小倉京子の「子育てにも“コツ”ってあるんです」

第27回 『3歳:あめ玉保育園に持って行くー!』

 今回も、親業訓練協会が会員向けに発行している季刊誌「ヒューマン・リレーション・ニュース」(2008年春号)から、事例を引用してお送りします。

 さて、今回はその中から、3歳のお子さんの託児所での事例をご紹介します。保育士さんから上がったご報告です。

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 「あめ玉を持っていくってきかないんですよ。ダメだ! って言ってもきかなくて」と母親に叱られ、うなだれて登園してきたY君(3歳)。その右手には、ざらめの付いた黄色と水色、ピンクの綺麗なあめ玉が3個握り締められていました。

保育士  Y君、あめ玉持っていきたいんだ。

Y  うん!!

保育士  綺麗な色のあめ玉で気に入っているんだね。でもね、 それを持ったままお友達のお部屋に行くと、みんなが欲しいよ~ってそばへきて騒ぐのが心配なんだ

Y  ・・・(あめ玉をじっと見ている)

保育士  あめ玉持っていたいのね

Y  うん

保育士  そうか~。でもね先生はY君がみんなに見えるようにあめ玉を持っていると、みんなが欲しいよ~って騒いだ時にみんなにわけてあげられないし、取り合いになって喧嘩になったりその喧嘩を止めたり、大変なことが起こりそうで心配なのよ

 階段の下で座り込み、あめ玉をじっと見つめて考え込むY君。私が保育室で様子を見守っていると15分後、ニコニコしながら私の方に歩いて来るY君の手にあめ玉がありません。私が「あめ玉、どうしたの?」と尋ねると、Y君はズボンに付いている4個のポケットの中でも一番大きいホックの付いたポケットを、ポンポンと叩いてみせました。

保育士  分かった! Y君のそのポケットにあめ玉入れたのね

Y  うん!

保育士  ポケットの中に入れておけば、お友達から見えないので先生も安心だし、Y君も持っていられると考えたんだね

写真

 そこには、誇らしげなY君の笑顔がありました。Y君はその後、一度もあめ玉を出すことはありませんでした。
  3歳児は、3歳児なりに「考える力」がある と感じました。迎えに来た母親にそのことを話し、Y君には「先生助かったわ、ありがとう」と自然に感謝の気持ちを伝えていました。

 子どもに、自分の行動が時には人に迷惑をかけたり、困らせたり、何らかのトラブルの原因になることを わたしメッセージ で具体的に伝えます。と同時に 能動的な聞き方への切り替え で、子どもの言い分も聞くので、私も安心して見守ることができます。また、子どもは子どもなりに想像し、そのトラブルを未然に防ぐにはどうしようと考え始めます。

 あえて自分を語る。そのことを意識するようになってから、子どもに「考える力」が育っていると実感しています。

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 この話を、保育士さんの職業的立場だけでなく、普通のお母さんだったら、という見方でも見てみてください。

 たとえば、病院に行く時に、同じようにお菓子やあめを持って行きたがる子どもにどう対応するのか?

 往々にして、

「ダメ! 車に置いていきなさい!」
「病院の中にお菓子なんて持ってきてる子、誰もいないよ!」

というような対応で、無理やり阻止しようとするのではないでしょうか。

 そこには、持って行きたい子どもの気持ちもあり、持って行くと困る親の気持ちもある。お互いの気持ちを出し合って、理解し合いながら、この状況に対処することができる、ということを教えてくれているよい事例だと思います。

 持って行きたい、という気持ちを最初から否定されると、余計に子どもがいこじになって持って行こうとするかも知れないですし、ダメと言われて悲しくなって大泣きし、更に親を困らすこともよくあることです。

写真

 それなら、まずは、子どもの気持ちを汲んであげてはどうでしょう。「そう、持って行きたいんだね」と理解を示すことで、子どもの気持ちが和らぎます。なぜ持って行きたいのか? という理由も話してくれるかもしれません。理由がわかると、白黒的に○×で判断していた親も、なるほどと子どものことが理解できたり、理解できたことで一方的に命令するのではなく、なぜ持って行かない方がいいのかを、気持ちを落ち着けて話すこともできやすくなります。この気持ちを汲んで話を聞くことを、保育士さんも感想で書いているように、”能動的に聞く”と呼んでいます。

 そのとき、なぜダメなのかを一般的な常識として話すのではなく、このコラムでも何度も書いてきたように、病院にお菓子を持っていくことでどんな影響があり、それによって親がどんな気持ちになるか? も伝えられると、子どもの心に親の言葉が届きやすくなります。これがこの保育士さんがいっている”わたしメッセージ”で伝えるということです。

 一見、親子のぶつかり合いになりそうなことも、そうならずに解決したり、その後にお互いの関係が深まることにもつながっていきます。

 親が子どもの行動だけをみて、良い悪いと○×だけで判断せず、まずはそう行動した子どもの気持ちを理解しようとすることから関わっていくと、その後の方向性が正反対にもなり得る、ということですね。そして、親自身の気持ちもきちんと伝えていく。双方向の意思疎通が大切なのです。

小倉京子(おぐらきょうこ) ピースフルコミュニケーション代表・心理カウンセラー。自身の育児経験(3児の母)を生かしつつ、臨床心理学者トマス・ゴードン博士の唱えるコミュニケーション・スキルをベースに、あたたかい親子関係をつくっていくポイントをわかりやすくお伝えしていきます。 ブログ:http://ameblo.jp/hotto-mama/ ご感想・ご質問:peaceful.communication.family★gmail.comまで。(★を@に変えて送信してください) http://ameblo.jp/hotto-mama/

(2016年12月09日)