澤田貴美子のつながる“いのち”

第42回 『お産を振り返る~バースレビュー~』

 12月らしい寒さに、本格的な冬の訪れを感じたと思いきや・・・急にぽかぽか陽気がやってきたり、季節も忙しい年末ですね。

 2016年最後のコラムは、「バースレビュー」について。

 みなさんは、「バースレビュー」って、ご存知ですか?

 「バースレビュー」とは、ひとことで言えば、お産を振り返ること。

 お産はひとそれぞれ。
どのお産にも優劣はありませんよね。
でも実際には、お産のことでいろいろな思いを抱え、身体にだけでなく、心にダメージを受けている女性は少なくありません。

 18年間、産前産後の運動指導を通して、たくさんの女性とお話をさせていただいてきましたが、このダメージが育児にも大きく関わってくることを感じてきました。

 例えば・・・
他の方からすると、うらやましいと思われる位のスピード出産を経験された女性。 出産後にお話する機会があり、その時こう話されていました。

 「初めての出産で、こんなにあっという間にうまれたんだから、楽だったのよ」
入院中にスタッフからこう声をかけられたこと。
そして、お友達からの「安産だったから、いいよね」の言葉にとても傷付いた、と いうこと。

 「他のお母さんたちに比べて、自分は頑張ってなかったってことのように思える。だから自分は、他のお母さんに比べて、子どもをちゃんと愛せていないのかな、と思ってしまう・・・」と。

 そして、
「そんなことぐらいで、そんな風に考えること自体が、おかしい」
実母からかけられたこの言葉に、ますます自信を無くしてしまった、と。

 赤ちゃんが無事に元気にうまれてきてくれて、お母さんも順調に回復して・・・なのになのに、お母さんは、とてもとても苦しそうに見えました。

 お産の振り返りをすることで、ご自分の中にあるモヤモヤしたものを、吐き出す機会を持ってほしい・・・。 「出産」という大仕事を立派にやり遂げたご自身を認め、自信を待ってほしい・・・。

 だって、本当に頑張ったんだもの。
そして毎日毎日、こんなに頑張ってるんだもの。

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産後教室ではベビーマッサージも♪

 そんな想いがあって、この女性を、産後教室にお誘いしました。

 私が開催している産後教室のプログラムのひとつ、「バースレビュー」は、ご自身のお産を振り返り、言葉にしていただく時間です。
これが嬉しかった、とか、
これが辛かった、とか、
お産の時に感じた気持ちそのままを言葉にしていただく時間。

 本来、この「バースレビュー」は、
出産後48時間以内に、お産に関わった医療者とお産の振り返りの時間を持つと良い、とされていますが、実際には、これが実施されている施設もあれば、全く振り返りの機会がない施設もあります。

 なので、少しでもそんな機会が作れたら、と、産後教室のプログラムの中で、実施をしています。

 ある日の産後教室で、この女性がたくさんたくさんお話してくださいました。
自分自身の言葉で、心の中にあるモヤモヤを吐き出してくださいました。
この日ご参加くださった他のみなさんも、それぞれがそれぞれのお産の振り返りを、言葉にして伝えてくださいました。

 それぞれが、お互いのお産の話をじっくりと話し、聴き、
そして、その話を受けて、また感じた気持ちを言葉にして・・・。

 産後教室での「バースレビュー」は、とても欠かせない時間だと感じています。

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ママのボディワークも♪

 みんなみんな、頑張ったよね。あなたも、私も。
そして、今も、毎日毎日頑張ってるよね。あなたも、私も。

 育児って、やはり、支え合うものだと感じます。 だからこそ、原点となるお産の日を振り返ることは、大きな意味があると思うのです。

 ただし・・・言葉にすることで思い出したくないことまで記憶が蘇り、かえって辛いと感じる場合もありますので、ケースバイケースだとは思いますし、話したくないことは、無理やり言葉にする必要はないと思います。

 それでも「バースレビュー」で、お産を振り返り、
いろいろな気持ちを言葉にすることで、ご自身の感情が整理されていき、
「言葉にすることで、心が軽くなった」と話してくださる方がとても多いです。

 嬉しかったことは、さらに嬉しく感じ、辛かったことは、言葉にして吐き出すことで、少し心が軽くなり、吐き出す度に、前向きな気持ちに変わっていくこともあります。
だからこそ、この「お産の振り返り~バースレビュー~」は、とても大切な時間なのではないでしょうか。

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そしてお産の振り返りも、プログラムのひとつ

 出産施設でのお産の振り返り、開業助産師さんが開催しているお産の振り返りの会、そして、出産を経験した女性グループによるお産の振り返りの会や、私も開催している産後教室などでのお産の振り返り、様々なカタチで、「バースレビュー」が行われています。

 嬉しかった気持ちも、辛かった気持ちも、
あの日の気持ちを思い出し、ご自分を受け入れて、一歩前に進む良い機会となれば嬉しいです。

 お産はひとそれぞれ。
それぞれに、ドラマがあります。
赤ちゃんのうまれかたも、それぞれ。

 けれど、どんないのちも、
お母さんが頑張って、いのちがけで出産したという証拠。
赤ちゃんがたくさんの力を使って、頑張ってうまれてきてくれたという証拠。

 だから今、ここにいのちが存在しているんですよね。

 2016年にうまれてきてくれた、新しいいのちにありがとう。
そして2017年も、たくさんの輝くいのちが幸せに迎えられますように・・・。

 今年1年、コラムを読んでいただき、ありがとうございました。
みなさま、よいお年をお迎えくださいませ。

 次回の『澤田貴美子のつながるいのち』をお楽しみに。

澤田貴美子(さわだきみこ) フリーの産前産後フィットネスインストラクターとして、各地の産婦人科クリニックにて、妊娠中や産後、メノポーズ(更年期)の女性への運動指導・乳幼児と母親への育児支援などに従事。また、公益社団法人・誕生学協会認定“誕生学アドバイザー”として、幼児から大学生など幅広い年齢を対象に、いのちの授業「誕生学®」を届けている。

(2016年12月22日)