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森澤勇司さんに新しい発見や感動を与えてくれるリクガメの梵梵=東京都内で
森澤勇司さんに新しい発見や感動を与えてくれるリクガメの梵梵=東京都内で
プロフィール

 もりさわ・ゆうじ 東京都出身、1967年生まれ。87年に能楽師に(重要無形文化財総合認定)。著書に「ビジネス版『風姿花伝』の教え」。

森澤勇司さんと梵梵 ヘルマンリクガメ(オス 6歳)

ひらめきくれる
静かな「哲学者」

 能楽師、小鼓方の森澤勇司さんのペットは、ヘルマンリクガメの「梵梵(ぼんぼん)」。甲羅の模様が「凡」の字に似ているための命名だが、文字で表すときは「梵」の字を使う。地中海気候で生息し、ワシントン条約で保護されている種でもあるが、そんな珍しいリクガメとの出会いは、「うさぎとかめ」の寓話(ぐうわ)からだった。

 「当時はウサギを飼っていたので、『うさぎとかめ』の話に興味を抱きました。そして登場するカメが、海外ではリクガメだと聞きました」

 新鮮な驚きを感じたとき、縁あって、ヘルマンリクガメを養殖している人と出会い、譲ってもらった。それから一緒に暮らして6年。途中、森澤さんは脳梗塞で倒れたのだが、その間もけなげに元気づけてくれたのが梵梵だ。

 「本当に手がかかりません。餌は私が畑で作っている野菜ですし、水分もそれほどとらない。犬や猫のように鳴いたりすることもなく終日静か。数日の外出ならば大根一つでOKです(笑)」

 購入時は7センチほどの甲長が、今では20センチに成長。梵梵との暮らしは、非常に哲学的で示唆に富む。

 「ウサギと比較すると、明らかにカメの方が人間に近い。それに競走したらカメが勝つと容易に理解できます」

 ウサギは通常、草などを食べ、肉食獣に追いかけられない限りはのんびり過ごす。だから目標に向かって走る習性はないと森澤さん。ところがリクガメは、同じ草食とはいえ、餌などに直進して走る。つまり目標に向かって突進するエネルギーが強いらしい。

 「カメはのろのろ歩くというイメージがありますが、リクガメは爬虫(はちゅう)類ですから。まるで甲羅のついたイグアナみたいですよ(笑)」

 プラスチック製のケージの中から脱出しようと、ガサゴソ動き回る。壁をよじ登り、何度も落ちて挫折を繰り返した後、やっと、達成することもあり、「繰り返し」の大切さを教えてくれる。

 「梵梵を見ていると、今までカメという固定観念で捉えていたイメージが覆され、新たな発見をすることが多く、感動する日々ですね」

 稽古中の小鼓の音に反応し、森澤さんをじっと見詰めていることも。また何かを考えているときに、梵梵に問い掛けると、きれいな目で見詰め返し、深遠な答えを教えてくれるようだともいう。

 「20歳から能楽界に入り研さんを積んできましたが、梵梵のおかげで、自分の今までの曲への思い込みなどが切り替わったり、広がったりしています。演じる曲をさまざまな角度から見られるようになり、能楽をより深く味わえるような気がします」

 梵梵は、これからも、森澤さんに、さまざまな「ひらめき」を与えてくれるだろう。    (文・宮西ナオ子、写真・北村彰)