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善竹十郎さんの神聖な稽古場に特別に入室を許された愛犬三郎丸=東京都内で
善竹十郎さんの神聖な稽古場に特別に入室を許された愛犬三郎丸=東京都内で
プロフィール

 ぜんちく・じゅうろう 1944年生まれ。故善竹圭五郎さんの長男。重要無形文化財総合指定保持者。能楽協会・日本能楽会会員。83年度芸術選奨文部大臣新人賞・93年大阪文化祭賞受賞。早稲田大エクステンションセンター講師。

善竹十郎さんと三郎丸 シバイヌ(オス 12歳)

褒めながら教え
「三男」と深い絆

 「12年前にマイホームを新築した際、この家にやって来たのが三郎丸です」

 狂言師の善竹十郎さんは、元気の良いシバイヌをしっかりと抱きかかえ、懐かしそうに話した。普段は入れない神聖な稽古場に、撮影のため入室を許可された三郎丸。いささか興奮気味だが、飼い主としてきっぱりと制す善竹さん。深い信頼関係で結ばれているのがよく分かる。

 「小鼓方の幸(こう)信吾さん宅で生まれたというので、譲っていただきました。名前は、長男の富太郎、次男の大二郎に次いで、この子は三男。そこで三郎丸としました(笑)」

 生後2カ月。マメシバといわれるくらい小さかった三郎丸も、現在、12歳。犬としては高齢になったがエネルギッシュ。しかも善竹さんの指示には、耳を立て、胸を張ってよく従う。お見事!

 「子どもたちには親の言うことをどうしたら聞いてくれるか創意工夫してきました。三郎丸についても同様。試行錯誤を重ね、褒めながら教えていくことが最も効果的だと知りました。おかげで子どもたちに対しても、芸の神髄を教えるコツがつかめました」

 代々継承する狂言方の家柄に生まれた善竹さん。5歳の時には既に小舞で舞台に立ち、6歳にして『靭猿(うつぼざる)』の子方(こかた)として、初舞台を踏んだ。狂言師を目指す人が幼少時にチャレンジする演目だけに稽古も厳しかったが、常に勇気を与えてくれたのが愛犬たちの存在だった。

 「子どもの時からいつも犬が近くにいる生活でした。セッター、ビーグル、コッカースパニエル・・・。もはや犬のいない人生なんて考えられません。今は、毎朝、家内と一緒に三郎丸を連れて散歩に行くのが楽しみの一つです」

 家の近くには緑豊かな公園や遊歩道もあり、四季折々の自然の移ろいを楽しみながらの散策は、夫婦円満、健康長寿の秘訣(ひけつ)とか。

 「家内が茶の湯をたしなんでいますから、歩きながら茶花を探したり、つれづれなるままに、会話を交わしたり、ごみが落ちていたら、拾ったり・・・。毎朝、1時間くらい、5000歩以上は歩きます」

 体調はいいし、気分も優れる。このような生活習慣をベースに、多くの人に「笑い」を提供してきた。そんな善竹さんの近くにいるだけで癒やされ、話すだけで楽しくなってくる。

 「最近では、笑いが健康や長寿の源といわれ研究もなされています。狂言は笑いに加え、腹式呼吸での発声方法をしますから、見るだけでなく、習うのも楽しいですよ」

 狂言と健康の醍醐味(だいごみ)についてユーモアを交えて話す善竹さん。その横では、三郎丸が口角を上げ、目を細め、笑っているような顔で、善竹さんを見上げていた。(文・宮西ナオ子、写真・由木直子)