小倉京子の「子育てにも“コツ”ってあるんです」

第10回 『レッテル』

 「あの子はいい子だよね」
 「あの子は乱暴者だよね」
 「あの子は優しい子だよね」

 こんな風に大人はいい意味でも悪い意味でも子どもに対してレッテルを貼りがちです。

 レッテルが貼られると、そのレッテルが一人歩きしてしまいます。そういう目で、常にその子を見てしまう、ということです。

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まもなく節分ですね

 「いい子だよね」と言われる子は、1つだけいいことをしたわけではなく、いくつもいいことをしたことが大人の目に留まり、それらを総称して「あの子はいい子」となったのでしょう。朝の挨拶をした、落とし物を拾ってあげたらありがとうと言った、お辞儀をした、など大人から見て好感が持てる行動をいくつかしたことから、このような見方をされるようになったのでしょう。

 一方、「乱暴だね」と言われる子は、友達を蹴飛ばした、とか、クラスメイトに消しゴムを投げた、とか、口で言われたことにげんこつで返した、などいくつかの行動で、全体として「この子は乱暴だ」、と言われるようになったと思われます。

 このようなレッテルが貼られると、大人はついついレッテルでその子を表現したり、その子と対応したりしてしまいます。例えば、

 「あなたはいつも乱暴ね。また友達のランドセル蹴飛ばして!」
 「ほんっとにいつもだらしなくソファーに転がってTVばかり観てっ!」

 という風に“乱暴者だ”“だらしがない”というレッテルが前提で話をしています。

 こんな風に言われると、子どもとしては“いつもそうじゃないしっ!!”と反発したくなるのではないでしょうか?いつもいつもそういう状態でいる、そういう行動をしている、というニュアンスですからね。

 親がその時にそう言いたくなった子どもの行動は、本当はその時1つだったはずなのです。“友達のランドセルを蹴飛ばす”という“行動1つ”を見て親は何か言いたくなった。“ソファーに転がってTVを観ている”子どもの今の行動1つを見て、イラっとしたからそれを口にしたんですね。

 人は、ある行動を見た・ある言葉を聞いた時に、瞬時に何らかの気持ちが湧きます。嫌だなという気持ちかもしれないですし、ほっとする・安心する・嬉しいという気持ちかもしれない。つまり非受容な気持ちか受容できる気持ちかのどちらかが起こるのです。嫌だなと思ったら、その原因となった“その行動1つ”についてだけ嫌な気持ちを伝えると相手に伝わりやすいです。もちろん、嫌だと思う行動が連続して起こることもあるでしょうが、表現するときはあれもこれも言わずに、行動1つずつについて語るとよいです。いろいろ一気に言われると、責められている感じしか伝わりません。

 「あなたが友達のランドセルを蹴飛ばしたのを見て、なんだか悲しくなったわ」
 「ソファーに転がってTVを観てるのを見ると、お母さんイライラしてくるわ」

 この言い方なら、子どもの過去の行動とまったく絡めていません。その時の“行動1つ”だけを言っているので、子どもの反応も違ってきます。レッテルで表現すると、その子の“ひととなり”について言及することになり、つまりは、その子の人格の否定ということになりかねません。親は人格否定するつもりはなく言っていても、そういう意味合いとして伝わってしまいやすいのです。

 ●子どもにレッテルを貼らない

 ●子どもの行動を見て嫌だなと思ったら、“その行動1つ”についてだけを伝える

 これに気を付けるだけでも、今までと随分ちがった会話になってくるはずです。

 ちなみに、以前のコラム( 【第5回コラム】 【第6回コラム】 )でご説明したように、親が嫌だなと思うときの伝え方『わたしメッセージ』で伝えるときには、親への具体的な影響がないと子どもは行動を変えないことが多いです。

 その視点でみると、上記の2つの事例は、親にまったく影響がありません。自分の子が友達のランドセルを蹴っても親は困らないし、子どもがソファーで転がっているからってやはり親は困りません。だから、言ってみたところで、聞き流されることが多いでしょう。

 しかし場合によっては、このケースも親に影響があるかもしれません。例えば、その子のお母さんが苦情の電話を掛けてくる、自分も疲れたからソファーに転がりたかった、としたら、親への影響を付け加えた「わたしメッセージ」を言うことができます。

 「あなたがあの友達のランドセルを蹴ると、以前にも親が私に苦情の電話をしてきたことがあるの。お母さん必死に謝らなくちゃいけなくて、とても辛いわ」

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 「あなたがソファーで転がってTVを観てると、お母さんも疲れて転がりたいのにできないから、すごくがっかりするわぁ」

 こんな言葉を聞いた子どもは、さて、どうするでしょうね。親への影響がないわたしメッセージとはまた違った反応をする可能性がでてきます。行動を変えてくれる子もいるかもしれませんね。

親が嫌だなと思う時の伝え方、表現にはいろいろありますが、嫌だと思うことをなくしたいのなら、親への具体的な影響を入れた表現が一番、子どもが行動を変えてくれる可能性が高いと言えます。この違い、ご理解いただけましたでしょうか?

次回は、 【第4回のコラム】 の『能動的な聞き方』の具体例を、我が家の話でご紹介する予定です。

■2016年1月22日(金) 10:00~15:00
 春日井市総合体育館にて【ママの文化祭】に親業で出展します。
 お時間があればぜひ足を運んでください。お待ちしています。

小倉京子(おぐらきょうこ) ピースフルコミュニケーション代表・心理カウンセラー。自身の育児経験(3児の母)を生かしつつ、臨床心理学者トマス・ゴードン博士の唱えるコミュニケーション・スキルをベースに、あたたかい親子関係をつくっていくポイントをわかりやすくお伝えしていきます。 ブログ:http://ameblo.jp/hotto-mama/ ご感想・ご質問:peaceful.communication.family★gmail.comまで。(★を@に変えて送信してください) http://ameblo.jp/hotto-mama/

(2016年01月22日)