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「美吉」の看板猫、茶ちゃんと主人の吉岡丈二さん=東京・赤坂の豊川稲荷境内で
「美吉」の看板猫、茶ちゃんと主人の吉岡丈二さん=東京・赤坂の豊川稲荷境内で
プロフィール

よしおか・じょうじ 1949年東京生まれ。東京・赤坂豊川稲荷境内でいなり寿司やそば・うどん、甘味などを味わえる茶屋「美吉」を営む。営業時間は午前8時~午後5時半。

吉岡丈二さんと茶ちゃん 猫(オス 9歳)

境内をわが物顔
常連さんに人気

 境内にキツネの石像が居並ぶ東京・赤坂の豊川稲荷。商売繁盛や開運招福を願って集まる参詣客のもう1つのお目当ては、境内にいつもいる1匹の猫、茶ちゃんだ。飼い主は境内で茶屋「美吉」を営む吉岡丈二さん。

 春の日差しが注ぐ駐車場の真ん中にのんびりとたたずむ茶ちゃん。その落ち着いた風情と涼やかな表情。常連らしい参詣客が茶ちゃんに「元気だった?」と声をかけ、携帯カメラのレンズが盛んに向けられる。

 「昔はやんちゃで駆け回っていましたが、今ではもう堂々としたもので、駐車場の真ん中やクルマのボンネットで寝ていたりする。エンジンをかけても、なかなかどかないんですよ」と吉岡さん。

 茶ちゃんは「境内猫」としては3代目になる。そもそも店は丈二さんの母、とし子さんが戦後、友人の母が営んでいた店を継いだもの。丈二さん自身、30年も猫と一緒にここで店を開いてきた。

 「初代と2代目は白(シロ)、3代目は茶トラだから茶ちゃん。単純でしょ」

 2代目がいなくなったあと、店の上階の文化会館で開かれている踊りの先生が茶ちゃんを手のひらに乗せて、「かわいいでしょ」とやってきた。そのまま居着いて以来9年、2年半前に亡くなったとし子さんともども豊川稲荷の名物になっていったという。

 寝床は店の軒下に置いた段ボール箱。寒いときは電子レンジで温める湯たんぽを入れ、愛用のタオルとともに寝る。通いの丈二さんが帰るときは門まで見送り、そそくさと寝床に戻るという。

 「道路が危ないことは分かっていて決して境内からは出ないんです」

 赤坂の豊川稲荷は、愛知県の豊川稲荷・豊川閣妙厳寺の直轄別院で江戸時代の名奉行、大岡越前守忠相が本尊を崇拝し、かつて住んでいた赤坂一ツ木の屋敷から1887(明治20)年に当地へ移した由緒ある寺院。再開発が進む赤坂にあって、赤坂御所に隣接したこの一角だけ緑濃い空間を静寂が包む。ひとときの安らぎを求め、茶屋や境内には食事や休憩に訪れるサラリーマンも多い。そんな人たちの癒やしの存在にもなっているようだ。店内には茶ちゃんのファンが撮影した写真や絵がたくさん飾られている。

 「御所に居着いているらしい猫もやってくるんですが、茶ちゃんは大人で、そんな仲間に自分の餌を譲るんです。いつもかわいがられているから余裕があるんでしょう。みんなに愛されて、普通の人が住めない一等地に暮らしているんですからね」

 赤坂の移り変わりを共に過ごしてきた茶ちゃんがいつまでも元気でいることを、丈二さんは願っている。(文・民井雅弘、写真・稲岡悟)