ペット大好き!情報
米良美一さんと「さんぼ」
二足歩行が得意なさんぼ。「教えたわけではないのに」と笑う米良さん=東京都渋谷区で
プロフィール

めら・よしかず 宮崎県生まれ。幼児期からの難病を克服、洗足学園音大を卒業し、カウンターテナーとして活躍。『もののけ姫』の主題歌で広く人気を得る。昨年は自叙伝を出版。3月14日、東京・六本木の「STB139」でピアニスト塩入俊哉さんとライブ。

米良美一さんと「さんぼ」 トイプードル(メス 1歳11カ月)

愛と寛容さ学び
繊細な感性磨く

 米良さんが愛犬「さんぼ」を迎えたのは、35歳の誕生日の2日後だった。

 「それまでは自分のことで精いっぱいだったのが、誰かに愛情をそそぎたいという気持ちが生まれてきた。そういう年齢になったんでしょうね」

 ペットショップでさんぼに出会い、一目ぼれ。親しい友人に相談すると、「すぐ飼ったほうがいいよ!」。友人も、米良さんが必要とするものが何かを理解していたようだ。

 「愛をそそぐ相手は、家族や子どもであればいいんだろうけど、まずは犬でもいいじゃないかと。犬と暮らすことで愛を学べれば、やがて家族にもいかされるでしょう。だから僕の場合、犬はいやしというより、愛を学ぶ師匠なんですね」

 さんぼはプードル犬だが、雑種のような雰囲気を持つところにひかれたとか。米良さんの九州の実家にも雑種犬がいた。ペットというより、お父さんの猟のパートナーとして信頼しあう関係だったという。

 「都会で暮らしていると、自然の摂理というものを忘れがちになります。それをとり戻すためにも、さんぼが必要でした。言葉に頼る人間と違って、犬はテレパシーとか気のようなものを送ってくる。それをキャッチし、本来の人間と犬として向き合いたいですね。さんぼは小型犬ですが狩猟犬の本能を遊びの中で発揮するんですよ。おもちゃのくわえ方も、獲物を捕らえたように振ったりして…」

 最初の4カ月は大変だった。吐いたり、そそうしたり、散らかしたり。「モデルルームのように整然としていた部屋」が、子どものいる家のように散らかった。

 「さんぼが何かやらかすたび、ああ神様に試されている!と思いました。人間、ゆとりがなくなると、弱い対象にはけ口を求めてしまいがちですからね。自分がどれだけ寛容になれるか、試されていると」

 さんぼの不妊手術をした夜、麻酔と痛みのせいか、小さな体はぐったりして動かなかった。その姿に、米良さんは涙が止まらなかった。

 「僕が小さいころ、しょっちゅう病気をしていた。それを見て、僕の親はどんなに切なくつらかったか。親の気持ちが初めて分かったんですね」

 犬らしくのびのび育ったさんぼは、ドッグランに行くと大型犬と走り回る。だが人が争うのは大嫌い。テレビのバラエティー番組でもケンカや暴力が始まると、怒ってほえる。そしてクラシック音楽が大好きだ。

 「今ではすごく通じ合える相手です。トイレに行く時間も同じだし、僕の体調が悪いとさんぼの体にも影響してしまう。まさに鏡のような存在です」

 米良さんの豊かで繊細な感性が、愛犬によってさらに磨かれそうだ。(文・宮晶子、写真・市川和宏)