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「すごい生命力」と馬野さんが驚くクサガメの義経(左)と静=東京都内で
「すごい生命力」と馬野さんが驚くクサガメの義経(左)と静=東京都内で
プロフィール

 うまの・まさき 京都市出身。銕仙会に入門。父や故河村隆司、故八世観世銕之丞(てつのじょう)、九世観世銕之丞の各氏に師事。新作・復曲能や映画、海外公演も多数参加。華諷会を主催。

馬野正基さんと義経、静 クサガメ(性別不明 ともに2歳)

どこまで成長!?
あふれる生命力

 観世流シテ方能楽師、馬野正基さんが両手に持っているのは、クサガメの義経と静。大きくて威勢が良い方が義経、小さい方が静だ。

 「2年前、高知県で『船弁慶』と『橋弁慶』の薪能を舞いました。私がシテ(主人公)で、子方(こかた)(子役)として出演した長男に、ご褒美としてカメが欲しいと言われました。だから実際は長男のカメで、出演した能にちなんだ名前を彼が命名したんです」

 日々の世話を求められる生き物の飼育は、簡単に許せるものではない。しかし馬野さんは自身の少年時代を思い出した。小学校のころ、大切に育てていたのが、ペットのリクガメだったのだ。

 「子方で出演してもらった小遣いをためて買いました。セロリやニンジンを私の手からバリバリ食べて。よく慣れていたのですが、ある時事故で亡くなった。大泣きしましたよ」

 動物を飼育する責任や、別れの悲しさなどを、長男と十分に話した上で、ペットショップに赴いた。そこには小さなカメがいた。

 「イシガメはすごく高かったので、少し安いクサガメに(笑)。でも純血種ではなく顔の感じが『ミシシッピアカミミガメ』のように見えました。購入時には、どれほど大きくなっても外に放たないという誓約書を書かされました。もちろん最後まで面倒を見ますが、この勢いで大きくなったらどうしよう? カメは長生きしますからね」

 500円玉サイズだった義経は、今や全長20センチに迫る勢い。水槽の中で所狭しと動き回る。冬の間は、冬眠シーズンで比較的おとなしいが、それでも馬野さんが帰宅すると、ばたばたと寄ってきて、口を開けて餌をねだる。

 「義経は力が強く、食欲旺盛なので、静の尻尾まで食べてしまいました。餌は私の手から食べ、時には手までかじられることがあって痛いですよ」

 能楽師として多忙な生活を送る馬野さんは、家に戻り、義経と静の歓迎を受け、その動きを見ているときに、内に秘めた強さに感動することがあるという。

 「カメにはすごい生命力がありますね。言葉も発せず、じっと動かずにいますが、機をうかがい、『これぞ!』というときは速い。エネルギーをためて瞬時に発散させる・・・能と相通ずるところがあるかもしれません」

 能にも「鶴亀」という祝言の曲があり、天下泰平や国家の長久を祈念する。義経と静は、まるで馬野さんの師のように、さまざまなことを伝えてくる。(文・宮西ナオ子、写真・高嶋ちぐさ)