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パスピエ インタビュー
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 ボーカル・大胡田なつきの記憶に残る声色と、耳を傾けるパートによって印象が変化するテクニカルなサウンドで、注目度上昇中のバンド「パスピエ」。メンバーの中で作曲を担当する成田ハネダ(Key)と、作詞を手掛ける大胡田なつき(Vo)に単独インタビュー。

成田ハネダ(以下成田)  ただ音楽を作ってLIVEするだけじゃない方法を、色んなバンドが考えている時代だと思うので、僕らも自分たちの音楽をより深く届けるために、どういう事をしたらいいかと考えて始めたイベントです。今回は第5弾で、年に1回企画しています。対バンをきっかけに、パスピエ楽曲の聞き方が変わったり、数珠つなぎで音楽をもっと知ってもらえたらうれしいです。

成田  どこか和の要素に懐かしさを感じつつも、現在進行形のエネルギッシュさを持ち合わせたサウンドが「パスピエ」らしさなのかな。
大胡田なつき(以下、大胡田)  5人で表現するバンド。それぞれの楽器に耳を傾けてもらうと印象が異なるので、いろんな聞き方ができるんじゃないかなと思います。歌詞で言えば、ちょっとだけ昔の言葉を使っていたり、耳に残る日本語を意識しています。

成田  僕は8割自宅。PCを使ってデモソングを作るんです。ずっと同じ環境で作業をしていると凝り固まっちゃう場合もあるので、新しいイメージの曲を作りたいなと思った時は、スタジオに入って違う楽器を触ってみたりします。音が変わると、全然発想が違ってきますね。自宅だと大音量で音楽を流せるわけじゃないですし、スタジオで大きい音を流しながら曲を作ると、曲のイメージもまた違った視点で見えるんです。
大胡田  私はバンドで合わせながらイメージを書き溜めて、それを自宅に持ち帰って組み立てます。同時進行ができるタイプではないので、それだけに集中する時間を作るんです。
成田  (大胡田が)ずっと携帯に書き溜めているので、ほんとに歌詞書いているのか不安になる時はありますけどね(笑)
大胡田  現実逃避してるって?テトリスしてるって?(笑)

成田  映画を見たり、本を読んだりします。あとは、個人的な定説なんですが、おいしい料理やカフェって、BGMも素敵な曲を使ってる店が多いなと思っていて。なんか凝ってるな、誰が選んでいるんだろう?って気になります。やっぱり外に出るというのは、何かしら影響を受けるだろうな。

成田  今年見たのだと、アカデミー賞にノミネートされた『リリーのすべて』。性同一性障害とか、ジェンダーについてのストーリーです。自分の中にあるものだけだと、絶対にいつか枯渇してしまうので、自分にない感性を見たり、聞いたりするようにしたいと思っています。
大胡田  私の場合は、あえて今まで興味がなかったものに触れるようにしています。例えば、これまでHIP-HOPに全く興味がなくて。そうゆう音楽や文化に関係なく生きてきたんですが、ちょっと聞いてみたら案外面白い。私も韻を踏むのが好きなので、「こうゆうやり方もあるんだ」って、知らない文化に触れるのが楽しいです。

大胡田  日本語のラップが最近面白い。その場で言い合う、即興のフリースタイルバトルに興味があります!

成田  3枚目のアルバム『娑婆ラバ』で1つ完結できた部分があって、また今年から新しい音楽性や新しい「パスピエ」が見せられたらいいなと。音楽で聞いて感じてください、といっても難しいことだと思うので、「あ、パスピエちょっと今年は違うモードなんだな」っていうのを色んな部分で発信していきたいですね。その1つの施策として、(顔出しを)やってみました。この結果がどう転ぶかは別として、改めて「パスピエ」というバンドを思い出してもらったり、知ってもらうきっかけになればいいなと思っています。

成田  近ごろのバンドシーンでは、EDMサウンドとの融合をよく聞きますが、リズム自体はどんどんシンプルになってきているなと感じていて。常に「パスピエ」だからできる音楽ってなんだろう?と考えている中で、民族的なリズムを取り入れて、バンドサウンドにしていったら面白いんじゃないかな?と思ったのが曲作りのきっかけです。過去作品にもモチーフを強く持った曲はあるんですが、以前よりも色濃く出ているんじゃないかな。
大胡田  『永すぎた春』という言葉自体は、三島由紀夫さんの小説のタイトルなんです。“春”っていうと、青春、学生時代の恋愛、といったイメージがあるなと思って。そういう意味の“春”を拾ってます。
成田  『永すぎた春』は所謂、一般的な三島さんの作品のイメージとは違った作風なんです。登場人物が何人かいて、感情移入するキャラクターを変えると、ストーリーの見え方も全然変わってくる。そこに影響を受けて「こうゆうことを音楽でも表現したいな」と、タイトルに使わせていただきました。ある人は「この曲明るいね」と感じたとして、別のある人は「悲しい曲だね」と感じたり、聞く人によって景色が変わる音楽が作りたいなと思っています。

成田  『ハイパーリアリスト』っていうワードは、造語ではないんですよ。
大胡田  ハイパーリアリストという言葉があるかは確かじゃないんですが、芸術のジャンルに「ハイパーリアリズム」というのがあって。すごく簡単に表現すると、本当に写真のような絵を描くっていう感じなんですけど、今回は歌詞でリアルとか描くという言葉に焦点を当てたので、名前を借りてきました。
成田  サウンド的には『バック トゥー ザ フューチャー』の世界観。当時の最先端を20~30年経った今見てみると、すごく不思議な感じがするというか。30年前に描いていたSF感って面白いなと思っていて。最終的にはポップスソングとして成り立ちながらも、曲のイントロで時代錯誤観が出していけたらいいですね。

成田  『REM』は昔から撮り貯めているデモBOXがあって、いつかやりたいと思っていた曲。頭の2曲は「パスピエ」らしい歌詞になっているのに対して、『REM』の歌詞は大後田らしいなという印象です。カップリングこそ自由に作れる曲だと思っているので、自分が普段から感じていることが素直に出てるんでしょうね。
大胡田  いい意味で雑な感じがある。面白いからいいんじゃない?みたいな雰囲気です。カップリングはただただ楽しんで、(歌詞を)書かせてもらっています。

story

 メンバーはやおたくや(Dr)、成田ハネダ(Key)、大胡田なつき(Vo)、三澤勝洸(Gu)、露崎義邦(B)。2009年のバンド結成後、2011年に1stミニアルバム『わたし開花したわ』でデビュー。バンド名は、フランスの音楽家ドビュッシーの楽曲が由来。