小倉京子の「子育てにも“コツ”ってあるんです」

第25回 『2歳:指吸いをやめさせたい』

 このコラムを始めて1年が経ちました。ここまで読んでくださってありがとうございます。

 1年間、親業(トマス・ゴードン博士の提唱するメソッド)を基盤にしてお話を進めてきましたので、お話していることはいつも共通のことだったと思います。だから、ずっと読み続けてくださった方にとっては、この言葉どこかで読んだな、とか、あぁこの考え方ね、と思われたこともあったのではないでしょうか?

 いろいろな話題で、何度も同じことを書いてきたのは、それが大切なことだから。それが意識の中に根付けば、それが思考パターンになって、コミュニケーションが格段に円滑になり、楽になっていくからです。

 もちろん、話を読んだだけでは、なかなか変わりません。ここに書いたことを、実践して、自分のものにしていっていただく必要はあります。

 みなさんにお伝えしたいことがたくさんあったので、いつもコラムはボリュームたっぷりで書いてきました。

 今後は、もう少し的を絞って、みなさんが知りたい具体的な事を、1つ1つ取り上げて書いていきたいと思います。

 これまでも、毎回必ず事例を挙げてご説明してきましたが、しばらくは理論中心のお話から、事例中心に変えて書かせていただきます。

ということで、今回は2歳のお子さんの指吸いのお話。

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 2歳の女の子に下の子(弟)が生まれました。自然と母親は弟の面倒見に時間を取られます。すると、女の子に指吸いが始まりました。

 女の子の親指に吸いだこができることを心配した母親は一生懸命やめさせようとしました。指を吸っているのを見るたびに、「やめなさい」と言っていたのです。でも、ぜんぜんやまりません。

 そこで、そのお母さんは自分の気持ちを表現することを思いつきました。そしてこう言いました。

「お母さんね、あなたが指を吸ってると、指の形が歪んでしまわないかと心配だな」

 すると女の子は言いました。

「たぁたん、ちんぱい?(お母さん心配?)」

「うん、心配だな」

「たぁたん、ちんぱいなんだ」

 そうしてその女の子は指吸いを止めました。それっきり指を吸うことはなかったそうです。

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 このお母さんは「やめなさい」という命令から、「心配している」という 気持ちを子どもに伝える ことへと、話し方を変えました。

 まだ2歳なのに、ちゃんと親の気持ちが伝わったのですね。心配とはどういうことか、頭でわかったのではなく、心で理解したのだと思います。親の心が女の子の心に届いたのです。

 それまでは、「やめなさい」という親の指示として子どもに言葉を掛けていました。親にやめろと言われても、なぜやめなくてはいけないのか、子どもには理解できません。指吸いは子どもが考えてやっている行動ではなく、心の空白を埋める、心の寂しさを埋めるために、無意識で始まったこと。やめるように言われても、心がOKでなければやめられないでしょう。

 親から「心配」と言われたことで、女の子は 親の心が自分に向けられていることを感じ取った のでしょう。だから心の空白も埋まり、指吸いを続ける必要がなくなったのです。

 親の気持ちを伝える、とはこういうことです。

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 指吸いを止めさせたいときに、
「指が曲がってかっこ悪いことになるから、やめなさい」
「指を吸っていると赤ちゃんみたいよ」
「ばい菌が体に入るから、やめなさい」
と言ったのでは、親の気持ちは伝わりません。

これらは、やめさせたい理由を並べているに過ぎないのです。

 親の考えを押し付けるのではなく、親が子どもを思うがゆえに出てくる気持ちを、子どもが理解できるように伝えるのです。親の心を伝えれば、子どもはそれを心で受け取ります。そうやって心が通じ合っていくんですね。

小倉京子(おぐらきょうこ) ピースフルコミュニケーション代表・心理カウンセラー。自身の育児経験(3児の母)を生かしつつ、臨床心理学者トマス・ゴードン博士の唱えるコミュニケーション・スキルをベースに、あたたかい親子関係をつくっていくポイントをわかりやすくお伝えしていきます。 ブログ:http://ameblo.jp/hotto-mama/ ご感想・ご質問:peaceful.communication.family★gmail.comまで。(★を@に変えて送信してください) http://ameblo.jp/hotto-mama/

(2016年09月09日)