小倉京子の「子育てにも“コツ”ってあるんです」

第11回 『お稽古の愚痴』

 子どもが親に、お稽古の不満や愚痴を言ってくることが時々ありますよね。
・行きたくない、とか
・宿題が多すぎる、とか
・コーチ・先生が厳しすぎる、とか
・仲間とうまくやれない、とか
そんなとき、どう対応をしていますか?

 例えば、
「塾で○○ちゃんが叩いてきたりするから、もう塾行きたくないっ!!」
なんていう子どもの愚痴を聞いて、あなたならどう子どもに言葉を掛けますか?

「まぁ、〇〇ちゃんが、叩いたの? ひどいことするわね。」
「塾の先生にそう話したら?先生がその子のこと叱ってくれるわよ」
「そんなことで塾をやめるなんてあり得ないわ!なに言ってるの!」
「嫌なことやられたら、やり返せばいいのよ!黙ってやられてちゃだめよ。」
「塾の宿題やりたくないから、そんなこと言ってるんじゃないの?」

 こんな風に言葉を掛けてはいないでしょうか?これらはすべて、【 第2回目 】【 第3回目 】のコラムでご紹介した 『お決まりの12の型』 にあたる会話です。子どもが困っている時に使うと、関係を壊しやすい言い方だと親業を構築したトマス・ゴードン博士は言っています。上記の表現はその12種類の中の「同情」「提案」「非難」「解釈・分析」にあたります。こんな風に言われると、子どもは親に反発心を抱いたり、親にそれ以上話す気が失せたり、自分で解決する力が養われなかったりします。

 こんな場合に一番適している対応の仕方が、 『能動的な聞き方』 と言われる方法です。これは、子どもの気持ちを汲んで、確認していく言い方です。この場合なら、
「そう、叩かれて嫌だったんだね。もう塾に行きたくないぐらい嫌なんだね。」
という言葉掛けです。

 子どもが困っている時に、なぜ『能動的な聞き方』がよいのか、実際に我が家であった会話でご紹介しましょう。去年の秋の話ですが、小学六年生の三男はミニバスケットボールのクラブチームに所属しており、その練習の帰り道のことです。

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三男「今日さぁ、チーム内の練習試合で一回も出してもらえんかった!」
私「そう、試合に出られなくて悔しいんだね」
三男「コーチが気に入ってる子で、スタメンを固めてた!」
私「気に入ってる子だけ出してもらえたって思うんだ」
三男「コーチは、俺が正式試合で点入れた時は、居なかったから知らんのだって」
私「コーチが自分の活躍のことを知らないのががっかりなんだ。知ってたら練習試合もきっと出してもらえたろうって・・・。」
三男「だいだい、このチームは勝つためのチームじゃないって言ってるくせに、結局強いヤツだけでメンバー固めて勝つことだけ考えとるしっ!」
私「コーチの進め方に不満なんだね」
三男「う~~ん、いや、そうじゃなくて、スタメンは確かに選ばれておかしくないメンバーだから、スタメンは間違ってないと思うよ」
私「彼らは選ばれて当然って思うんだ」
三男「逆に、あいつらがスタメンじゃなかったらコーチ変だろ!って思うからね」
私「コーチの人選は正しいとは考えてるんだ」
三男「俺がさー、もっとあいつらとうまく絡めるようになればいいんだよね」
私「自分がうまく動けてないって感じるんだね」

 ここまで話したところで家に到着したので、会話はそのまま終わったのですが、帰宅後お風呂から出てきた三男は、

「これから、毎晩、お風呂出たら柔軟体操やることにするわ。体が柔らかい方がいい動きができるし、スタメンのメンバーはみんな体柔らかいしさー」

と柔軟体操を始めたのです。

 これが『能動的な聞き方』の効果です。私はなにも提案していません。三男の発言がいいとも悪いとも言及していません。ただひたすら三男の気持ちを確認するように聞いていただけ。

 話を聞き始めたときは、コーチへの不満のようでしたが、実は、自分の力不足、そのふがいなさゆえの怒りだったのです。能動的に聞いていただけで、最初の表面的な不満から、もっと深い本質的なところが見えてきたのです。自分の中でいろいろな思いを探り、そこを見い出すことができたわけです。しかも子ども自身の気付きで。

 こういった話の場合、往々にして親は、コーチへの不満を聞いた時点で、「まぁ、コーチはそんなことするの?ひどいわね」とコーチを一緒に非難したり、あるいは「コーチのすることに文句言うもんじゃありません!」とコーチへの不満を口にする子どもを叱ったりしがちです。でも、子どもが問題を抱えている時は、これらの『お決まりの12の型』を使わずに『能動的な聞き方』に徹するとよいです。

 すると、本当の深い問題が見えてきたり、子どもが自分で解決策を見つけたりします。

 『能動的な聞き方』は、子どもの気持ちを察し、それを言葉にして表現する言い方です。気持ちを汲み取ることが難しければ、子どもが言った言葉を繰り返したり、同じような意味の別の言葉に言い換えても構いません。【 第4回目 】【 第6回目 】のコラムでもご説明していますので、よかったらご覧ください。

 この時の三男は、自分の力不足への解決策として、毎晩の柔軟体操を思いつきました。それがいいか悪いかは別の問題で、自分で決めたことを自分で実行に移す、ということが大切なのです。自立への一歩という意味で。

 ここで、強くなるためにはこうするのがいい、と例え正しい情報を親が与えたとしても、押し付けられるのは子どもは嫌がるものですし、うまくいかなかったときには親のせいにしてしまいます。自分の行動は自分で責任を取る、ということを学ぶ意味でも、子どもが自分で見つけた解決策を行動していくことが効果的なのです。親の考えを伝えたい場合は、子どもが問題を抱えていない時に話すのがよいでしょう。

 三男のこの決意は、そう長くは続きませんでしたが、親がやらせたわけではないので、やらなくなっても親は腹が立ちませんし、親側に子どもを責める気持ちも湧きません。親の気持ちは至って平穏でいられるのです。もし、また自分でなんとかしなきゃと思う気持ちが沸き起これば、また自分で何か考えて行動を起こすのでしょう。親はそれを横で見守るだけです。

 子どもが行動を起こす時・行動を変える時、というのは、やはりはっきりとした原因となる理由があります。
自分がとても嫌な思いをした、とか、
悔しい思いをした、とか、
自分の夢を実現したいという強い願望がある、とか
なんとかしたい・してあげたいと感じた、とか、
体験から来る何らかの感情が動いたから、行動を変えようとするのだと思います。その体験なくして、親の言葉だけで子どもを変えようというのは、とても至難の技なのではないかと私は感じます。世の中のお母さんたちは、この至難の技を普通に使おうとし、子どもが思う通りにならないからと躍起になっていないでしょうか。

小倉京子(おぐらきょうこ) 親業訓練協会認定インストラクター。自身の育児経験(3児の母)を生かしつつ、「親業」のスキルをベースに、あたたかい親子関係をつくっていくポイントをわかりやすくお伝えしていきます。 ブログ:http://ameblo.jp/hotto-mama/ HP:http://instructorkyokoogu.wix.com/peaceful-commu ご感想・ご質問:instructor_kyoko_ogura★oyagyo.or.jpまで。(★を@に変えて送信してください) http://ameblo.jp/hotto-mama/ http://instructorkyokoogu.wix.com/peaceful-commu

(2016年02月12日)