ペット大好き!情報
橘芳慧さんと五郎
「五郎は、いつも私の右肩の上で寝ています」という橘さん=東京都中央区で
プロフィール

たちばな・よしえ 1941年東京生まれ。日本舞踊橘流3代目家元。古典と創作両面に取り組み、昨年、紫綬褒章受章。6月は創作舞踊劇場第25回記念公演を都内で上演。

橘芳慧さんと五郎。アメリカンショートヘア(オス11歳)

夜中の稽古場で
踊りの時間共有

 「五郎、五郎-」。橘芳慧さんに呼ばれ、銀色の猫が2階の廊下に小さな顔を見せた。階段を中ほどまで下りてきたかと思うと、ぱっと身をひるがえして姿を消し、また顔を出す。

 「知らない人が来るとこんなふうに用心しますが、ふだんは私にくっついて離れないんですよ。好奇心旺盛で、とても甘えん坊です」

 名前はあだ討ち曽我兄弟の曽我五郎からと和風だが、アメリカンショートヘア独特の背中の模様はとても洋風で、まさに創作舞踊に力を入れる橘さん好みらしい。

 「あなた、派手な着物着てるわねえ、といってるんです。うらやましいくらい見事な柄ですよね。寂しがり屋のくせに気の強い一面があって、何かの拍子に突然ひっかいてきたりするんです。踊る時は、いつも五郎の引っかき傷が腕にあるので恥ずかしいんですよ」

 舞踊家の家に生まれ、幼いころから邦楽の音色と猫に囲まれてきたという橘さん。洋風の猫と暮らすのは、五郎が初めてではない。五郎の前は、猫好きだった脚本家の故向田邦子さんから譲られたコラットという種類の猫が2匹いた。その様子は橘さんのエッセー「八丁堀猫ものがたり」に詳しい。

 「コラットはタイの王室が大切にしていた猫で、グレーの毛にハート形の顔。とても神秘的な姿でした。1匹のほうは体が弱かったんですが、おなかをこわした時は、小アジを丸ごと包丁の刃で細かくたたいて食べさせるようにと向田さんに教わりました。以来、体調を崩した時は必ず母が小アジを食べさせ、元気にしてくれたのです」

 そのおかげか、このコラットは24歳まで長生きした。当時一緒にいた3匹もみな17歳を超えるまで生きたという。

 「猫が相次いでいなくなり、寂しくなったので、主人と一緒にペットショップに行きました。そこで初めて、お金を出して買った猫が五郎です。子猫たちの中で、一番元気に跳びはねていました」

 五郎もすでに11歳になるが、身のこなしはいまだ子猫のように軽やかで、舞踊家の飼い主をうならせる。

 「ふだん、稽古(けいこ)場には五郎を入れないんです。でも夜中に私が一人で稽古していて、振り付けにつまった時、必ず五郎がふらりとやって来ます。私はかまわず踊りを続け、五郎はすり寄ったり、寝っころがったりして、いつの間にかいなくなります。五郎と踊りの時間を共有するような、不思議なひと時ですね」

 (文・宮晶子、写真・高嶋ちぐさ)