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大竹敏之のでらうま名古屋めし探訪
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「菊屋」のういろ

ういろは白、桜、抹茶、黒糖の4種類。1棹各500円。賞味期限は夏は4日、冬は5日間
ういろは白、桜、抹茶、黒糖の4種類。1棹各500円。賞味期限は夏は4日、冬は5日間

つきたてのもちのよう!ほかほか→もちもちのWサプライズ

 ほかほかのういろう、って食べたことありますか?

 名古屋名物として名高いういろうですが、そんな体験をしたことがある人はほとんどいないはず。駅の売店で売っているフィルム入りのものしか思い浮かばない人が大半じゃないでしょうか。しかし、そもそもういろうは蒸し菓子ですから、できたては温かいんです。そして、そんな温かな状態でういろうを毎朝店頭に並べているのが、今回紹介する菊屋です。

 「湯を粉にかけて混ぜるところから。冬なら沸騰した状態で、夏は少し温度を下げる。量は天秤ばかりで目で見て計る。この温度調整と正確な水の量を守るのが難しいんです」と店主の小山孝さん。湯をかけて粉を混ぜ、せいろに入れて蒸す。蒸し上がったら釣り糸で切り、包んだらオーブンに入れて水分を飛ばす。この一連の工程はすべて手作業です。

毎朝開店に合わせてできたてを店頭に並べるため。ういろづくりは早朝6時から。材料は米粉、うき粉(小麦のでんぷん)、砂糖のみ。適切な温度と量のお湯が粉ときれいに混ざると、生地はのりの一歩手前のような状態になる
毎朝開店に合わせてできたてを店頭に並べるため。ういろづくりは早朝6時から。材料は米粉、うき粉(小麦のでんぷん)、砂糖のみ。適切な温度と量のお湯が粉ときれいに混ざると、生地はのりの一歩手前のような状態になる
ケースに生地を流し込んでせいろで2時間弱蒸す。1ケースは8棹分
ケースに生地を流し込んでせいろで2時間弱蒸す。1ケースは8棹分

 この正真正銘の手づくりういろ(ここからは菊屋の商品名にならって「ういろ」とします)。口に運んでみると、まるでつきたてのもちのように柔らか! 弾力がありつつ口どけがよく、米の香りとほのかな甘みがふわっと広がったと思ったらすっと消えていきます。この口どけのよさは、粉と湯がきれいに溶け合っているからこそ実現するのだといいます。

蒸し上がったばかりのういろ。ほかほかの湯気が立ち上っている”
蒸し上がったばかりのういろ。ほかほかの湯気が立ち上っている”

 「若い頃は京都で修業して、こっちに戻ってきた頃は京菓子や干菓子もつくってたんです。でも、30年くらい前に地元の和菓子屋の集まりでういろを試食し合う機会があって、同じういろでも出来がバラバラでびっくりした。名物に見合うものをつくらないかん!と思って、そこからういろに力を入れるようになりました」とご主人。古希を越えた今も探求を重ね、ここ数年でも製法を変えて進化しているそう。具体的には、水分量を限界まで増やすことで柔らかさをアップさせているそうです。

 実は何年か前のネットのアンケート調査で、ういろうは「もらってうれしくないお土産」ワースト1に選ばれてしまいました。おみやげ菓子としてポピュラーすぎ、驚きやワクワク感を抱きにくいことがこの不名誉な結果をもたらした要因と思われます。しかし、昔ながらのやり方で丁寧につくられる逸品を口にすれば、新鮮な驚きを間違いなく感じられるに違いありません。

あまりに柔らかいので刃物では切れず、釣り糸を使って切る
あまりに柔らかいので刃物では切れず、釣り糸を使って切る
一本一本包む作業は奥さんの美幸さんと2人で行う。この後、数分間オーブンに入れて水分を飛ばすことで、食感がしまって味が凝縮するそう
一本一本包む作業は奥さんの美幸さんと2人で行う。この後、数分間オーブンに入れて水分を飛ばすことで、食感がしまって味が凝縮するそう

 ちなみにご主人によると「できるだけ新鮮な状態でお客さんに手に取ってもらうために、温かいうちに店に出すけど、冷めてからの方が生地がしまって弾力が出ておいしいですよ」とのこと。包み紙の上からでも感じられる温かさでお届け先にまず驚きを届け、冷めてから召し上げってもらって今度は食感やおいしさに驚いてもらう。できたての手づくりういろなら、二段構えのサプライズをお届けできるのです。
(写真撮影/すべて筆者)

そうだったのか!名古屋めし

 ういろうは室町時代、中国からの帰化人が売り出した漢方薬がルーツで、口直しに添えられたお菓子がいつしかういろうと呼ばれるようになったと伝えられます。伝来の地は福岡、初めて将軍に献上されたのは京都、元祖の子孫が移り住んで名物にしたのが小田原、さらには山口など、全国各地にゆかりの地や名産地があります。

 しかし、現在は生産のおよそ9割を名古屋を中心とする東海地方が占めています。発祥地でないにもかかわらず、なぜういろうは名古屋名物になったのでしょうか?

 きっかけは昭和39年の東海道新幹線開通でした。この時に青柳ういろうが車内販売したため、全国を行き交う人たちの間で「ういろう=名古屋」のイメージが定着することになりました。これに前後して各社が商品力向上に努めたことも、ういろうを地域の名物に押し上げることとなったのです。

菊屋

創業昭和9年。千種駅の近くの大通り沿いだが、知らないと見過ごしてしまいそうな小さな構え

住所:名古屋市中区葵2-14-21
TEL:052-935-3873
営業時間:9:30~19:00
定休日:不定休
駐車場: なし
アクセス:JR・地下鉄千種駅より徒歩5分

(2019年03月14日)

大竹敏之

大竹敏之(おおたけとしゆき)

「おいしい名古屋めしのお店、連れてって」。今や地域の名物にして観光資源にまでなっている名古屋めし。他県から来た友人知人にこんなふうに頼まれることも多いはず。しかし、そこで、はたと悩んでしまう人もまた多いのでは? 地元っ子も知ってるようで意外と知らない、名古屋めしの本当に“うみゃ~”店を、名古屋めしライターこと大竹敏之がご案内します。

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