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山本裕康さん(左)と妻の諸田由里子さんに甘えるクロ。「帰宅が遅いと、ワーッと怒ります」=東京都内で
山本裕康さん(左)と妻の諸田由里子さんに甘えるクロ。「帰宅が遅いと、ワーッと怒ります」=東京都内で
プロフィール

 やまもと・ひろやす 愛知県出身。桐朋学園大を首席で卒業。第56回日本音楽コンクール第1位。東京都交響楽団首席チェロ奏者を経て、神奈川フィルハーモニー管弦楽団首席チェロ奏者に。各地の音楽祭でも活躍。2月26日に名古屋市の宗次ホールで生誕50周年記念コンサートを予定。

山本裕康さん・諸田由里子さん夫妻とクロ 猫(メス 推定18歳)

野良出身今では
すっかり家の主

 チェリストの山本裕康さんと、妻でピアニストの諸田(もろた)由里子さんの猫「クロ」は、推定18歳になる三毛猫。高齢だが、大きな目にふっくらした頬。世間で人気の和歌山電鉄の猫駅長にも似た愛らしさだ。

 三毛猫なのにクロというゆえんは、「子猫の時、三毛猫きょうだい2匹で家の前に現れたんです。そこで黒っぽい方をクロ、小さい方をチビと呼んでいました」

 野良が産んだであろう子猫たちに、山本さんは食べ物を与えるようになった。

 「チビは気が強く、よくスーパーのレジ袋をくわえて歩いていました。逆にクロはとても臆病で、なかなか懐きませんでした」

 1年たち成長したクロは5匹の子猫を連れてきた。出産と子育てで激痩せしていた。何とかせねばと、クロと子猫たちに繁殖制限処置をした。

 子猫たちはしばらく家の周りで過ごしていたが、成長とともに離れ、気ままな生活を送るようになった。だがクロは少しずつ山本さんに慣れ、家に入ってきた。

 「クロは気が弱いので、安全な家の中が良かったんでしょうね。ジャンプするにしてもテーブルは無理、せいぜいいすに乗る程度です」

 クロは家の中心的存在となり、いつも居間の特等席を独占するように。山本さんのCD「情景」のジャケットには、飼い主が奏でるチェロを傍らで聞くクロのイラストが。いつもこんなふうに音楽を楽しんでいるのだろうか?

 「実はクロはチェロの音が苦手。大きなライバル猫だと思うようで、決して近づきません」

 だが諸田さんが弾くピアノは平気で、練習していると鍵盤に上って邪魔をするという。

 一方、自立したクロの子どものうち、「ピク」と「タン」というオス2匹は、時々家に顔を見せに来ていた。しかしタンは10歳を過ぎたころから次第に痩せていった。ある朝、玄関の近くで寝ているタンを見つけ、近寄って頭をなでたら、既に冷たくなっていた。

 「最期にうちに帰ってきてくれた。ありがとうと言い、荼毘(だび)に付しました。クロの子どもたちもみな楽しい思い出を残していってくれました」

 いつしかピクの姿も見えなくなり、母猫のクロだけが残った。

 クロは今も必ず一日一度は玄関の外に出て家の周りを眺める。そして平和であることを確認し、ストーブの前でのんびり時間を過ごす。

 「好きな時に食べ、好きな時に遊ぶ。僕も猫になりたいくらい。このままずっと変わらずに、2020年東京五輪もクロと一緒にテレビで見たいですね」

 (文・宮晶子、写真・中西祥子)