小倉京子の「子育てにも“コツ”ってあるんです」

第18回 『大事なのは親の気持ち』

 子どもにどう対応したらいいか困る、ということがいろいろな場面・状況であると思います。

 実はこれ、とても簡単に判断できるのです。

■気持ちで判断する

 子どもの行動を見たり聞いたりしたときに、親が

●嫌か、(やめてほしいと思う、腹が立つ=非受容)
●嫌でないか、(大丈夫、そのままでいい、安心できる=受容)

のどちらなのかで明確に対応が決まります。ゴードン博士の考案した親のためのプログラムはとってもシンプルなのです。

 親の気持ちがどちらなのかで決めていく、つまり自分の気持ちを大切にしてそれを基準にして対応します。常識や社会通念が基準ではありません。だから、迷わないのです。自分に訊ねるだけなのですから。

■親は受容できるが、子どもが問題をもつとき

 親が子どもの行動を見て嫌ではない、子どもの行動を受容できるときでも、どうも子どもが困っているなと親が思う時があります。

 たとえば、子どもが静かにテレビを観ているのは親は嫌ではないけれど、いつも家に帰ってきたらすぐに友達と元気に外へ遊びに行くのが常だから、今日はどうしたかな?この子らしくないな、それにいつもより元気がなさそう、などというケースです。子どもがなにか困ったことを抱えている、悩んでいる、という状態です。

 このような状況を 「子どもが問題を持つ」 と親業では表現しますが、子どもが自分で問題を解決できるような関わり方を親はとっていくことができます。これが、これまでにもこのコラムで何度もご紹介してきた 『能動的な聞き方』 です。

 子どもが困っている時、早く解決してあげたくて、親はつい解決策を提案したり、根掘り葉掘り聞き出そうとして、かえって子どもの心の扉を閉じさせてしまっていることに気付かずにいたりします。  でも、『能動な聞き方』は子どもが親に反抗したり、親を拒否したり、心を閉ざしてしまうようなことにはなりにくい対応方法です。  具体的には

●繰り返す
●言い換える
●気持ちを汲む

の3種類の言い方があります。

 実際にどのように使うのか、わかりやすい事例を 第16回のコラム に掲載していますのでご覧ください。

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 『能動的な聞き方』の利点は、親が子どもを理解していることがよく伝わる、ということ。理解してもらえると、安心します。安心からは次のステップへの意欲が湧きます。解決策を自分で探し、実行しようという気持ちが自然に起こりやすいのです。  子どもが自分で解決しようという意欲を大切にするためにも、子どもの思いついた案に親が異論を唱えない、子どもが自分で解決できると信じることが大切です。

 「子どもが問題を持つ」ときに、こうすれば早く解決できるのに!という親の考えをその場で伝えるのは、自立した子に育てたいのならあまり効果的とはいえません。また子どもからの反発をかうこともあります。

 でも、親の生き方・考え方・価値観などを子どもが成長する過程で伝えていく、ということは親の役割の一つであると思います。これらのことを子どもに伝えたいなら、後述する「親も子どもも問題なしのとき」が適当でしょう。

■親が非受容なとき(親が問題をもつとき)

 子どもが言ったりしたりしていることを見て、「嫌だな」「やめてほしい」と思ったとき、つまり親が非受容なとき。この時は親が解決したい問題を抱えている、という意味で 「親が問題をもつ」 とも表現します。このときは、親が嫌だと思うことを子どもがやめてくれれば、親の非受容な気持ちが解消します。だから、その行動を子どもがやめてくれるよう、子どもに働きかけていきます。ただし、 関係が壊れにくい言い方で。 これが、 『わたしメッセージ』 です。

 例えば、自宅駐車場の車の前に子どもが自転車を停めて、すぐに車を出せなくて困った、とします。これは「子どもが車の前に自転車を停める」という行動に対して親が非受容なので、わたしメッセージで伝えられます。

 ごく普通の言い方なら 「なんで車の前に自転車停めるのよ!出られないじゃない!」 となりますが、『わたしメッセージ』で言うと、 「車の前に自転車を停めると、すぐに車を出したくても出られないから困るわ!」 となります。

 前者は子どもが責められていると感じやすいですが、後者は親が困っていることが伝わります。責められているより、子どもは行動を変えやすいのです。

 ●子どもの行動を非難しないように事実だけを言い、
 ●その行動で親にどんな影響があるのかをわかりやすく説明します。
 ●そしてその影響から親がどう思うのか、その気持ちを伝えるのです。

 このコミュニケーションの取り方で、子どもは自分の行動と相手への影響との関連付け、相手の気持ちを察する、という思考が自然に訓練されることになります。相手を思いやる、という気持ちを育てることにつながります。

 親にとっても、子どもからの反抗が少ない言い方ですので、伝えた後に嫌な気持ちになりにくいですし、子どもに自分の困っていることが伝わり、子どもが行動を変えてくれれば問題が1つ解決し嬉しい結果に。

 ただし、『わたしメッセージ』で伝えても、子どもがそれに対して反発することも当然あります。自分の行動に対して親が嫌だと言っているわけですから。また、子どもには子どもの言い分もありますしね。反発があった場合は、わたしメッセージを送った後に、『能動的な聞き方』に切り替える必要があります。子どもの反発したい気持ちも受け止めることで、自分(親)の思いも大切だけれども、あなた(子ども)も大切に思っている、という姿勢が伝わります。

■親も子どもも問題なしのとき

 親が子どもの行動を受容でき、子ども自身も何も困ってないとき、つまりお互いに「問題なし」の状態ときには、自由な会話を楽しんでください。どんな言い方をしても関係は壊れにくいですから。

 この状態のときには、親の考えを話しても、社会通念を教えても、親の子どもに対する要望を話しても、なんでも大丈夫です。子どもが話に耳を傾けてくれやすい状態です。

 しかし、話しているうちに、親の言葉に怒り出したりするなど子どもが非受容な状態に変わったら、『能動的な聞き方』に切り替える必要があります。

  第8回のコラム でご紹介した『肯定のわたしメッセージ』も、この「問題なし」の時に伝えていけるととても効果的です。

■一瞬一瞬の感情を大切にしていく

 日々の生活の中では、一瞬一瞬気持ちが移っていっています。次々に目に映る出来事に1つ1つ感情が動いているのです。その感情によく向き合ってみると、意外なことに気付いたりします。感情を押し殺して、親の仮面で子どもに対応していた自分。感情がエスカレートして怒りばかりで子どもに対応していた自分。嬉しい気持ちがあるのに、子どもになかなか表現していない自分。

 一瞬一瞬の感情にひとつひとつ気付いて、その気持ちを大切に扱い、表現していくと、とても自分が楽になっていきます。

 そして、気持ちを基準にして対応を判断していくと、子どもへの対応もとてもシンプルになります。自分の中に迷いが少なくなっていき、子育ても楽になっていきますよ。

 その結果が、温かい親子関係なのですから、これ以上ハッピーなことってないですよね!

小倉京子(おぐらきょうこ) 親業訓練協会認定インストラクター。自身の育児経験(3児の母)を生かしつつ、「親業」のスキルをベースに、あたたかい親子関係をつくっていくポイントをわかりやすくお伝えしていきます。 ブログ:http://ameblo.jp/hotto-mama/ HP:http://instructorkyokoogu.wix.com/peaceful-commu ご感想・ご質問:instructor_kyoko_ogura★oyagyo.or.jpまで。(★を@に変えて送信してください) http://ameblo.jp/hotto-mama/ http://instructorkyokoogu.wix.com/peaceful-commu

(2016年05月27日)