小倉京子の「子育てにも“コツ”ってあるんです」

第19回 『新学年に慣れてきたころのサポート』

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 ワクワク、ドキドキだった新年度の始まりの時期を過ぎ、5、6月ごろになるとそれまでとは風向きの違った話を子どもから聞くことはありませんか?

・友達との問題
・保育士・先生・コーチに対する不満・心配
・周りとの協調についての悩み

 など、期待していたことと違ったり、実態がよくわかってくると細かいことも気にかかったり不満に思ったり。緊張も解けたころには、いろいろなことを子どもが感じるようになります。

■子どもの不満・不安をどう受け止めるか?

 子どもが親に話しやすい環境のご家庭では、不安や不満を親にいろいろと話すことも多いでしょう。

・隣の○○くんが授業中に話しかけてくるから困る
・授業中に○○ちゃんが鉛筆落としたから拾ってあげたら、自分が先生に怒られた
・○○ちゃんが、遊んでいるおもちゃをいつも取って行ってしまう
・仲がいいと思っていた〇〇くんに「遊ぼ!」と言っても無視された
・放課に一緒に外で遊ぶ友達がみつからない
・担任の先生の話がうるさい、聞きたくない
などなど、様々な悩み・トラブル・不満が子どもから出てきたりします。

 こんな時、親はどう対処すればいいのでしょうか?

・「まぁ、〇〇くんが授業の邪魔するのね!嫌ねっ、まったく!」
・「鉛筆拾ってあげてたんです!ってちゃんと弁明すればいいじゃないの。」
・「あなたがはっきり嫌だって言わないからよ。取られてもボーっとしてるんでしょ」
・「無視する子は放っておきなさい」
・「あなたクラスで浮いてるんじゃないの?大丈夫?もしかして友達いないの?」
・「先生のこと、そんな風に言うもんじゃありません!」
という親のリアクションは、関係が壊れやすいのでおすすめしません。(これらは、関係が壊れやすい言い方として定義された『お決まりの12の型』に入り、同情・指示・侮辱・命令・尋問・非難にあたります。参考コラム: 第1回 第2回 第3回

 子どもが問題を抱えているときには、 『能動的な聞き方』 で対応していくのが効果的であると、臨床心理学者のトマス・ゴードン博士は唱えています。(対応方法の切り分け方は 第17回のコラム をご参考に)

・「授業中に話しかけられると、先生の話を聞き逃すから困っているんだね」
・「自分はいいことをしたのに、先生から怒られてショックだったんだ」
・「自分が楽しく遊んでるおもちゃをいつも取られるのが嫌なんだね」
・「仲がよいと思っていた友だちに無視されて、とても悲しい思いをしたんだね」
・「一緒に遊ぶ友達がみつからなくて放課がつまらないんだ」
・「担任の先生の話しがうっとうしく感じるんだね。」

という話しかけ方が『能動的な聞き方』です。

●子どもの気持ちを汲む

ことに着眼して言葉を選びます。 あなたはこんな気持ちなんだね、 と親が子どもの気持ちを推し測って、言葉で確認していく感じです。

 親からこれらの言葉をもらうと、子どもは 「自分の気持ちを親はわかってくれた!」 ととても安心します。子どもは親に自分が理解してもらえることほど心強いことはありません。理解してもらえると、不安定だった気持ちも落ち着きます。安心で満たされた子どもは、自分が抱えた問題から脱するために、解決策を考えだす力が出てきます。

 『能動的な聞き方』をして、親が推測した気持ちと子どもの気持ちがずれている場合もあります。そんなときは、子どもが否定したり修正したりして自分の本当の気持ちを口にすることも多いので、親がそこから子どもの本心を知り、より子どもを理解することができます。子どもも自分の本音を語ることで、気持ちが少しすっきりしたり、心が軽くなったり、自分の心の中をあらためて理解することにもつながります。

