小倉京子の「子育てにも“コツ”ってあるんです」

第17回 『もうっ!、何回言ったらわかるのっ!』

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「もうっ!、何回言ったらわかるのっ!」

と子どもが叱られているのをよく見かけます。スーパーや公園、電車の中。いろいろ場所で、親が子どもによくこの言葉を投げつけています。私も以前よくやっていました。この言葉を言ったからといって、やらなくなるわけではないとわかっていても、つい出てしまうこの言葉。

■言いたくなる親の気持ち

どんな状況でこの言葉が出てくるのかと考えてみると

・売り場の物を勝手に手に取って見ていた
・遊んだ後に手を洗わずにおやつを食べた
・学校からもらってきた書類を出さない
・紙パックのジュースを力を入れて持ってこぼしてしまう
・お菓子を食べている時にボロボロとこぼす
・スーパーで自分の見たいエリアにふらふらと勝手に行ってしまう
・ランドセルを玄関に放置する

などなど挙げ始めたらきりがないですね。

 「いつも言い聞かせているのに、また同じことをしてっ!もういい加減にして!」というのが親の気持ちでしょう。

 子どもにしてみれば、「何回も聞いたな、この言葉」なのでしょうし、「あぁ、またお母さんに叱られた」、「またお母さんが怒り出した」と心の中で思っているのではないでしょうか。親の一言で怖れ、失望、怒り、悲しみ、不可解など・・・様々な思いが子どもの中に沸き起こってきます。

■親の気持ちは伝わっていなかった!

 親からしてみれば、「またやった!」なのでしょうが、またやった、ということは、別の見方をすれば、これまで同じようなことをしたときに、「それはやってほしくない」という親の気持ちが子どもに伝わっていなかった、ともいえます。

 同じことを以前したとき、なぜ親が腹が立ったのか?それが子どもにどれだけ理解できていたか、どれだけ子どもの心が動いたかで、次回同じことが起きた時の子どもの対応に変化が生じます。

 ですから、同じことをまた子どもがやってしまったら、同じことをした子どもを怒るより、そうなるような伝え方を親がしてしまっていたのかも、と捉えてください。

 親が困るようなことをして子どもを叱った、という行動は、子どもに「親の怒り」は伝わっても、それ以外のことは意外に伝わりにくいのです。

■腹が立ったのはなぜか? それこそが親の思い

 腹が立ったときに、「なぜ自分は腹が立つのか?」を考えてみてください。慣れないうちは怒っている時にはなかなか冷静に考えにくいでしょうから、あとから振り返ってみても構いません。

・売り場の物を勝手に手に取ると、なぜ腹が立つの?
・遊んだ後に手を洗わずにおやつを食べるのを見て、なぜ腹が立つの?
・学校からもらってきた書類を出さないと、なぜ腹が立つの?
・紙パックのジュースを手に持ってこぼしてしまったら、なぜ腹が立つの?
・お菓子を食べている時にボロボロこぼすと、なぜ腹が立つの?
・スーパーで勝手に好きな所に行ってしまうと、なぜ腹が立つの?
・玄関にランドセルを放置すると、なぜ腹が立つの?

その、 「なぜ」のところを子どもに伝えてください。

・売り場の物を壊してしまったら、弁償しなくてはならないから、困る
・手を洗わないとばい菌が体に入って、体調を崩すのではと心配
・親が知っていなければならない学校のことを、知らないのは嫌だ、困る
・紙パックを早く上手に持って飲めるようになってほしい。日常的なことがいつまでもできないと焦る気持ちになる。手洗いや周辺の掃除をしなくてはいけなくなり、手間だ
・床の掃除をしなくてはならなくて、手間だ。放っておくとアリが来るから困る
・迷子になってしまったら、と考えるととても心配。
・玄関を通る時に邪魔になり、転びそうになったことがあるから危険で困る。突然の来客時には急いで片付けなきゃと焦る

