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「フワーと鳴いて、だっこをせがむんですよ」と吉本さん=東京都文京区の自宅で
「フワーと鳴いて、だっこをせがむんですよ」と吉本さん=東京都文京区の自宅で
プロフィール

 よしもと・たかあき 1924年生まれ。東京都出身。『共同幻想論』(1968)「マス・イメージ論」(1984)など多くの著書で昭和を論じ、戦後最大の思想家と呼ばれる。

黄吉本隆明さんとフランシス子 猫(メス15歳)

ゆったりと時間
濃密な相思相愛

 東京都文京区の大きな寺の隣に、知の巨人・吉本隆明さんの家はある。いまどき珍しく、玄関の扉は半分開けたまま。猫の出入りのためなのだろう。2階の窓辺から、三毛猫がこちらを見下ろしている。

 「これまでつきあった猫は数十匹になるでしょうか。私が小さいころは、よく猫が鼻水をなめてくれたものです」と笑う吉本さん。老思想家は、長いこと猫と親しく暮らしてきたのだ。

 この寺町には昔から猫が多かった。しかし、娘で漫画家のハルノ宵子さんがノラたちの不妊手術をして、だいぶ少なくなったという。

 いま吉本家の家猫は4匹。みな近所で保護したもとノラ猫だ。最初に客を出迎えたのは、白猫の「シロミ」。

 「子猫のときに事故で脊椎(せきつい)を損傷し、今も自力で排泄(はいせつ)することはできないので、人の手を借りています」。だれにでも人なつこいのは、そのためかもしれない。

 次に登場したのは、小柄なトラ猫「ヒメ」。こちらは足が悪いが、シロミと元気に追いかけっこを始めた。その様子をやさしく眺める吉本さん。

 「実はシロミたちは私にあまりなつかないんです。私が別の猫ばかりかわいがっているから」

 吉本さんを独占しているのは、15歳になるフランシス子だ。変わった名は、娘で作家のよしもとばななさんがつけたという。

 「この猫は最初、娘が引き取っていったんですが、娘の飼い犬と折り合いが悪く、こちらに戻ってきました」

 以後、吉本さんの仕事部屋を居場所とするようになり、外に出るのは食事やトイレのときだけ。吉本さんだけに心を許し、何年もふたりの時間を過ごしてきた。ハルノさんによると「相思相愛」の仲だ。

 「猫というのは遺伝的に穏やかなタイプと、原生的なタイプにいくつか分かれますね。この猫は、イリオモテヤマネコのように野性的です。猫は、若いころはまさにハンターでした。今でもなでていると時々かみついてくる。でもかむのは家族の中でも私だけなので、猫なりの親しみの表現かもしれません」

 フランシス子は猫白血病のキャリアーで、インターフェロンの注射を続けている。だが吉本さんのひざの上にすっぽりおさまったフランシス子は子猫のような目をしている。

 吉本さんが仕事をする間、いつも傍らの寝椅子(ねいす)で寝ているフランシス子。時折「フワー」と鳴き、だっこをせがむ。この穏やかな時間がいま、ふたりにとって最上の安らぎのようだ。

(文・宮晶子、写真・中西祥子)