小倉京子の「子育てにも“コツ”ってあるんです」

第14回 『なぜ親は口うるさくなってしまうのか? ~親子の距離感を考える』

 親は子どものことがとても気になるので、毎日多くのことで子どもに注意や叱責や小言、提案などをしています。でも子どもは、嫌な顔、無視、反抗、などという形でそれに反応することも多いです。もちろん、従順に親の言うことに従う子もいるでしょうが、心の中では果たしてどう思っているのか?少なくとも喜んで聞いている子はいないでしょう。

 親がどこまで子どものことに口を出すことが妥当なのか。  どんな関わり方が自立を促すのにちょうどよい距離感なのか?

 今回は、親と子の距離感についてのお話をします。

■ゴードン博士の考察

 これについて、親業を構築したトマス・ゴードン博士の言葉を、博士の著書『親業』(近藤千恵訳、大和書房)から引用して考えていきます。  以下はこの著書の中で”子どもを受容する”ことについて論じている説明の一部です。


写真

 親は子供の活動に干渉しないことで受容を示すことができる。砂浜で砂の城を作ろうとしている子供を例にとってみよう。親が子供から離れて別の活動をしている。子供が自由に「間違えたり」、見たこともないような城の形(たぶん親の考える城とは違っているだろうし、城とわからないようなものかもしれない)を創造するに任せている。そしてその親は、非言語的な受容のメッセージを送っている。
 子供は、「いま僕がしていることはいいんだ」「僕のお城作りは受容されている」「お母さんはいま僕のしていることを受け入れている」と感じるだろう。
 子供がなんらかの活動に従事しているのを邪魔しないことは、受容を伝える強力な非言語的コミュニケーションの方法である。ほとんどの親は、単に口をはさむ、仲間に入る、干渉するということで、自分がどれほどしばしば非受容を伝えているか認識していない。子供を放っておくという行為があまりにも少なすぎる。子供部屋のプライバシーを侵し、子供個人のプライベートな考えのなかに押し入り、自分と別人であることを許そうとしない。これは親の側の恐れ、心配、不安感のもたらす結果ではないか。
 親は子供に教えたいし、子供に学んでほしいと思っている(「お城ってほんとはこんな形をしているんだよ」)。子供が間違えるといい気持ちがしない(「お城の壁が波で崩れないように、もっと遠くに作りなさい」)。子供のやり遂げたことを誇りたい(「ほら、ジニーの作った素敵なお城を見てごらん」)。子供に対し大人の善悪・是非の考えを押しつける(「お城にはお濠がなきゃいけないだろ」)。子供について内心高い望みを抱いている(「そんなことじゃなにも覚えないよ。一日中そんなものばかり作って!」)他人が自分の子供についてどう思うかを気にする(「お前は本当はもっと上手にお城を作れるんだろう。これよりもいいやつを」)。子供が自分を必要としていると思いたい(「ちょっとお父さんにやらせてごらん」)など。
 以上でわかるように、子供がある活動をしている場合、「何もしない」ことで親は受容をはっきりと伝えることができる。私の経験では、親がこのように子供と距離をおくことが少なすぎると思う。もちろん干渉しない態度をとるのは容易ではない。


■なぜ口うるさくなってしまうのか?
写真

 母親は往々にして子どもにとって口うるさい存在となりがち・・・。

 なぜ口うるさくなってしまうのか?それをゴードン博士は「親の側の恐れ、心配、不安感のもたらす結果ではないか」と言っています。親の想像するような大人になれないのではないかという恐れ・心配・不安から、あれこれ言いたくなる。実際にはどうなるかなど誰にもわからないのに、心配ばかりが先に立ってしまう。

 しかも、その心配から親が起こした子どもへの干渉は、親側にとっては“子どものため”、しかし子どもにとっては”親の非受容”として子どもに伝わっているのです。つまり、

“そのままのあなたではいけない”
“もっと〇〇じゃなきゃ”
“〇〇を直すといいのに”

と親は直接的・間接的に言っているのであり、そのままの子どもを親は受け入れられない、と子どもに伝えていることになるのです。

 “子どもを受容する”には様々な表現がありますが、上記の中ではゴードン博士は“干渉しない”ことも受容になる、と言っています。子どもがやっていることがそのままでOKであると、非言語で受容していることになると。

■干渉しないことで受容する

 干渉しないことで受容する、ということが親は少なすぎる、とゴードン博士は分析していますが、でもそれが難しいことであることも認めています。毎日の生活の中で、口うるさくなっているなぁ、と自分でも気付くことがあったら、”なぜ自分はこのことを子どもに何度も言いたくなるのか?”と自問自答してみるとよいかも知れませんね。もし自分が子どもの将来について心配していることが原因となっていると気付いたら、”言わない””干渉しない”という選択肢もある、ということを思い出してください。

 ”干渉しない”ことに気持ちを切り替えるにあたっては、 第13回目のコラム が参考になるでしょう。子どもへの愛情を”子どもを信頼する”という形で表現していこう、というお話です。

 子どもを受容したいけれど、”干渉しない”ことはあまりにも難しすぎる、と思う人は、”能動的な聞き方”で受容するという方法もあります。(【 第4回 】【 第6回 】を参照、【 第11回 )】で実例紹介)能動的な聞き方をする際の前提は、やはり”子どもへの信頼””子どもが自分で解決策を見つけられると信じていること”なんです。ここでも信頼が必要になってきます。どうやら親子関係のベースには”信頼”がキーワードだといえそうですね。

 子どもを信頼していますか?それがあなたとお子さんとの距離感を決める物差しになってくるのです。

小倉京子(おぐらきょうこ) ピースフルコミュニケーション代表・心理カウンセラー。自身の育児経験(3児の母)を生かしつつ、臨床心理学者トマス・ゴードン博士の唱えるコミュニケーション・スキルをベースに、あたたかい親子関係をつくっていくポイントをわかりやすくお伝えしていきます。 ブログ:http://ameblo.jp/hotto-mama/ ご感想・ご質問:peaceful.communication.family★gmail.comまで。(★を@に変えて送信してください) http://ameblo.jp/hotto-mama/

(2016年03月25日)