題視していて「50%に上げたい」と主張する。だが、予算措置など具体的な行動は起こさず、検診は自治体任せ。自治体でも「財政難からか、検診予算を制限し、受診環境を整備することには消極的」という。

 ある調査によると「自治体の検診は実施期間の限定など一定の制限があることが多く、希望者全員が無条件で受けられるのは、16%にしかすぎない」という。さらには「予算化されている金額で、検診対象者の何%が検診を受けられるか」を調べたところ「70・2%の自治体で20%以下」だった。

 つまりは、受診者が全対象者の2割を超えれば、多くの自治体で予算枠を超える負担となる。自治体が検診の告知に消極的なことは、以前から問題視されていたが、その原因はこんなところにもありそうだ。

 女性の側にも問題はありそうだ。自治医大さいたま医療センターの調査によると「早期の発見と治療で完治する」と知っていたのは4割程度。受診しない主な理由は「面倒」「恥ずかしい」だった。

 だが、実際には検診に1、2分しかかからず、肉体的、経済的負担はわずか。性交渉年齢が若年化する中、10歳代への啓蒙(けいもう)も含め、意識改革が求められている。

 また、こうした検診問題に加え、感染を予防するワクチンの承認問題がある。

 「子宮頸がんは、ウイルス感染が原因となることが分かっていて、ワクチンは有効な予防策。米、英など世界100カ国以上で承認され、多くの国では公費負担で接種されている」という。近隣の韓国、フィリピンなどでも承認済みだ。

 ◆予防できる病気

 しかし、日本ではまだ、承認されていない。外資の2社がそれぞれ昨年9月と11月に申請し、来春にも承認されるとの見通しもあるが、主要国に比べ審査が遅れている。以前から海外の標準薬が、日本ではなかなか承認されない「ドラッグ・ラグ」の問題が、ここにも影を落としている格好だ。

 特にワクチンでは、海外で実績のある製品を日本はほぼ締め出しているような状態。ワクチン研究で先行する欧州の製薬団体連合会(EFPIA)は、日本政府に「承認の要件を明確にした臨床開発および薬事ガイドラインがない」と指摘しているが、事実上の無回答が続いている。

 また、技術規格でも、日本は欧米や世界保健機関(WHO)とは異なる独自規格にこだわり、これが参入障壁となっている。

 日本のワクチン市場は小規模な国内企業によってほぼ独占状態。「技術力で劣る国内メーカーを保護するために、外資を締め出しているのでは」という懸念を示す、医療関係者は少なくない。実際、そのいずれの企業も厚労省との関係が深く「官業の癒着」を指摘する声もある。

 低い検診・受診率にワクチンの未承認-。こうした問題に、前出の鈴木教授は声を上げる。

 「予防できる病気を予防しないのは、医師として本末転倒としか思えない。予防策の強化で財政負担は増えるが、患者が減れば、その分の医療費は減り、結局はプラス。何より、子宮摘出のような悲劇がなくなる。総合的に考えてほしい」(2008年5月13日)

■子宮頸がん

 子宮内膜が患部なのが「子宮体がん」で、子宮の入り口に発生するのが「子宮頸がん」。子宮がんの多くが頸がん。性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因。ほとんどはがん化に至らないが、10年程度の長期感染後、0・2%程度ががん化するという。

■検診方法

 子宮頸部から小さなへらのような器具で細胞をこすり取り、顕微鏡で調べる。検査そのものは1、2分で終わり、痛みはない。ほぼすべての自治体で行っていて、料金は無料から2000円程度。