名古屋に全国のフリーペーパーを集めた専門店オープン
ONLY FREE PAPER(オンリーフリーペーパー)

無料で配られるフリーペーパーを全国各地から集めた専門店「ONLY(オンリー) FREE(フリー) PAPER(ペーパー)」が9月、名古屋市中村区にオープンした。広告の印象が強いフリーペーパーだが、近年はユニークな記事を載せた「読みもの」としても注目度は高い。松江健介代表(36)=東京都杉並区=は「作り手と読み手がいるのは本と同じ。両者をつなぎ、紙文化の素晴らしさを伝える場をつくりたい」と話す。 (世古紘子)
「社会人4年目、カラダの異変」「月刊妄想星占い」「特集、恋する縄文」・・・。店内の机や棚にずらっと並ぶフリーペーパーの表紙に、独自の視点で書かれた記事の見出しが目を引く。名古屋駅西口から歩いて約5分。発行頻度などにより、入れ替えながら約100タイトルずつ、年間約500タイトルを扱う。「店」と銘打つが、来た人が気に入ったフリーペーパーを1タイトルにつき一部に限り、無料で持ち帰れるのが特徴だ。運営費は、グッズ販売や場所に合わせた選書、フリーペーパー製作に関する相談業務などでまかなわれており、開店以来、若者から高齢者まで幅広い世代が来店する。
松江代表は「特定のフリーペーパーを求めて来る人も、『こんなのもあるんだ』と世界を広げる人もいて、面白がってくれている」と手応えを語る。「恐らく世界初」という専門店を東京都内に開いたのは2010年。スタイリストをしていたころの同僚が、趣味でフリーペーパーを集めており「今までにない本屋をやりたい」との思いから提案。松江代表も賛同し、一緒に立ち上げた。
その後、屋上の魅力を発信するフリーペーパー「屋上とそら」を発行する堀江浩彰さん(42)=名古屋市中村区=と知り合い、名古屋店も計画。堀江さんが所有するビルの1階で始めた。
店には、単なるクーポン誌や求人誌は置かない。「販売ありきでないからこそ自由に表現できるのがフリーペーパーの良さ。『本屋』という位置付けなので、面白い読みものかどうかで選んでいる」と松江代表。作り手は、個人や趣味の団体などさまざま。かつては企業の広告が主体の求人誌などが目立っていたが、最近は自治体が刊行するものも増えている。扱うテーマも、育児にメンタルヘルス、地域活性化、音楽や考古学と、より細分化しているという。
同店を先駆けに、京都や大阪でもフリーペーパー専門店が登場しており、松江代表は「置く場所ができたことで、新たに発行しようという人も出てきている」と明かす。「紙媒体は、載せる情報が有限だからこそ読み手に伝わる強度が高い。紙媒体を面白がる人も増えれば」と期待している。
(2018年10月12日)