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気持ちよさそうに、山田さんのマッサージを受けるブルドッグの亀太郎=東京都内で
気持ちよさそうに、山田さんのマッサージを受けるブルドッグの亀太郎=東京都内で
プロフィール

 やまだ・まなぶ 栃木県出身。防具を使用する硬式空手を経験後、初代「タイガーマスク」で知られるプロレスラー佐山聡さんが創設した総合格闘技団体に入門。1990年プロデビュー。2000年現役引退。03年、東京都内で整体院ビープラスを開設。

山田学さんと亀太郎 ブルドッグ(オス 推定9歳)

家族愛に包まれ
悲しい過去卒業

 「(自転車競技の)ケイリン選手として、5年後の東京五輪出場を目指します。今は亀太郎と一緒にトレーニングをしています」

 そう話すのは総合格闘家の山田学さん。整体治療者として活動する一方で、異分野へのチャレンジ精神を忘れていない。

 自宅から、自ら経営する整体院まで約1キロの道のりを、亀太郎と走り続ける。体重が33キロもある亀太郎と、85キロで筋骨隆々の山田さん。ビッグなコンビは、街中でも整体院でも人気を集めている。

 「亀太郎は、今はこんなにたくましくなりましたが、家に来た当時は、がりがりに痩せてシバイヌみたいでした」

 7年前のこと。当時、推定2歳。大阪の保健所で殺処分を待っていた。同じころ山田さんも最愛のブルドッグを失い、家族全員が、ひどいペットロスに陥っていた。山田さんを心配した友人が、情報をもたらしてくれたのだ。

 「次の犬を飼うという気持ちすらなかったのですが、とにかく会ってみようということで、妻と大阪に…」

 そこにいたのは表情が無くぼうぜんと空を見るだけの、生きる希望を失ったような幼い犬-。

 「毎日、自分の仲間が殺されていくのを、おりの中で感じ、1日1日、『その日』が来るのではという不安におののいていたのでしょう。どんなに怖くて、つらかったことか…」

 ブルドッグという珍しい犬種のために1カ月も命を永らえることができた。本来ならば大阪の保護犬を東京の人に譲渡するのは難しいが、保護団体から特別の許可を得て、亀太郎は山田さんの家にやってきた。長生きするように「亀」が付く名前にした。

 「最初の数カ月は、ぼーっとしているだけで全く反応がありませんでした。でも、やがてハトに尻尾を振り、猫にも尻尾を振るように。最近では、人間顔負けの豊かな表情でうれしそうに笑います」

 今では、幸せいっぱいな亀太郎。時には山田さんにマッサージをしてもらい、うっとりした表情を浮かべる。

 「実は、家族の間では約束事があって、亀太郎の前で悲しい過去の話はしないことになっていました。亀太郎は人間の言葉が分かっているみたいでしたから。ですから今日、初めてこの話題を持ち出しました。もう悲しい過去は卒業だね、亀太郎?」

 そう言いながら亀太郎を羽交い締めにする山田さん。「ぶふぶふ」と喜ぶ亀太郎。

 亀太郎は、ペットロスの淵(ふち)から山田さんを救った恩犬だ。(文・宮西ナオ子、写真・木口慎子)