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赤いポロシャツがよく似合うこころと山本魁星さん=都内の散歩道で
赤いポロシャツがよく似合うこころと山本魁星さん=都内の散歩道で
プロフィール

やまもと・かいせい 三重県伊勢市出身。甲南女子大卒。2007年日本・フランス現代美術世界展ドローイング賞を受賞。テレビ番組の「時代劇アワー」のタイトルなどを手がける。

山本魁星さんとこころ チワワ(オス 4歳)

どこへでも同行
精神的な支えに

 東京・人形町の街中を闊歩(かっぽ)する書家の山本魁星(かいせい)さんと愛犬のこころ。山本さんがデザインしたポロシャツを着て、尻尾を立て優雅に歩く。

 「こころは、この近辺では、ちょっとした有名犬なんです。いつも一緒に買い物に行くから、お店の人たちも、かわいいね、なんて声をかけてくれて」

 こころは山本さんにとって、精神的に欠かせないベストパートナーだという。

 「書は究極の瞬間芸術です。作品を作るときは、部屋中が作品だらけになり、書くときは一瞬の気合を大切にします。そんな仕事の本質をこころはわかっているみたい。私が書くのをじっと見ています。とにかくおとなしい。家で吠(ほ)える声を聞いたことがありません」

 書き上がった作品は、乾かすために、家中に飾られる。そのような場合も、こころは決していたずらをしない。

 「作品は書き直しができませんから、もし作品が損なわれてしまうようならば、どんなにかわいくても同居は難しくなってしまいます」

 以前はネコを飼っていた。そのときは、作品の上をネコが歩いてしまったりして、同居を断念したことがある。それだけに、こころの聞き分けの良さに安堵(あんど)する。

 今年の2月にはスペインのバルセロナで個展を開いた。その前、山本さんは昨年10月に母親を亡くしている。三重県に実家のある山本さんは、三重県と東京の間を新幹線で往復する日々が続いた。バルセロナでの個展の作品を作らねばならないというプレッシャーに加え、大切な母親が病床に-。そんなつらい日々もこころは常に山本さんの傍らにいて励ましてくれた。

 「小さなバッグに入れれば、犬が入っているなんて誰も思いませんから、実家に戻るときも、買い物も、電車の中も、こころを連れて行きました。どこへ連れて行っても、絶対に声を出さないという確信がありましたから、万が一、吠えたらどうしよう?なんて心配はまったくありませんでしたね」

 母親が亡くなった後は、個展の準備に没頭した。100枚の書を仕上げ、バルセロナに飛んだ。

 「国内ならば、こころを連れて行きたかったのですが、海外では連れて行くことができず、仕方なく10日間も別れていたんです。もう、寂しくて、悲しくてね…。こころって、私が産んだ子のような気がするほど、私の一部になっています」

 そんな山本さんの「おのろけ」は続く。それをこころはおとなしく、耳を傾けて聞いていた。(文・宮西ナオ子、写真・石井裕之)