小倉京子の「子育てにも“コツ”ってあるんです」

第13回 『親のあふれる愛情は何に変わるか?』

 親業の体験会や講座を開いていると、子どもとうまくいかないと困っている・悩んでいるお母さんは、決して愛情が少ないのではない、ということがよくわかります。それどころか、子どもへの愛情がたくさんあるからこそであり、ただその愛情が子どもにうまく伝わらなかったから嘆く結果になっているのだと感じます。

 今回は親業のスキルとは少し離れて、私の親子関係の考え方をお話します。

■子どもを思う親の心

 子どもの事を真剣に、大事に思うからこそ、親にはたくさんの思いが溢れてきます。

・どの友達とも仲良くしてほしい
・勉強を頑張って将来苦労しないように
・受験で失敗しないように
・社会に出てから、ちゃんとやっていけるように
・いろいろな失敗をして苦労させたくない
・人並みの生活ができるような会社に、あるいは一流の会社に勤めてほしい
・親が実現できなかった夢を代わりに実現してほしい
・得意だと思うことをそのまま続けていって、それを職業にしてほしい
・並ぐらいの学力ではいてほしい、あるいはトップクラスをめざしてほしい
・字はきれいに書けた方が将来子どもが恥をかかなくて済むだろう
・世間から後ろ指をさされないような子には育てたい
・自分の意見はハキハキと言えないと、将来世の中渡っていけない
・自分の夢があるのだから、できればそれを実現させてあげたい
などなど
本当にいろいろな思いがあり、そこに共通しているのは「子どもの幸せを願う」親の思いです。

■愛情が具体的な親の願望に変化

 「子どもの幸せ」を願う親の愛情は、形を変えて、“こうさせたい”という親の願望という具体的なものへと変化しやすい、と私は感じています。
 たとえば
・受験で失敗しないように
 → 塾に行かせたい
 → 毎日〇時間は勉強させたい
・得意だと思うことを職業にしてほしい
 → 簡単にやめないでほしい
 → トップレベルになるまで頑張らせたい
・字はきれいな方がいい
 → 汚い字を書いていると毎回修正したくなる
・自分の夢を実現させてあげたい
 → 実現するために必要なあらゆることを実行させたい
という具体的な願望に変わっていきます。すると、その希望にそぐわない状態の子どもを見たときに、「叱る」「非難する」「説教する」「命令する」という行動に出たくなってしまうのです。愛情が強いので、親の希望に反した時のイライラ感も相当なものだったりするかも知れませんね。愛情があるから叱る、確かにそうなのでしょうが、果たして叱られている側の子どもは、親の愛情を感じているのかどうか・・・。しかも、親の願望は1つとは限らないので、日常のあらゆることについて、親の願望に沿うように要求され、命令され、叱責される、という現実が生まれてくるのです。

■愛情を信頼に変える

 愛情が深いのがいけないと言っているのではありません。愛情の変化の方向性が親の願望ではなく、 子どもを信頼する 、という方向へ変化すると、まったく親の気持ちの持ち方が変わってきます。

 子どもは確かに親から生まれたのですが、全く親とは異なる人格をもった、一個人です。別の一人の人間として、 子どもを尊重する 、ということ。考え方・大事に思うもの・価値観などが親とは違っている、ということを親が理解し認めること。これが、これまでとは違う関係へと変わっていく第一歩です。

 子供への信頼・尊重について理解が進むと、親の希望通りの言動をしなかったとしても、受け容れられることも多くなります。あぁこの子はこう考えるんだ、こう感じるんだな、と認めてあげられ、自分の考え・感じ方と違うからといってイライラしなくなります。

 また、 子どもは生まれながらにして問題を解決するサバイバル能力に長けている 、ということが本当に腑に落ちると、子どもはきっと力強く歩んでいける、と信じていられるようになります。心配が少なくなるのです。

■子どもを横からサポートする
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 子どもを信頼できるようになると、親の思い通りに子どもを動かしたり、親の考える通りの人生を歩ませる必要がなくなります。どう歩んでいくかは、子ども次第。けれども、困ったときにはいつでも親ができる限りサポートをするよ、というスタンスがちょうどよいのでないかと、私なんかは思うのです。子ども自身の道を子どもが自分で歩いていく、それを横からサポートする感じです。

 ここから親業へ話を戻しますが、ゴードン博士の提唱する 『能動的な聞き方』 はまさに、子どもが自分で問題を解決するのをサポートする対応方法であり、子どもへの信頼がベースとなって使う手法であり、子どもの自己解決能力をアップさせていける対応です。だからこそ、全世界で実績として認められてきたスキルなのでしょう。私もこの効果をたくさん目にしてきました。能動的な聞き方の我が家の事例も 第11回『お稽古の愚痴』 のコラムでお伝えしましたね。子どもの自立した成長を願うなら『能動的な聞き方』は必要なものでしょう。(詳しくは 第4回目 第6回目 のコラムをご覧ください。)

 親の子どもへの愛情を、どのような形で子どもに向けていくか?それによって大きく関係性が変わります。子どもに愛情が伝われば、子どもの反応も変わるので、それが正解なのか不正解なのかはすぐわかりますよ。

小倉京子(おぐらきょうこ) ピースフルコミュニケーション代表・心理カウンセラー。自身の育児経験(3児の母)を生かしつつ、臨床心理学者トマス・ゴードン博士の唱えるコミュニケーション・スキルをベースに、あたたかい親子関係をつくっていくポイントをわかりやすくお伝えしていきます。 ブログ:http://ameblo.jp/hotto-mama/ ご感想・ご質問:peaceful.communication.family★gmail.comまで。(★を@に変えて送信してください) http://ameblo.jp/hotto-mama/

(2016年03月11日)