澤田貴美子のつながる“いのち”

第54回 『母乳育児支援を学ぶ』

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 6月も後半となりました。 先週末、神戸で勉強会に参加してきました。 母乳育児支援学習会。

 日頃、私は、産前産後の女性の支援のため、 様々な教室や講座を担当させていただいています。 参加者の方々とお話していると、 産後の女性の悩みの中で、授乳について悩まれている方が とても多いと感じます。

 そんな中、授乳についてのお悩みのサポートの際、 母乳育児支援にご尽力されている助産院や、 母乳外来のあるクリニックの存在をお伝えして ご自身に相談先を選択していただいています。

 そもそも授乳って どうしてこんなに悩みが多いものなのでしょうか?

 実際、私も、授乳で深く深く悩んだひとりです。 もうはるか四半世紀前の話なので、 今ではすっかり笑って話せる話ですが・・・ それはそれはノイローゼになってしまうんじゃないか、 というくらい、本気で悩んだものです。

 今になっていろいろと分析して考えてみると・・・ 私の場合は、25年前に深く悩んだ理由は、 「知識不足」だったからかな、と感じます。

 出産したら、母乳はぴゅーっと出ると思ってました。 出産して数日後に、おっぱいが岩みたいにカチカチになるなんて・・・ そしてそれを涙が出る痛みを感じる位、絞られるなんて想定外。 なかなか分泌量が増えない中、とにかくひたすら吸わせて、 なるべくミルクを足さずにせっせと頑張った1ヶ月。 (その頃は2週間健診は実施されていませんでした)

 母乳が足りているのかとにかくとても心配なまま、受診した1ヶ月健診。 4,110gで生まれた長男は、健診時の計測で4,610gに。 1ヶ月で500gしか体重が増えていませんでした。

 「赤ちゃんにとって、この時期の体重増加がどれほど大切か、 あなた、わかってなかったんですか!! こんなんじゃ、帰せませんよ。 こちらでミルクをあげて、5,000gを超えるまでは、帰せませんから!」 小児科の先生に強くお説教されて、号泣。

 そして、わが子は、そのまま即、入院。 1週間、入院したのは、NICU。

 NICUのガラス越し、小さな小さな赤ちゃんの隣に並ぶ、 大きな大きなわが子。 面会に来ていた他のママの 「え、あんな大きい子、なんでここにいるんだろ?」 と話している声。

 今の私なら、 「ねー!こんなに大きいのに、ここに入れられちゃったんですよー、 ははは~~!」なんて、きっと言えちゃうんでしょうけど、 その時は、とにかく自分を責めて責めて・・・。

 ショックと後悔と・・・etc 気持ちはどんどん落ち込み、喪失感。 わが子が横にいないさみしさを感じながら、 でも、ゆっくり寝れることに安堵している自分もいたりして、 その矛盾している自分に、何とも言えない複雑な思いを抱き過ごした1週間。

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 長い長い1週間が過ぎて、戻ってきたわが子。 愛おしいけど、でも・・・ 完全に自信喪失していた私は、 とにかく分泌量と、息子の体重増加が気になって気になって・・・。

 あんなにも密着した幸せな授乳時間のはずなのに、 そんな風に感じることが出来ませんでした。

 いろんなことを学んだ今だから、すごくすごく実感するのですが、 苦痛に感じながらの授乳では、 愛情ホルモン「オキシトシン」も分泌されるはずもなく・・・.。 そんな中、たまたま調べてわけもわからずすがりついた、 母乳マッサージ。 そこでまた、追い打ちをかけるように、 「あなたの乳は、やっかいね~」と助産師さんからの言葉。 オキシトシンどころではありません・・・ 心がこわれていく感覚でした。

 このあたりは、思い出すだけでも涙が出そうです。 (原稿を書きながら、あの頃のことが蘇ってきて、柄に無くちょっと泣けてしまいました)

 それでも、もう少しがんばってみよう!と必死に通いました。 出来るだけ間隔を空けないで来た方がいい、と言われて、 お金もかなり使いました。

 でも・・・ 結局なかなか思うように分泌量は上がりませんでした。 私は、限界を感じました。 「○万円も使ってがんばったんだから、もう自分を解放してあげよう」 「ミルクで育てたっていいじゃない。母親失格なわけじゃない」 そう思った途端に、急に吹っ切れて、 考えすぎることをやめました。

 その時、すでに生後3ヶ月。 母乳は、吸わせたいだけ吸わせていましたが、体重増加でまた指導を受けるのがこわくて、 足りないようならミルクを足そう、と母乳とミルクの混合授乳を。 結局は、母乳分泌量はますます低下し、息子は母乳をいやがるようになり、 完全にミルクonlyになりました。

 わが子と目と目を合わせ、わが子とふれ合える喜びを感じ、 幸せを感じながら授乳したかったな・・・。 なんであんなに自分を追い込んでしまったんだろう。 母乳マッサージだって、この方は合わないかも?と思った時点で、 他の方の所へ行ってみればよかった。 ちなみに、母乳マッサージしてもらえる方を探している時、 保健センターに電話しても、 「うちではそういう情報は伝えられません。 ご自分で電話帳で調べてください」と。 (電話帳。まさにアナログ時代を反映しています)

 もっといろいろな情報が欲しかったな、と思います。 もっと正しい知識を知っておくべきだったな、と思います。

 それと反対に、情報社会の現代では、 情報過多で、かえって悩んでいる方が多いのかもしれないな、と感じます。

 授乳についての悩みは、本当にひとそれぞれ。 でも、悩んでいる産後女性はとても多いです。

 授乳って、欠かせないものだから、 避けては通れないことだから、 大なり小なり、いろいろと悩みがわいてくるのですよね。

 情報過多な現代だからこそ、 正しい情報を知った上で、選択することの大切さを感じます。 週末に参加した母乳育児支援勉強会では、 科学的根拠にもとづく、現代の母乳育児に関する様々な講義がありました。

 産婦人科医、小児科医、精神科医などの先生方、 たくさんの助産師さん、育児支援者の方などが参加されていました。 授乳について悩んでいる産後女性が、 正しい知識を伝えてくれる専門家に出会えること、 正しい知識を得られる機会が増えること、 それを願ってやみません。

 出来ればインターネットからの文字での一方的な情報ではなく、 ご自分の耳で言葉の数々をきく機会があると、なお良いかと思います。

 微力ですが私も、 産前産後女性の支援に関わる者として、 科学的根拠にもとづく、正しい情報をお伝えしていくことに尽力していきたいです。

 私自身、 母乳について学べば学ぶほど(特に母乳授乳のメリット) 自分自身の授乳について、もっと正しい知識を得ていたら・・・という 後悔がないわけではありませんが、 それでも、その時点で自分に出来る精一杯はやったのだから、 これはこれでよかったんだ、と思っています。

 授乳についての悩みを抱える産後女性のみなさんが、 正しい情報を知った上で、何を選択するかは、ご本人自身。 ご自身で選択したことに自信を持って、 ご自分らしい子育てをしていっていただけたら、と願っています。

 次回の『澤田貴美子のつながるいのち』をお楽しみに。

澤田貴美子(さわだきみこ) フリーの産前産後フィットネスインストラクターとして、各地の産婦人科クリニックにて、妊娠中や産後、メノポーズ(更年期)の女性への運動指導・乳幼児と母親への育児支援などに従事。また、公益社団法人・誕生学協会認定“誕生学アドバイザー”として、幼児から大学生など幅広い年齢を対象に、いのちの授業「誕生学®」を届けている。

(2017年06月22日)