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「家の中ではほえますが、外ではわりとおとなしい」という愛犬六三四と中川さん夫妻=都内で
「家の中ではほえますが、外ではわりとおとなしい」という愛犬六三四と中川さん夫妻=都内で
プロフィール

なかがわ・よしお 1946年滋賀県生まれ。父・藤舎(とうしゃ)秀蓬より笛の手ほどきを受け、東京芸大で人間国宝賓山左衛門に師事。2006年、伝統文化ポーラ賞優秀賞受賞。

中川善雄さんと六三四 ケアーンテリア(オス 3歳)

いい子から急変
憎めぬ偏屈もの

 質問。この犬の名前「むさし」に当てた「六三四(むさし)」の意味は何でしょう?

 「息子が東京スカイツリーの高さにちなんでつけました。同じムサシでも、宮本武蔵じゃ恐れ多いから」と飼い主の中川善雄さんは説明する。

 横笛演奏家として邦楽の世界で活躍する中川さん。その家にケアーンテリアの六三四が来たのは3年前。それまで飼っていたビーグル犬が病気で死に、百か日が過ぎたころ、中川さんの娘がペット店で見つけてきた。

 「実は私もケアーンテリアには前から興味があったんです。飼いにくい性格だとは知っていたんですが…」

 積み石(ケアーン)の穴から小動物を追い出すテリア犬。愛嬌(あいきょう)のある顔つきとは裏腹に、めっぽう気が強いといわれている。

 だが、六三四は家に来たその日から、サークルのトイレできちんと用を足し、ワンとも鳴かず、これはいい子だと家族一同大感激。去勢手術も早めにすませた。

 ところが、2歳になったある日、家の中で初めて片足をあげてオシッコした。「この時から、オレはオトコだ! テリアだったんだ、と目覚めちゃったらしいんです」

 以来、自分のトイレに敷くペットシーツを見ると、カタキに出会ったように怒るので、用を足すたび、後から奥さんがふき掃除。おしっこをふきとった紙を人間のトイレに流すと、今度は「ぼう然として、1時間くらい水の中をのぞきこんでいるんです」と、不可解な行動。便座も気に入らないのかガチガチかみ、無数の歯形がついている。

 六三四のカタキはそればかりではない。郵便の赤バイク、宅配便の台車などの音が聞こえるたびに「ワンワンワン!」。さらに、飼い主の中川さんが夜中に洗面所に行く音にさえ「ワンワンワン!!」。

 公園のドッグランに連れていくと、テリアの本領発揮! 自分と同程度のスピードで走るメスの小型犬を見つけたら、執拗(しつよう)な追いかけっこを仕掛けていく。

 「強情で、偏屈なやつなんですねえ。まぁ、ひょっとすると飼い主に似たのかもしれませんが。でも、ケアーンテリアは、人にこびず、自分のポリシーを持って生きている。そこが魅力じゃないでしょうか」

 家でも散歩でも、奥さんに面倒をかけっぱなしの六三四。だが、夜になって、ソファの前でおなかを出して寝ころんでいる愛らしい姿に家族はメロメロだ。

 「この姿を見たら、ふだんの苦労もプラマイゼロかな」

 ちなみに、家族が練習する笛や箏の音は「寛容に受け入れ」、静かに聞いているという。(文・宮晶子、写真・嶋邦夫)