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大竹敏之のでらうま名古屋めし探訪
大竹敏之のでらうま名古屋めし探訪

「香流庵」のきしめん

きしめんころ540円。麺ののどごしや食感を楽しんでもらうため、薬味だけが添えられてシンプル。つゆはやや甘めのざる用で、温かいきしめんと使い分けている
きしめんころ540円。麺ののどごしや食感を楽しんでもらうため、薬味だけが添えられてシンプル。つゆはやや甘めのざる用で、温かいきしめんと使い分けている

うどんを平たくしただけじゃない!手打ちで光るきしめんの醍醐味

 「お薦めの名古屋めしは何ですか?」。仕事柄、こう尋ねられることがしばしばあるのですが、そんな時、決まってこう答えています。「きしめんとういろうです!」。なぜなら、このふたつが名古屋めしの中で最も誤解されているから。本当のおいしさを知らずに“こんなもんだろう”と軽んじている人が非常に多いのです(ういろうについてはまたあらためて)。

 「きしめんはうどんを薄く延ばしただけのものじゃないんです」。こう語るのは「香流庵」(かなれあん)の市原悟さん。そう。きしめん=うどんを平たくしたもの、という思い込みこそがきしめんに対する最大の誤解なのです。

 「材料はうどんと同じですが、ちぎって練る行程から異なります。薄くしても歯ごたえがある麺を打つために、うどんよりもしっかりこねて踏んでハマ(練った小麦粉をまるめて大きな団子状にしたもの)を鍛えます。さらにうどんよりも細いめん棒を使い、うどんは6回延ばすところ、より薄くするためにきしめんは8回延ばします」(市原さん)

 塩分濃度の高い塩水で小麦粉をこね、ひと晩寝かせて熟成させるのも名古屋流。これはうどんの本場として有名な讃岐(香川県)とは対照的な方法で、名古屋のきしめんは延ばしにくい生地をあえてつくり、時間と体力をかけて平たく延ばしているのです。

「きしめんは薄くする分手間がかかり、職人の技術が麺の出来栄えや味にはっきりと反映されます」と2代目店主の市原悟さん。全行程を手作業で麺を打つ店は名古屋でも数少ない。
「きしめんは薄くする分手間がかかり、職人の技術が麺の出来栄えや味にはっきりと反映されます」と2代目店主の市原悟さん。全行程を手作業で麺を打つ店は名古屋でも数少ない。
きしめんは標準の8~9ミリよりやや幅広の約1センチ。体にしみこんだリズムある包丁さばきで見事に均等に切り分けられる。
きしめんは標準の8~9ミリよりやや幅広の約1センチ。体にしみこんだリズムある包丁さばきで見事に均等に切り分けられる。

 そんなきしめんの実力を体感するために、筆者が推奨しているのは“ころきしめん”です。つゆが冷たいと香りが強く立たないため、その分食味における麺のウエートが高くなり、麺料理本来の醍醐味である食感やのどごしを存分に楽しめるのです。香流庵のころきしめんはするすると滑らかにのどを通っていき、なおかつ舌の上ではねるような弾力、キュッとした噛み応えもあり。さらに幅が広いのでつゆののりもよく、カツオがベースのダシの風味が口の中に広がります。

こちらは温かいきしめん560円。いろどりのよさや花かつおが躍る華やかさはこれぞ“ザ・きしめん”
こちらは温かいきしめん560円。いろどりのよさや花かつおが躍る華やかさはこれぞ“ザ・きしめん”

 もちろん温かいきしめんも王道のおいしさ。ダシや花かつおからふわっと広がる香ばしさ、さらに油揚げ、かまぼこ、青菜が脇を固めるラインナップは、これぞきしめんです。

 「おいしいきしめんの店を教えて」と他地方の人に聞かれて、駅の立ち食いしか思い浮かばないようではちょっと残念(もちろんあれはあれでおいしいですが、あくまでファストフードです)。きしめん発祥の地である名古屋の人間としては、この店のような職人が腕をふるう正統派の実力店を何軒かは知っておきたいものです。(写真撮影/すべて筆者)

「名古屋手打研究会」は市内のうどん店店主らで構成される有志の会。「名古屋手打」と呼ばれるこの地域特有の麺の技術を正しく継承していくことを目的とし、約20件が参加する。
「名古屋手打研究会」は市内のうどん店店主らで構成される有志の会。「名古屋手打」と呼ばれるこの地域特有の麺の技術を正しく継承していくことを目的とし、約20件が参加する。
民藝調の庶民的な雰囲気。座敷席も多く、家族連れも多い。創業は昭和51年。車来店がほとんどの郊外のうどん店。
民藝調の庶民的な雰囲気。座敷席も多く、家族連れも多い。創業は昭和51年。車来店がほとんどの郊外のうどん店。

そうだったのか!名古屋めし

 きしめんは名古屋や周辺地域ではスーパーでも生麺や乾麺、カップ麺まで売られているほどポピュラー。愛知県内全域で食べられると思っている人も多いと思いますが、三河地方、とりわけ岡崎や豊橋などの西三河へ行くとうどん店でもとんと見かけなくなります。替わりに浸透しているのがにかけうどん。かまぼこ、刻み油揚げ、青味野菜、花かつおが乗ったシンプルな一品です。またこの地域のうどんはふんわり柔らかいのも特徴。三河地方も名古屋と同様にうどん店が多い土地柄ですが、お互いに似て非なる麺食文化圏なのです。

香流庵(かなれあん)

香流庵(かなれあん)

住所:名古屋市名東区山の手3-1607
TEL:052-774-0368
営業時間:11時~14時30分、17時~20時30分(各ラストオーダー。土日は通し営業)
定休日:水
駐車場:15台
アクセス:市バスバス停香流小学校から徒歩5分

(2019年01月24日)

大竹敏之

大竹敏之(おおたけとしゆき)

「おいしい名古屋めしのお店、連れてって」。今や地域の名物にして観光資源にまでなっている名古屋めし。他県から来た友人知人にこんなふうに頼まれることも多いはず。しかし、そこで、はたと悩んでしまう人もまた多いのでは? 地元っ子も知ってるようで意外と知らない、名古屋めしの本当に“うみゃ~”店を、名古屋めしライターこと大竹敏之がご案内します。

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