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あいさつの仕方も飼い主譲りの「きく」(左)と「らん」。育子さんの帯には愛犬たちの姿が描かれている=都内で
あいさつの仕方も飼い主譲りの「きく」(左)と「らん」。育子さんの帯には愛犬たちの姿が描かれている=都内で
プロフィール

いくこ 熊本県出身。18歳で花柳界入り。以後、赤坂の芸者として第一線で活躍。歌舞伎座、国立劇場など多くの舞台にも出演。伝統の「赤坂をどり」も毎年披露している。

育子さんときく、らん チワワ(メス 11歳)=2匹とも

チントンシャン
芸や物腰も見事

 東京・赤坂で50年来、芸者を続ける「育子姐(ねえ)さん」の朝は、2匹の愛犬「きく」と「らん」に起こされることから始まる。

 「毎朝、うちの芸妓(げいぎ)たちが来るたび、玄関に迎えに行っては、来たよ、来たよ、と私に知らせに来るんですよ」

 育子さんの下で働く若手芸妓は9人ほどで、毎朝一緒に朝食をとるのが日課。育子さんは、テレビに出演したり海外でのイベントに参加したり、あるいは日本流もてなし方の講師を務めたりなど、幅広く活動している。どんなに夜が遅くとも、朝はきちんと起き、健康的な生活を送ることを心がけているのだ。

 もちろん、きくとらんも一緒に朝食なので、大喜びで迎えに行く。

 この2匹は10年前、芸妓たちが育子さんにプレゼントした犬なのだそうだ。

 「私の還暦祝いにもらったんです。犬と一緒にこれからも元気でいてくださいよ、と。でも実は、彼女たちも犬が欲しかったんです」

 2匹の名前はちょうど、菊五郎と団十郎の歌舞伎を見に行くことになっていたので、役者にちなんで名づけたという。

 「寂しい思いをさせないかと心配したんですよ。昼は踊りの稽古だし、夕方からは仕事ですから。そこで、私たちの生活に慣れさせるため、2匹が来た日から、普段通りに仕事に出掛けました。おかげで留守番は平気。でも、それ以外は甘やかしてしまいましたね」と育子さんは苦笑する。

 特にきくのほうは甘えっ子で、常に育子さんのひざの上を占領。らんを抱っこすると、焼きもちを焼いて、らんにほえかかる。「ケンカしないように、何でも2匹平等にと気を使いますよ」

 それでも、犬たちは芸妓さんたちに囲まれて育ったせいか、物腰も柔らかで女らしい。芸も習った。チントンシャンのリズムで、お手をしてみせる。

 「話しかけると、まっすぐ目を見て聞いている。人間よりずっときちんとしていますね」

 最近は年のせいか足腰が弱くなり、うっかりすると敷居にもつまずくとか。そこで、食事に気を使い、鶏肉、キャベツ、おから、犬用の豆腐、茶わん蒸し、肝油などをバラエティー豊かに与えている。

 「特に元気がないなと思ったら、牛肉や馬肉を湯がいて与えます。これがすごく効き目があります」

 育子さんはつい最近も、愛知県の豊田市能楽堂で舞台に立ち、元気なところを見せた。飼い主も愛犬も元気で活躍中だ。

 (文・宮晶子、写真・市川和宏)