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「招き犬」になって来客を出迎える一色采子さんの愛犬タンゴ(左)とリンゴ=東京都内で
「招き犬」になって来客を出迎える一色采子さんの愛犬タンゴ(左)とリンゴ=東京都内で
プロフィール

 いっしき・さいこ 東京都出身。1958年生まれ。女子美術短期大卒。舞台、映画、テレビなどで活躍中。8月23日~9月30日、「錦絵 夏すがた」「明日の幸福」の2本立てで全国公演。父は日本画家の大山忠作さん(2009年死去)。

一色采子さんとタンゴ、リンゴ

父の忘れ形見に
しつけきちんと

 女優の一色采子さん宅を訪問すると、美しい毛並みの豆柴(しば)2匹が行儀よく足をそろえて出迎えてくれた。タンゴとリンゴは「招き犬」状態で玄関に座り、一色さんの爽やかな笑顔と相まって、まさに三重のおもてなし。インタビュー中もおとなしく、一色さんとアイコンタクトをして、次なる指示を待っていた。

 「しつけには時間とお金を相当使いましたよ。トレーナーが言うには、頭の悪い犬はいない、いるのは頭の悪い飼い主だけですとのことで、私も必死になって(笑)」

 手間暇をかけただけのことはある。それに2匹は特別な存在でもあるという。

 「もともと捨てられていたオパール犬や猫を保護し、たくさん飼ってきました。でもこの子たちだけは血統書付き」。オパール犬というのは、一色さんがネーミングした、いわゆる雑種のことだ。

 「雑種なんて失礼ですよ。そこで、私は宝石に例えました。オパールって一つ一つ、斑(ふ)の出方が異なりますよね。ミックス犬や猫もそれぞれ個性が異なるでしょう?」

 オパール犬好きの一色さんが、あえて豆柴を飼ったのは、実は父(画家の故大山忠作さん)のため。忠作さんが長い間愛し、孫のようにかわいがった愛犬が亡くなった時の落胆ぶりを見ていられなかったのだ。

 「父は食欲もなくなり、しょぼんとしていました。父を励ますために豆柴をプレゼントしたのです。最初は2匹飼うつもりはなかったのですが、きょうだいで仲が良かったので、つい一緒に(笑)」

 2匹の子犬がやって来て、家の中に再び明かりがともり、忠作さんも元気を取り戻していった。しかし忠作さんは1週間後、検査入院すると、1カ月後には86歳で帰らぬ人になった。

 「あまりに突然で、予期せぬことでした。父のために迎えた子たちなのに、一緒に過ごせたのは、ほんのわずかな期間でした」

 目を離せない2匹の子犬がいたので、悲しみを乗り越えられた。「父が寂しくないようにと託してくれた、大切な分身なのかもしれません」

 それから6年、タンゴとリンゴは、すくすくと成長し、今や一色さんの生活に欠かせない存在だ。今年8月には、久しぶりの舞台も控えていて、役作りの準備中。

 「父が他界してから、しばらく仕事ものんびりとこなしていましたが、1カ月にわたる舞台中は、久々にこの子たちをトレーナーに預けます」

 千秋楽のころ、2匹の名犬ぶりは、さらにバージョンアップしているだろう。

  (文・宮西ナオ子、写真・石井裕之)