よねかわ・ふみこ 1926年生まれ。兵庫県出身。地歌・生田流箏曲家。叔母の初代米川文子を継ぎ、99年、2代目を襲名した。2008年、人間国宝。
じゃれる弟分に
余裕みせる兄貴
箏曲の人間国宝、米川文子さんの家を訪れると、広い玄関に、われ先にと現れたのはチワワのナル。まだ若く、元気いっぱいだ。
「そろそろ1歳になりますが、いつも大喜びでお客さまを出迎えます」
もう1匹の先輩犬「リキ」は、奥からゆっくりと歩いてきた。体はナルより一回り大きい。11歳という高齢のせいかおっとりしている。「リキのほうは昔からマイペースなんですよ」
米川さんは85歳になる現在も、全国で演奏活動を行っている。元気の秘訣(ひけつ)は、「毎日箏(こと)をひくこと、弟子たちに教えること、そして動物をかわいがることですね」と笑顔を見せる。
2匹のチワワの散歩や食事の世話のほか、外猫の面倒も見ているという。部屋には初代・米川文子さんと猫の写真も。動物好きは家の伝統のようだ。
「初代のときから、動物への供養と感謝を込めて、犬や猫を飼ってきました。犬はコリーやマルチーズなど、いろいろな種類がいました。高名な演奏家の方がいらしても、犬たちはおかまいなく座敷ではしゃいでいましたね」と笑う。
犬たちは代々、オスは「太郎」、メスは「花子」と名付けられるのが家の“伝統”だった。
実は、少し前にもチワワの太郎がいたが、昨年の2月に、突然死んでしまったという。
太郎は、リキの兄貴分だった。2匹とも近所から譲り受けた。太郎は社交的で、弟子の皆にかわいがられ、まさにアイドル的存在。リキのほうは小さい時から体が弱かったため、元気に育ってほしいと「力(りき)」と名付けられた。太郎と違っておとなしい性格だが、太郎を兄と慕い、いつも後をついて歩いていたという。
「太郎が死んだときは皆ショックでした。やがて、うちの跡継ぎ(米川文清さん)が、近所のペット店に太郎に似た犬がいるといって買ってきたのがナルです」
成田山(千葉県成田市の成田山新勝寺)から名付けたナルは、性格も太郎のように社交的。天真らんまんで、弟子たちにじゃれて、おやつをねだったり、おなかをなでてもらったり。いい跡継ぎ犬ができたようだ。
「リキも最初は小さいナルにじゃれつかれて困っていましたが、最近はさすがに観念して、自分が兄として、よく教えなければと思っているようです」
リキも最近の健康検査で「異常なし」、まだまだ元気。若いナルと一緒に、米川さんの家をもりたててくれるだろう。(文・宮晶子、写真・中川大)





