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自宅周辺を久しぶりに散歩する高橋ツネ子さんとコロ=宮城県石巻市で
自宅周辺を久しぶりに散歩する高橋ツネ子さんとコロ=宮城県石巻市で

高橋ツネ子さんとコロ 柴犬(メス 9歳)

吠えて避難訴え
大事な家族です

 宮城県石巻市の今は人が住んでいないはずの被災地で、茶色の柴犬を連れた女性が目についた。急ごしらえの道路の砂利が犬の足には痛そう。女性は高橋ツネ子さん、愛犬はコロ。大津波で九死に一生を得たという。「コロは命の恩人なんですよ」

 場所は同市の長面(ながつら)地区。北上川の河口に近い。目の前に長面浦が広がり、カキの加工場がある。多数の児童が犠牲になった大川小学校にも近い。

 写真の後方に写っている2階建て住宅の前に、高橋さんの自宅はあった。大津波で今は土台が残っているだけ。

 話を聞いている最中も、がれきを積んだトラックが何台も通り過ぎて行く。高橋さんは元会社員で、約20年前に自宅を建てた。子どもはすでに独立し、元会社員の夫とコロと暮らしていた。

 コロは間もなく10歳。高橋さんは避難所で72歳の誕生日を迎えた。

 3月11日、無数のシラサギが騒ぎ、「おかしいなあ」と思っていたら、午後2時46分激しい地震が来た。塀が崩れてきた。

 揺れが収まり、5、6分もすると、家の中にいたコロが庭へ飛び出し、ワンワンと激しく吠(ほ)えたて、何かを訴えた。コロはいつもはあまり吠えない。「そうか、逃げたほうがいいんだね」

 逃げようか逃げまいか迷っていたところを、コロが背中を押してくれた。着の身着のまま夫とコロと車に乗り、車で5分ほどの知人宅近くの高台へと脱出した。運命の分かれ道となった。

 津波は住宅を土台から引き剥がし、何もかも持っていった。この地区は大川小の学区だった。「正確な人数はわかりませんが、近所でも約20人の住民が犠牲になったようです」と顔を曇らせる。

 避難所生活が始まった。「助けてくれてありがとう。コロに何かごほうびをあげたかったんですが、車の中を探しても、わずかな犬用のおやつが見つかっただけでした」

 そのおやつも、3日目になくなった。そのため、おにぎりの残りなどをもらって生き延びた。体重も減った。

 コロは自宅以外ではおしっこをしない癖があり、避難生活は大変だった。困っていたら、運良く顔なじみの獣医師に出会った。「ご無事でしたか」と助けてくれた。

 最近、やっと仮設住宅への入居が決まった。

 「明日、仮設住宅に入居する予定なんです。自宅近くの墓を見に来たんです。墓は地震で被害を受けたので、直しました」という。

 コロに「ここが家だったんだよ。覚えている?」と話しかけても、分からないらしい。高橋さんは「そうね、もう懐かしい家のにおいもなくなってしまったもの」と悲しそうな顔でつぶやいた。

 愛犬との絆を強めた高橋さん。「大事な家族です」とコロを抱きしめた。

 (草間俊介)