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大木さんとセラピードッグの(手前右から)ブギー、こたろう、訓練中の日の丸(左端)。後ろの絵は先輩セラピードッグのチロリ=東京都中央区の国際セラピードッグ協会で
大木さんとセラピードッグの(手前右から)ブギー、こたろう、訓練中の日の丸(左端)。後ろの絵は先輩セラピードッグのチロリ=東京都中央区の国際セラピードッグ協会で
プロフィール

おおき・とおる 東京・日本橋人形町(中央区)生まれ。ブルースシンガーとして日本人で初めて米国永住権を取得。動物愛護家としても日米親善に尽くす。2002年国際セラピードッグ協会を設立。弘前学院大客員教授。著書に『名犬チロリ』など多数。

大木トオルさんとこたろう、ブギー 雑種(オス 推定9歳、オス 推定10歳)

捨て犬から転身
人に役立つ存在

 「犬は大親友。小さいときから犬にお世話になってきた恩返しをしたくて、放棄された犬を保護し、人間に役立つセラピードッグになるように訓練しています」

 捨て犬や被災犬を保護する活動をしている大木トオルさん。その横に、こたろうとブギーがぴたりと寄り添う。大木さんは2匹を両脇に抱えながら、いとおしくてたまらないという表情で、「おお、いい子だ、いい子だ。よしよし」と語りかける。

 この2匹も捨て犬だった。殺処分前日に収容施設から保護された。約8年前のことだ。それ以後、大木さんをはじめ、関係する人間たちの愛情のもとで訓練を受け、今ではセラピードッグとして活躍し、被災地にも赴いている。

 セラピードッグとは、福祉施設やホスピスなどを訪れ、高齢者や病気の人々と接し、心身の回復を助ける仕事をする特別な訓練を受けた犬のこと。それまでの常識では、血統書つきの選ばれた犬だけに資格があるとみなされてきたが、大木さんは、殺処分寸前の捨て犬をセラピードッグに育て上げてきた。

 その第一号が、名犬として今も語り継がれるチロリだ。後ろ足に障害のあったチロリは、大木さんに救われる。セラピードッグとして育成され、病気に苦しむ人たちに寄り添った。「多くの人がチロリから生きる勇気をもらいました」と大木さん。2006年にチロリが亡くなると、各地の養護施設などから感謝状が届いた。歌舞伎座に近い、築地川銀座公園(東京都中央区)に記念碑が立つ。

 「一度は人間に捨てられ、殺される寸前までいった犬たちは、孤独や恐怖を体験したはずです。最初は人間に不信感を持ち、心を閉ざすこともありますが、やがて人間を信じることを思い出し、今度は、多くの人の心に触れて人を勇気づけ、励ましてくれるようになる。本当に純粋で、けなげです」

 そう語る大木さんは、ブルースシンガーとして日米で活躍し、昨年冬には45周年を記念したコンサートを開いた。だが、小さいときは吃音(きつおん)障害で悩み、孤独で寂しい幼少時代を過ごしたという。そんな大木少年の唯一の友達が、家で飼っていた愛犬のメリー。いつもそばに寄り添い、くじけそうになる心を癒やしてくれた。ところが・・・。

 「12歳のとき父の事業が失敗して一家離散。メリーとも別れなくてはならなかった。やるせなかった。今になって考えると、メリーは処分されてしまったのだろうと推測します」

 当時を話す大木さんの顔が曇る。だからこそ、捨てられ、殺される運命にある犬を1匹でも多く救いたいという思いが募る。「人も犬も生きることを絶対に諦めてはいけない」と。

 (文・宮西ナオ子、写真・川上智世)