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「室内ではとても甘えん坊です」と、いとおしそうにパンを抱き締める小林美恵さん=東京都内で
「室内ではとても甘えん坊です」と、いとおしそうにパンを抱き締める小林美恵さん=東京都内で
プロフィール

 こばやし・みえ 東京芸術大を首席で卒業。1943年から開催されている「ロン・ティボー国際コンクール」(当時)バイオリン部門で、90年に日本人初の優勝。2015年にデビュー25周年。今年6月25日には、25周年記念リサイタルシリーズの第4回「音の神秘」を開催予定。

小林美恵さんとパン 猫(オス 17歳)

生演奏を味わい
狩りもけんかも

 バイオリニストの小林美恵さんの愛猫は「パン」。ルーツは興味深い。もともと猫好きの小林家には、かつて、ある野良猫がよく遊びに来ていた。庭にやって来ては憩い、たまに食事のおすそ分けにあずかっていた。小林家では、その猫を「ピー」と名づけてかわいがっていた。

 ある日、ピーが4匹の子猫を連れて現れた。子猫たちは順調に育っていったが、いつしかピーとともに、小林家から姿を消した。でも、その中で一番小さな猫だけは、いつまでも単独で小林家を訪れては餌をねだった。「チビ」と名づけられたこの猫のおなかが、徐々に大きくなっていった。そして今までは禁断だった小林家のリビングに上がり込み、自分の居場所を見つけ、そこから動こうとしなくなった。

 「その様子は『どうしても、ここで私の赤ちゃんを産みます!』と宣言しているようでした。出産用に段ボールを与えたところ、すぐに準備を始め、私の母が近くで見守る中で、安心して2匹の赤ちゃんを産んだのです」

 オスはパンダのような模様なのでパン。メスは黒っぽい毛色で、クッキーが好きだったので「クー」と名づけた。チビは子猫の世話をかいがいしくしていたが、3カ月後に突然姿を消して、以後現れることはなかった。クーの方も2歳まで一緒に住んでいたのだが、3歳になる前の冬、突然姿を消した。

 「こうしてパンだけが家に残ったのです」

 そんなパンと生活して16年。パンは野良の血をひくためか、今も家の周辺をパトロールするのを忘れない。しかも時折、立派な狩りをして、スズメ、トカゲ、セミなどの獲物を誇らしげに持ってくる。時には近所の猫と大げんかすることも・・・。

 「近くで大きな鳴き声がしてパンだと分かると、仲裁に駆けつけます。『子どものけんかに親が出る』ではないですが、まさに『猫のけんかに飼い主が出る』状態(笑)」

 誇り高くもあり、やんちゃでもあるパンだが、室内では極めて甘えん坊。取材中もずっと小林さんの膝に顔をうずめている。小林さんが家にいるときは、常にそばから離れないという。

 「夜、練習をしている時も、じっと聞いていますね。小さい時はバイオリンのケースにすっぽり入って眠っていました。でも飽きると、『もう一緒に寝ようよ』と邪魔しに来ます。私も誘惑に負けて、つい一緒に休んでしまうことが多い(笑)」

 何とも幸せそうな小林さん。世界で活躍するバイオリニストの「音の神秘」に、愛猫パンが貢献しているのかもしれない。

  (文・宮西ナオ子、写真・中西祥子)