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「断然かわいい」と、手にした吟を見詰めながら話す東野光生さん=横浜市内で
「断然かわいい」と、手にした吟を見詰めながら話す東野光生さん=横浜市内で
プロフィール

 とうの・こうせい 1946年和歌山県生まれ。水墨画家として宸殿襖(しんでんふすま)絵『天海幽明』(香川県・善通寺蔵、非公開)、障壁画『臨照図』(横浜市・善光寺蔵、非公開)など。画集に世界遺産仁和寺・高松宮記念書院『新作襖絵 四季曼荼羅(まんだら)』など、小説「似顔絵」で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

東野光生さんと吟、オスヘビ ★アリゾナ・マウンテン・キングスネーク(メス、オス いずれも8歳)

美しさと癒やし
奥深いオアシス

 「世界で一番美しいといわれるヘビです」。水墨画家で作家の東野光生さんは、自分の手に巻き付けながら、いとおしそうに見せてくれた。オレンジがかった赤と白の、交互のコントラストから目を離せなくなる。アリゾナ・マウンテン・キングスネークは、舌をちょろちょろと出しながら優雅にゆらゆらと動いていた。

 「舌でにおいを嗅いでいるんですよ」と東野さん。

 小学3年の時から熱帯魚を飼い、野鳥について専門的に学び、ウミヘビも飼ってきた。サンショウウオの飼育では、長年日本産希少種の人工ふ化と放流に取り組み、専門家に来訪されるほどだったという。そして今、東野さんをとりこにしているのが、美しいヘビ・・・。

 「8年前にペットショップでミミズくらいの大きさのメスを買い、しばらくしてからオスを求めた」

 繊細な印象のメスと、一回り大きなオスとでは明らかに動きや目つきが異なるという。オスはダイナミックで力強い。一方、メスの動きは優しく、しなやかで、色気すら感じられる。メスの名前は吟。オスの名前は非公開。

 「吟のほうが断然かわいい。指や腕に巻き付いてくる時も、静かに、遠慮がちで、しとやか」と東野さん。

 衣装ケースを改造した手作りケージで飼っているが、吟はここから失踪したことがある。

 「10月ごろでした。家中捜しても見つからない。冬に向かう季節。このヘビは15度以下で、2カ月水を飲まないと死んでしまう。外に出ていたら駄目かなと思った」

 近隣を捜し回りつつ、絶望的な気持ちで年を越した。翌年5月の終わりごろ、居間で話していた客人から「あら、きれいなリボンを結んでいるのね」と魔法瓶を指さされた。魔法瓶には、吟が優雅に巻き付いていたのだった。ヘビ嫌いの客は悲鳴を上げて、卒倒しそうになったが、東野さんは夢のような喜びに満たされた。

 「半年以上、何も食べなかったのでしょうね。やせ細っていました。いったい、どこにいたのか、どうして急に現れたのか、不思議でした」

 東野さんがこれほどまでに魅了されるのは、ヘビが孤独を好み、自立しているからだという。普段は緩やかに動くが、獲物を狙い、決断した瞬間に素早く、無駄なく行動に移す俊敏さにも美意識を感じている。

 「吟たちの存在は私のオアシス。みずみずしく、鮮度の高い癒やしの場です」

 東野さんの描く奥深い水墨画は、このオアシスから生み出されるのだろう。(文・宮西ナオ子、写真・由木直子)