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「天使のような存在です」と、いとおしそうに安寿(左)と縞を抱き上げる佐藤道代さん=千葉県内で
「天使のような存在です」と、いとおしそうに安寿(左)と縞を抱き上げる佐藤道代さん=千葉県内で

プロフィール

 さとう・みちよ 1968年、神奈川県生まれ。津田塾大卒業後、米ニューヨーク大大学院でイサドラ・ダンカン国際学校芸術監督ジーン・ブレシアニさんと出会い、ダンカン・ダンスを始める。99年イサドラ・ダンカン国際学校教員免許取得。現在、同校日本大使として公演活動、指導を行う。

佐藤道代さんと縞、安寿 ★猫(いずれもメス 推定14歳、推定12歳)

運命の出会いと
別れを共にして

  モダンダンスの母と呼ばれ、20世紀初頭に活躍した舞踊家イサドラ・ダンカン。彼女の舞踊を研究、公演と指導をしているのが、振付師で舞踏家の佐藤道代さんだ。ペットは猫の縞(しま)と安寿(アジュー)。

 「最初に智朗(ちろ)というオス猫がいました。わが家は三姉妹だったので、父は“長男”として 溺愛しました」

 イケメンだった智朗に恋をしたのが、近所の野良猫、安寿。名前のように「アジュー」と鳴いて思いを寄せてきたという。智朗もまんざらでもなかった様子。いつも行動を共にしていたので佐藤家の“嫁”に迎えた。

 そのころ佐藤さんはギリシャでダンカン・ダンスを披露し、それを見初めた男性とロマンチックな出会いがあった。ある晩、父と2人暮らしをしていた佐藤さんが智朗に相談したという。

 「米国の科学者ですてきな男性に会ったの。でもお父さんが心配。どうしたらいい?」。すると智朗は真っ青な瞳を向けて、「僕に任せて」と言ったように佐藤さんは感じた。

 翌日、智朗は交通事故で亡くなってしまった。父の嘆きは深く、体調を悪くして入院していた時、近所の野良猫・縞が家に入ってきた。折しも、佐藤さんの恋人が初めて家にやってきた日だった。

 「縞は女王様気質で、家の主人には犬のように従うのですが、他の猫とはよくけんかをしていました。そんな縞ですが、智朗を失った心もとなさからか、安寿は受け入れました」

 翌年、佐藤さんは結婚し父も大いに喜んだ。ところがその翌月、父が外出先で急死。悲しみの中で佐藤さんはひたすら舞った。

 「涙が枯れ果てた時、智朗の言葉を思い出したのです。『僕に任せて』と言ったのは、私が彼と結婚して父を安心させるまで、父の命を延ばすために自分の命を犠牲にしたのではないかと・・・。父は思い残すことなくこの世を去っていったのですから」 

 現在は息子も誕生。親子3人と猫2匹の幸せな生活を送っている。父が大好きだった縞は息子にべったり。安寿は佐藤さんに・・・。2匹はお互いの距離を上手に保って生活している。撮影時に同じ空間で撮ろうとしても、縞が怒って強烈な猫パンチ。安寿は申し訳なさそうに背を丸め、佐藤さんの胸にしがみつく。佐藤さんは、母親のように2匹に優しく語りかけていた。

 「いつもはけんかをしているわけではなく、息子の誕生を助けてくれ、見守ってくれる天使みたいな存在です」

 玄関のステンドグラスには家族一人一人の姿が描かれていた。智朗、安寿、縞という歴代の猫たちとの生活の中で育まれてきたスイートホームは、安らぎに満ちていた。(文・宮西ナオ子、写真・高嶋ちぐさ)