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能舞台が大好きなビワ。浅見慈一さんの膝でおすまし=東京都渋谷区で
能舞台が大好きなビワ。浅見慈一さんの膝でおすまし=東京都渋谷区で
プロフィール

あさみ・じいち 東京都出身。観世流準職分。能楽師浅見真高さんの長男として生まれ、父や故八世観世銕之丞(てつのじょう)さんらに師事。定期的にレクチャーや公演を行っている。15日には東京・渋谷の観世能楽堂で「翁」を演じる。

浅見慈一さんとビワ トイプードル(メス 推定6~7歳)

傷心の保護犬を
家族全員でケア

 東京都渋谷区にある代々木能舞台。都内でも数少ない屋敷内能舞台の遺構として知られ、中庭にある本舞台は1950(昭和25)年の建造で、2009(平成21)年には国の登録有形文化財となった。

 そんな由緒ある舞台で、観世流能楽師・浅見慈一さんの胸に抱かれているのが、トイプードルのビワ。

 ところが抱かれながらも、ぶるぶる震えが止まらない。必死で浅見さんを見つめている。そんなビワをいたわりながら「うちに来てから、まだ2カ月しか経過していないんです」と浅見さん。

 ビワは、保護犬を譲渡する活動をしているボランティア団体から、浅見さんが譲り受けたばかり。

 実はその数カ月前、かわいがっていたトイプードルが急死してしまった。13歳とはいえ、あまりに突然だったので、家族全員がペットロスに陥り、暗く沈んでしまった。

 「亡くなった犬も、5年ほど前に同じボランティア団体から譲り受けた保護犬でした。天真らんまんで、とても人懐こい性格でした。特に母に懐いていたものですから、こちらがびっくりするぐらい母が嘆き悲しんで・・・」

 愛犬の死を団体に報告したところ、「同じトイプードルで保護犬がいます」と紹介されたのがビワだった。せっかくのご縁と、譲り受けた。

 「ビワは保護されたときから、かなり皮膚や毛並みの状態が悪かったらしく、家にきたときも体重が2キロしかなくて、ガリガリに痩せていました」

 毛は薄く、ところどころはげていた。推定年齢6~7歳。「ワン」と声も出せないほどおびえていた。

 「あくまでも推測ですが、もしかしたら保護されるまでの生活でいじめられていたのかもしれません。すごく人見知りをしますし、人間が怖いみたいです。そんな姿は見ていてかわいそうです」

 ビワがやってきて、落ち込んでいた母親も笑顔を取り戻し、家の中がぱっと明るくなった。

 「自分では気が付いていませんが、妻にいわせれば、私もかなり癒やされているようです(笑)。公演が近づくと、どうしてもピリピリしてしまうようですが、確かにこの子と触れ合っていると、どこか気持ちが落ち着きますからね」

 浅見家の一員になってから、稽古場の隣の部屋でくつろぎながら、いつも謡を聞いているビワ。そんな恵まれた環境を得たのだから、これから素晴らしい時間が待っているに違いない。毛並みもふさふさによみがえり、元気に走り回る姿が見られるのも、もうすぐだ。

 (文・宮西ナオ子、写真・松崎浩一)