小倉京子の「子育てにも“コツ”ってあるんです」

第42回 『1歳7か月:ピョンピョン、いやん、いたい』

 このコーナーへのご訪問、ありがとうございます。

 今回は言葉がまだ十分発達していない乳幼児を取り上げます。

 乳幼児でまだうまく言葉を話せないと、親のほうが先にあきらめてしまって、説明しているよりも親の思う通りに無理やりやってしまった方が早い気がしてしまいます。

 子どもの気持ちを聞こうにも、まだ表現できる言葉が少ないので、訊ねても無駄だろうと、“子どもはきっとこれがいい”という親の推測で動いたり。

 また、子どもがあまりに自由奔放であることに疲れてしまったお母さんは、ただただ親のいうことを聞かせようと必死になり、子どもとの衝突が多くなりがち。

 今日は1歳7か月のお子さんの事例(親業訓練協会発行の季刊誌『ヒューマンリレーションニュース(2008年春号)』)をあげて、乳幼児は乳幼児なりに一生懸命伝えようとし、一生懸命に親の言葉を理解しようとしている姿をお伝えします。緑色の文字の会話が、効果的な会話となります。

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 たいが(息子)にはいつもは布オムツかトレーニングパンツを着用させているが、乾いたのが手近になくて、紙オムツをはかせようとした。

親  たいが、オムツはくよ。おいで!

子  いやん、いやん(裸のまま走り回って逃げる)

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親  おしっこが出ちゃったら、床掃除しなきゃならないから、困るんだけど・・・

子  いやん、いやん

親  ほら、このオムツ、うさぎさんがついてるんだよ。たいが、おいで!(つかまえてはかせようとする)

子  ピョンピョン、いやん。いたい

親  紙オムツは痛いから、はきたくないんだね

子  ワンちゃんのパンツ!(トレーニングパンツのこと)

親  そっか、たいがはワンちゃんのパンツがいいんだね。じゃあ、物干しからワンちゃんのパンツ取ってくるね

子  うん、まってる~

親  ワンちゃんのパンツ、はこうね

子  チンチンないない(納得した様子で、足を片方ずつ出してはく)

(親の感想)
 「紙オムツは痛いからはきたくない!」って初めて知った日だったので、すごい印象的で新鮮な気持ちになりました。子どもながらに行動には理由があるんだなぁ・・・としみじみ納得しました。まだまだ話せる言葉が少ないと感じていましたが、こうして会話を書き出してみると、彼の話せる言葉の中で必死で主張していることに、改めて気づきました。

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 こういったケースで、多くの場合は、子どもが嫌がろうがなんだろうが、強引にはかせてしまうことが多いのではないでしょうか。

 子どもが嫌がっていても、それ自体に親が意識を向けずに、親が紙オムツをはかせ たいのだから子どもはそれをはく以外の選択肢がないわけです。

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 でも、子どもにも「心」があります。乳幼児であっても「嫌だ」と思うからにはやはりそれなりの理由があったりするのです。

 それに対して親が意識を向けてみるだけで、子どもがつたないなりに一生懸命伝えている内容が、親にも伝わってきたりします。

 そのときに親が子どもの気持ちに寄り添ってあげることで、子どもも自分の気持ちを伝えようと試行錯誤するわけです。

 ただ嫌がっているだけだと扱うのと、嫌がっていることを受けとめ、嫌がっている理由を理解しようとするのでは、親も子育てにおける気持ちが変わります。前者はイライラしてしまいますが、後者は子どもを理解できた喜びが味わえたり、新鮮な驚きだったり。

 子どもにとっても、親に自分が言いたいことがわかってもらえてうれしいでしょうし、毎日のほんの些細なことから、親に対しての安心感を増やしていくことになるのでしょう。

 乳幼児をお持ちのお母さん、どうせ言葉がわからない、とあきらめないでくださいね。理解しようとしてみると、子どものことがよりわかり、小さな言動の中に確かな成長を見届けられたり、子どもなりの素敵な感覚や純粋な感情に驚くこともしばしば。そんな体験を親がすることで、愛情もより湧いてくるのではないでしょうか。

 親が乳幼児の行動に対してイライラしてしまう場合、大人の視点から大人の都合で判断していることから起こってくるイライラであることが少なくないです。

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 たとえば、乳児食を手間暇かけて作ったのに、お皿ごとポーイと投げておとしてしまったとします。

子どもからすると、手を動かしたらうっかりお皿に当たってそうなってしまったのかもしれないですし、食事を見て食べたくないと思ったからそうしたのかもしれません。

 それに対して、「なんでそんなことするのっ! 食べ物をそんなことするもんじゃありませんっ!」と子どもを叱りつけた親の感情を探ってみると、たとえば“食べ物を投げるなんて、いけないことだ”という気持ちかもしれないですし、“一生懸命子どものためにと思って作ったのに悲しい”という気持ちかもしれない。

 親の心の中と子どもの心の中は随分違いますよね。

 これをお互いに表に出していかないと、親は子どもを誤解したままになってしまうかもしれないですし、子どもも親の気持ちはわからないまま。ただ怒られて嫌だった、というしこりだけが心に残ってしまいます。

 だから、子どもはどんな気持ちでいるのか? それを理解しようとすることが大切になってきます。

 言葉数が少ないなりに、いったい何を言おうとしているのか? 親が子どもの心に耳を傾けるとちゃーんと聞こえます。

 そして、親の思いも伝えて下さいね。どうせ言ってもわからない、と思わないでください。子どもは言葉以外の、親の表情や声の調子などからも、親の気持ちを汲み取っています。

「お母さんが一生懸命○○ちゃんのために作ったごはん、ポイされて悲しいな」 こんなふうに、叱る以外の方法で、親の気持ちを伝えられたら、子どもの心の栄養となって、ひとを思いやる心をもった感情豊かなひとへと成長していくことでしょう。

今回ご紹介した事例の中の緑文字の会話は、 親の気持ちを伝え、子どもの気持ちに耳を傾ける会話 として、効果的な表現をしている会話です。その視点から、もう一度、事例を読んでみてくださいね。

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最後に顔出しを・・・(*^_^*)
これまで小倉京子の「子育てにも”コツ”ってあるんです」のコラムを読んでくださってありがとうございました。2年近くこのコラムを担当させていただきましたが、今回を最後に終わらせていただくことになりました。みなさま、本当にありがとうございました。これからも、お子さんと心が通い合う、愛のある幸せな親子であられることを心よりお祈りしております。

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小倉京子(おぐらきょうこ) ピースフルコミュニケーション代表・心理カウンセラー。自身の育児経験(3児の母)を生かしつつ、臨床心理学者トマス・ゴードン博士の唱えるコミュニケーション・スキルをベースに、あたたかい親子関係をつくっていくポイントをわかりやすくお伝えしていきます。 ブログ:http://ameblo.jp/hotto-mama/ ご感想・ご質問:peaceful.communication.family★gmail.comまで。(★を@に変えて送信してください) http://ameblo.jp/hotto-mama/

(2017年07月28日)