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「社長」と呼ばれるヒジキと寺林さん=東京都国立市で
「社長」と呼ばれるヒジキと寺林さん=東京都国立市で
プロフィール

 てらばやし・しょうじ 1965年北海道生まれ。都立武蔵野技術専門学校卒。98年テラバヤシ・セッケイ・ジムショを開設。「東京電力快適住宅コンテスト」入賞のほか受賞多数。

寺林省二さんとヒジキ 猫(オス10歳)

女子高生に人気
人の輪が広がる

 東京・国立の駅前から続く桜並木沿いのレトロな家に「街のアイドル猫」が住む?と聞き、訪ねてみた。猫の名は、白い猫なのにヒジキ。飼い主は建築家の寺林省二さん。

 「ヒジキの家」として有名なこの家は築50年を超えた木造平屋。天然素材を生かした設計を心がけているという寺林さんの考えが色濃く出ている。もともと15年前、独身時代に事務所として借りたものを少しずつ手直しし、子どもが生まれたのを機に2年前から家族で住んでいる。

 「家の中にいても、いつも外とつながっているような家にしたかった」という寺林さんの考えに沿って、縁側につづく板張りの部屋は6畳ほどで、食事の際はダイニングに、夜は仕事部屋に、客が来れば応接室にもなる。

 自然体で開放的な暮らしぶりは、昭和の時代をほうふつとさせ、外からも気軽に声をかけやすい雰囲気だ。

 見ていると、学校帰りの小学生や散歩途中のお年寄りらが、「ヒジキ、今日も元気だね」「ヒジキ、ただいまー」などと声をかけていく。

 特に、女子高生には大人気で、寺林さんは「なぜ、そんなにもてるのか。ずるい」と笑う。

 10年前、裏の家に生まれた2匹の子猫のうち、あえて人気のないほうをもらい、海藻を思わせる背中の黒い模様が印象的だったので、ヒジキと名づけた。成長するにつれ、不細工な顔の表情が、かえってかわいいと、だんだんと評判になっていった。

 ヒジキの顔を見に、ふらりと立ち寄る取引先も多いという。仕事関係者の間では、ヒジキを「社長」と呼ぶ。

 「社長、また散歩なの?」。たったそれだけの会話で心がなごむ。

 近所のご隠居さんという雰囲気の男性も顔を出した。「えっ、ヒジキの取材? 彼にはなんともいえない愛嬌(あいきょう)があるでしょう」。ヒジキをさかなの井戸端会議はしばらく続いた。ここではヒジキをきっかけに会話が生まれ、人の輪が広がっている。

 さて、建築家として寺林さんに「猫にとっての快適な住まい3カ条」をアドバイスしてもらった。

 その一、猫が退屈にならないような工夫がされていること。

 その二、キャットウオーク(高いところを歩く)ができること。

 その三、床や壁のどこかに、爪(つめ)をとぎやすい素材があること。

 いいなあ、ヒジキの家って。「猫や子どもが安心して暮らせる場所って、いいですよね」。結局、猫にとっての住みよい空間は、人間にとっても快適なのだろう。

 (文・高比良美穂、写真・稲岡悟)