 『能動的な聞き方』の目的の一つは、

●子どもが自らの力で解決できるように すること。

 親が解決策を与えなくとも、気持ちを汲んで親が理解を示すことで、安心から問題解決へと進展していけるのです。  子どもが自分で解決できる、と親側が信じ切れていないと、対話中にどうしても親の考えを言いたくなります。「~~すればいいじゃない」とか「~~してみたらどう?」とか・・・・。親がいいと思う解決策に誘導しようとしてしまいます。しかし、子どもが問題を抱えている時にこのように言われると、特に年齢が大きい場合は反発します。年齢が小さいと親に依存する体質を作ってしまい、自立から遠退くことに。

 子どもが問題を抱える場合、親の対応は、『能動的な聞き方』に徹し、親の意見を挿し挟まないよう注意が必要です。子どもを心の底から信じていれば、それが自然にできます。

■子どもが家であまりしゃべらないケース
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 これまでの子育ての中で、どちらかというといつも親が一方的に子どもに指示・命令を与えて育て、子どもの意見はあまり聞かないような対応をしてきた場合、子どもに不満や悩みがあったとしても、子どもから親に語ることは少ないです。自分の話は聞き入れてもらえない、受け止めてもらえないことを体験から子どもが学んできたからです。

 しかし、たとえ子どもが自分から話さなかったとしても、子どものちょっとした言葉や行動で、何かおかしいな、何か困ったことを抱えているな、ということを察することもあるでしょう。

 普段自分からは話さない子に、 「なんかあった?」 と訊ねても 「べつに」 と言われてしまうでしょうが、「べつに」という言葉自体が、おそらく「実はいろいろあったよ」と言っているようなものです。

 ただしそこで問いただしても逆効果。親はいつでも手を広げて待っているよ、いつでもサポートするよ、という気持ちを伝えておくに留めるのがよいでしょう。

「なにか、困ってることあれば、いつでも聞くからね。よかったら話してね」

と声を掛けておき、話しやすい環境をつくっておくのです。

 そして、子どもから話をしてくることがあれば、上記の『能動的な聞き方』でしっかり子どもの気持ちに向き合ってください。

■普段からの良好なコミュニケーションの必要性

 親子間のコミュニケーションが双方向でない場合、親の指示ばかりで子どもを操作していたり、逆にいつも子どもの言いなりになっている場合、子どもが困った時に親がサポートすることがなかなか難しいです。親の差し出した手を拒否しがちです。これまでの関係から、親の対応に対して猜疑的にみてしまうからです。ですから、普段からの良好なコミュニケーションが必要なのです。

 双方向でない関係性を変えたいと思えば、徐々に変えていくことも可能です。どうすればそうなるのか?このコラムの第1回からここまで全部読んで、その内容を普段の生活で実践していただくとよいと思いますが(笑)、その中でも強調したいことは、親の思う通りに子どもを変えようとしない、ということです。ひとりの人として子どものそのままを認めること。子どもは親の所有物ではない、とゴードン博士も述べています。個人として尊重することが関係性を変える上でとても大切なことでしょう。

 普段から良好な関係でいると、子どもに何かトラブルが起こっても、親が子どもの心のサポートをしてあげることができ、それを子どもが受け入れます。そして『能動的な聞き方』の効果で子どもが自分で解決できる力がつく、ということに繋がっていきます。こうして自立が促されていくのです。

 常日頃のこころがけ、大切です。

小倉京子(おぐらきょうこ) 親業訓練協会認定インストラクター。自身の育児経験(3児の母)を生かしつつ、「親業」のスキルをベースに、あたたかい親子関係をつくっていくポイントをわかりやすくお伝えしていきます。 ブログ:http://ameblo.jp/hotto-mama/ HP:http://instructorkyokoogu.wix.com/peaceful-commu ご感想・ご質問:instructor_kyoko_ogura★oyagyo.or.jpまで。(★を@に変えて送信してください) http://ameblo.jp/hotto-mama/ http://instructorkyokoogu.wix.com/peaceful-commu

(2016年06月10日)