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好奇心旺盛なトトと角田光代さん=東京都杉並区で
好奇心旺盛なトトと角田光代さん=東京都杉並区で
プロフィール

かくた・みつよ 1967年生まれ。横浜市出身。早稲田大卒業後、「幸福な遊戯」で第9回海燕新人文学賞を受賞し、デビュー。2005年「対岸の彼女」で直木賞受賞。他に映画化された「八日目の●(せみ)」、現在NHKでドラマ放送中の「紙の月」など話題作を発表。

角田光代さんとトト アメリカンショートヘア(メス 4歳)

飼い主顔負けの
心理作戦を展開

 女性の多様な人生を描き続ける作家角田光代さん。飼い猫は、人なつこい性格のトト。取材の際、最初は隣の部屋に隠れたが、数分もすると姿を現し、興味深げに近寄ってきた。角田さんが猫じゃらしを振ると、トトトッと走る。

 トトが生まれた家は、漫画家の西原理恵子さん宅。角田さんが初めて西原さんに会った時、「うちの猫に子猫が生まれたら飼いませんか?」と突然聞かれたのだ。角田さんは驚いたものの、すぐに「はい!」と答えてしまった。

 「猫は飼ったことはなかったんですが、あのころは、とにかく毛の生えているものが欲しかったんですね」

 1年近くたって、待望の子猫がやってきた。トトという名は猫好きの夫がフィーリングで命名。角田さんはトトの甘えっ子ぶりに驚いた。「いつも私たちにべったり、寝るときも一緒。猫はもっとクールなものだと思っていました」

 規則正しい作家生活を送る角田さんは、朝9時から夕方5時まで事務所で仕事。残業はしない主義なので、夜はずっとトトと一緒だ。ミュージシャンの夫とともに仕事で長期間、出掛けることが多いが、トトのために必ずどちらかが家にいるようにスケジュールを組む。

 そんな愛するトトに、思わぬ病気が発覚。遊んだ後にハッハッと口を開けて呼吸するので、異変を感じ動物病院に連れていくと、心臓が肥大する病気だと告げられた。

 「有効な治療法はないので漢方薬を試してみましょう。あまり遊びすぎないように注意して、という先生の説明を聞きながら、もう涙がボロボロ出てしまって・・・」

 朝晩、3種類の投薬が始まった。嫌がらず薬を飲んでいたトトだが、投薬に使うスポイトがすぐなくなってしまう。すると、トトのトイレの後ろにスポイトがいくつも隠してあるのが見つかった。

 「薬がいやで隠したんでしょうね。普通の猫なら、飲ませる時にひっかいたり逃げたりするのに、トトはそんな爽やかな性格じゃなかった。かまってほしいときなども、部屋の隅に座って無言のアピール。何でうちのトトはこんなにジットリしているんだろうね、と夫と話しているうちに、ハッと気づきました。私たちに似たんだと」

 作家という職業柄か、考え込むタイプという角田さん。夫も同様とか。トトも飼い主顔負けの心理作戦を展開していたのだ。

 それでもトトは我慢して薬を飲み続けた。その効果か、夏の検査で病気が進行していないことが分かり、大喜び。「これからはもっと遊ばせてやれます。ずっとずっと長生きしてほしい」

 個性派トトが角田さんの作品に登場する日はいつだろう。

 (文・宮晶子、写真・戸田泰雅)

(注)●は虫へんに單