店舗+ネットでお好みスーツを
「洋服の青山」名古屋に新型店

紳士服大手が、実店舗とネットの使い勝手をつなげた事業展開を図っている。「洋服の青山」を展開する青山商事は名古屋・栄に、店内のタッチパネルで、全店舗の在庫から好みのスーツを注文できる新型店をオープンした。ネット通販の台頭もあって競争が激しさを増す中での対抗策の一つだ。(西山輝一)
11月15日に開店した栄広小路店は、店舗とネットを融合した「デジタル・ラボ」と位置づける店舗。2年前から東京で始め、7店舗目となる同店は中部地方では初出店となる。
来店客は採寸後に、スタッフの案内でタッチパネルを使い、約1500種類のスーツから好みのデザインや色を選ぶ。商品は翌日以降に自宅に届く。従来より店舗に在庫を抱えなくてもよいので、売り場面積は270平方メートルと通常の3分の1ほどに抑えられるのが特徴だ。
ただ400種類ほどのスーツは置いてある。着心地を確かめられないネット通販に対し、買いたいスーツと同じような品を試着してもらうためだ。岩崎達弥店長(35)は「対話を大事にしながら商品をお薦めしたい」と話す。
新型店の現状の売上高は計約6億円と、青山商事全体の0.2%ほどだが、向こう2年間で6倍近い34億円に伸ばす計画だ。
スーツ市場は縮小傾向が続く。総務省の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの背広の年間消費額は2017年は約5200円。00年の半額にあたる。
百貨店などに比べ、紳士服大手の業績は比較的堅調ではあるが、近年はユニクロやイオンが低価格のスーツ市場に参入。さらに衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイ(千葉市)のスーツ販売は大きな話題となり、縮まるパイの奪い合いは激しい。
実店舗を持つことを強みに生かす紳士服大手の取り組みは、ネット通販のさらなる拡大を見据えた動きと言える。AOKIホールディングスは全国の店舗にオーダースーツの専用コーナーを設け、来店客の好みに合ったスーツを仕立てるサービスを今秋から始めた。来年1月にも2着目からネット注文できる新サービスを始める。
(2018年12月5日)