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「なぜ」の内容はそれぞれ母親によって違います。ご自分の心の中にある「なぜ」の中身を子どもに伝えてください。腹が立ったことより、腹が立つ原因のところの方が大事です。なぜなら、 そこには母親の思いが詰まっている からです。母の子への愛情であったり、母の大切に思っていることであったり、母の本心です。これこそ、伝えるべき内容。

 お母さんは、困っている、心配している、嫌だと思っている、手間だ、焦りの気持ちが湧いてくる、ということを子どもは理解します。子どもは、自分のしたことと母親への影響、母親の気持ちとの関係づけをすることができるのです。

 例えば、スーパーで勝手にどこかへ行ってしまうという子どもの行動に対して
「なんで勝手にどっか行っちゃうのよ!何回言ったらわかるの!」
と言うのと
「急にどこかに行っちゃうと、誘拐されたのでは?とすごく心配するし、あなたは私にとって大事な子だから、いなくなっちゃうととても困るわ」
との違いです。前者はなぜ自分の好きな場所へ行ったらだめなのか、どうして怒られたのか子どもにはわかりません。後者は親が心配していること、更には親の愛情が伝わりますね。

■子どもが親の話に納得し、心が動いたか?

 親の送ったメッセージに子どもが納得し、子どもの心が動けば、次回からの行動に変化が起こる可能性が出てきます。親が子どもを思う気持ちと同じように、子どもも親に対する無条件の愛があります。お母さんが困っているならやめよう、とか、子どもも親への愛情から自然にそう思えるものなのです。ただし、納得すれば、です。子どもが納得しない内容については、当然子どもの心は動きませんし、行動も変えません。あるいは、子どもがそれをすることに強い動機がある場合も、行動を変えません。たとえば、とても散策好きの子であれば、いくら親が心配だと言っても、勝手に好きな所へ行くことを簡単にはやめないでしょう。

 紙パックを持ってこぼしてしまうことに対して、親が怒れる理由が「床を掃除しなければいけないから」なら、親への具体的な影響があります。「何度紙パックの持ち方を説明しても覚えないことに親が心配するから」なら、親に具体的な影響がありません。親への影響がないけれど、親が子どもの行動をなんとか変えたいと思い、でも子どもが行動を変えない場合は、親と子の価値観の違いに起因しています。親が大事だと思うことでも子どもにとってはそうではない、ということです。そういったケースは、なかなか子どもの心は動きにくいものです。価値観が違うことから子どもが行動を変えないのに、同じことについて何度も親が口うるさく言うと、段々関係が壊れてしまい、逆効果になってしまうので注意が必要です。

■怒ることが少なくなる

 このように、「なぜ」腹が立つのか?の部分を伝えるようにしていると、

 「もうっ!、何回言ったらわかるのっ!」

という言葉で親の怒りを子どもに投げつけることが少なくなります。怒り以外の気持ちに気付いて、それを伝えることになりますから。

 親も怒らなくて済むのは気分がいいですし、子どもも怒られない快適な時間が多くなります。こんな素敵なことってないですよね。

 うちの子は親を怒らせることばっかりする、といつも思っていたお母さん。そうばかりではない、ということ、ご理解いただけましたでしょうか?親側の伝え方の問題、親が怒って伝えていただけかも。怒らない伝え方があるのですから。

小倉京子(おぐらきょうこ) ピースフルコミュニケーション代表・心理カウンセラー。自身の育児経験(3児の母)を生かしつつ、臨床心理学者トマス・ゴードン博士の唱えるコミュニケーション・スキルをベースに、あたたかい親子関係をつくっていくポイントをわかりやすくお伝えしていきます。 ブログ:http://ameblo.jp/hotto-mama/ ご感想・ご質問:peaceful.communication.family★gmail.comまで。(★を@に変えて送信してください) http://ameblo.jp/hotto-mama/

(2016年05月13日)