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売野雅勇さんにスリスリと甘える愛犬の輪四郎=東京都内で
売野雅勇さんにスリスリと甘える愛犬の輪四郎=東京都内で
プロフィール

 うりの・まさお 1951年生まれ。栃木県出身。74年、上智大卒業後、広告代理店を経てコピーライターに。81年作詞家として活動開始、82年中森明菜さんの「少女A」がヒット。作曲家芹澤廣明さんとのコンビでチェッカーズ一連のヒット曲を作詞。

売野雅勇さんと輪四郎 トイプードル(オス 12歳)

ひらめきの源泉
創作陰で支える

 「輪四郎(りんしろう)は創作活動とインスピレーションの源泉。この子のおかげで、これまでたくさん作品を書けた。いなくなったらどうしようかと、本気で案じているところです」

 今年、作詞家生活35周年を迎える売野雅勇さん。膝の上でぶるぶる震えているのが輪四郎。サマーカットにした細い体が、まるで鳥のひなのよう。宇宙的ともいえる雰囲気で「ヒイイン、ヒイイン、クヒイイン」と何とも不思議な声で鳴きながら、売野さんをいちずに見つめて「遊んで、遊んで」と迫っていく。

 「娘が成人式を迎える時、誕生日に犬をプレゼントすることに。そこで彼女が選んだトイプードルを見に行くと、誕生日を聞いてびっくりしました。何と僕の母の父、つまり祖父と同じ日だったのです。しかも、僕は、親戚の中でも最も彼と似ているといわれているんです」

 大いなる縁を感じた売野さん。もちろんこの子を家に迎え、名前も祖父と同じ「輪四郎」にした。念のため母に打診するも快諾。以後12年、輪四郎は家族の人気者になり、特に売野さんの仕事には欠かせない存在になった。

 「輪四郎が来た当時、僕は作詞家として、ある種の達成というか、やりきったというような感覚があり、次なるステージとして芝居などを書き始めていた時でした。ちょうど2作目の作品に取り組んでいましたが、試練を乗り越えるのが大変で、七転八倒しながら書くことも多かったのに、徐々に不思議なことが起きるようになったのです」

 それが、“本物”と気付いてから、既に8年が経過。その“不思議な現象”とは?

 「例えば苦しいとき、書けないときに、輪四郎を仕事場に連れていくのです。彼が仕事場に入ってから、3時間くらいのうちには必ず書ける。100パーセント、外したことは一度もありません」。まさに制作秘話。このゆるぎない成功率を誇る「輪四郎効果」で、さまざまな歌詞を書き、多くの芝居やショーの演出を成功させてきたのだった。

 今年は3人のロシア出身の女性歌手ユニット「MAX(マックス) LUXURY(ラグジュアリー)」のデビューにも力を注ぐ。デビュー曲「Take Me To Fujiyama」に加え、東日本大震災の際に犠牲となった人をテーマにした「聖なる人」も、輪四郎のおかげで完成した名曲という。

 「輪四郎の力をあまり使い過ぎてもよくないなと思ってこのごろは少しセーブしています。でも大きな仕事や勝負のときは、必ずお願いしてしまう。輪四郎は僕にとっての魂の片割れ。もしかしたら前世は人間で、今生は僕を助けるため、犬に姿を変えてやって来たのかも」。世にも不思議な輪四郎物語なのだった。

 (文・宮西ナオ子、写真・高嶋ちぐさ)